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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2026.02.27

「グローバル成長」「人的投資」で持続的・安定的に成長 カプコン



PCオンライン中心にターゲットユーザーは15億人

カプコンは、家庭用テレビゲームソフトやPC・モバイルコンテンツ、アミューズメント施設・機器など、高品質のエンターテインメント事業を展開する。2025年度3月期の営業利益657億円、純利益は484億円で、いずれも年平均成長率は20%を上回る急成長を遂げている。


たゆみない事業成長と企業価値向上の原動力は、ゲームコンテンツの供給が227カ国・地域へ拡販するエリア・本数増と、国・地域ごとの緻密なデータ分析に基づく価格施策によるグローバル戦略の賜物だ。ビジョンに「最高のコンテンツで世界中の人々を夢中にさせる企業」を掲げ、経営目標は中期が毎期営業利益増10%以上、長期的には年間販売本数1億本の実現を目指す。


世界中にファンを拡大するカプコンの戦略には4つの柱があるが、基軸になるのは「グローバル成長」「それを実現する人材(開発力)投資」の両輪だろう。「グローバル成長」は、持続的な成長エンジンになる「勝ち筋」を描き出す戦略だ。


グローバルゲームユーザーは、①ゲームアプリなどのモバイルコンテンツ、②PC向けオンラインゲームソフト、③家庭用ゲーム専用機向けソフトの主要な事業セグメントの総計で延べ34億人を超え、今後も長期的な成長が見込まれている。


カプコンがターゲットとするユーザーは②と③の計15億人規模で、特に新興国を含め成長余地が大きい②へ積極的に展開している。生活インフラが整う先進国中心のコンソール機とは異なり、新興国にも普及するPCプラットフォームのソフト販売比率は50%を超える伸び率を記録。国・地域の販売網拡大に貢献し、グローバル展開が一気に加速している。


2010年代以降、ゲーム機の進化やインターネット、PC、スマートフォンの普及により、遠隔地のユーザ同士のネット対戦や協力プレイが可能になったマーケット環境の変化を、チャンスに変えてきたことも成長要因の1つである。ゲームコンテンツを直接ダウンロードできるデジタル化を推進し、販売小売店の立地や規模、営業時間に左右されず、新作・既存作品ともにロングテール化(長期販売)を実現。また、高品質な体験価値のグローバル展開として『バイオハザード』『モンスターハンター』『ストリートファイター』など人気ブランドのゲームシリーズコンテンツを投入。ゲームソフトの年間販売本数は10期連続増を達成し、100万本を超える国も米国・ブラジル・中国など9カ国に増えている。


ゲーム専用機の有無、在宅・屋外、国・地域など、さまざまな制約から解放され、いつ、どこでもゲームが楽しめる多様なプラットフォーム環境にいち早く適応し、事業ポートフォリオを拡大。併せて、国・地域ごとの特性や異なるユーザー層に向き合うマーケティングも強化するマルチプラットフォーム戦略によって、グローバルにCAPCOMカプコンブランドが浸透し、確かな成長エンジンとなっている。



業績成長と企業価値向上のサステナビリティ実現へ

ビジョンを実現する両輪戦略のもう1つが「人的投資(人材・開発力育成)」である。


持続的な業績成長と企業価値向上の進展という、2つのサステナビリティを実現する原動力として、優れた人材への積極的、継続的な投資を重要事項に位置付ける。2022年にCHO(最高人事責任者)を新設。人事関連組織の再編、総額や平均年収を毎年増額する報酬制度改定、利益に連動する賞与制度、株式報酬付与制度の導入など、多様な改革を推進する。


マルチプラットフォーム化に伴いゲーム開発の規模が拡大、長期化する中、最先端で高品質なゲーム開発の人材・技術の拡充へ毎年100名超の開発職を増員。2025年3月期は約2850名、2021年3月期比で25%増となった。また、採用ブランディングや海外有名大学のインターン受け入れなど、採用チャネルの多様化も推進。新卒採用は2025年から初任給を業界高水準の月額30万円に引き上げ、優秀な人材獲得に注力。教育機関との産学協働による人材育成も始動し、自社開発エンジン「RE ENGINE」を活用し近畿大学と連携する体験型授業、学生対象ゲーム制作コンペ「CAPCOM GAMES COMPETITION」開催など、世界に通用する次世代クリエイターを早期発掘・育成する機会を創出している。


外国人比率は7.6%(2025年3月期)で出身国数は36カ国に増え、人材のグローバル化も進めている。一時帰国特別休暇制度や日本語教育の導入など、多様なライフ・ワーク環境に応じた制度も整備した。全社員を対象に、2029年までに男女間賃金格差を88%以上、男性育休取得率は85%以上の目標を掲げている。


人材の「数」だけでなく「質」も強化している。開発職が共有する価値観と行動基準を明文化した開発人材ポリシー「CAPCOM-SHIP」を2024年に制定し、共通のゴールや、ゴールに向かう行動基準を明文化。経営層も共有する重要な価値観として、組織マネジメントやチームビルディングの指針となっている。また、世界最高のコンテンツを安定的に生み出す開発環境へ、本社隣接地に新ビル建設を進め2027年に竣工予定だ。国内に開発拠点を集約・拡張し、社内協力体制の強化や蓄積ノウハウ・技術の伝承も可能にする狙いがある。多様な能力・事情を持つ人材が力を発揮できる制度・環境づくりによって、エンゲージメントが向上する好循環も生まれている。


人材・開発力の拡充の先に見据えるのは、IP(知的財産)価値の最大化だ。Netflixで全世界に配信するオリジナルアニメ映像作品、eスポーツ、ゲームライセンス、人気IPを使ったスロットやカプセルトイ専門店のアミューズメント機器・施設など、コンテンツだけでなくマルチに認知度・ブランド価値を向上。グローバルなファン顧客を増やし「ゲームと言えばCAPCOM」というコーポレートブランドが、世界中に浸透させ盤石化していく姿を、次なる成長フェーズとして描き出している。


グローバルエンターテインメント企業の先駆者であるSONYがこれからの10年、IPの価値最大化を目指し「360度展開」を標榜するように、カプコンも事業と人材の「マルチ展開」に勝ち筋を見定めている。グローバル市場は絶えず新たな事実や知識を得て想定外にも即応し、意思決定のアップデートが欠かせない。勝ち筋を見つけるにはまず、何を知らないかを知り、不確実性の範囲や根拠を明確にすることが、未来へと歩みを進めるスタートラインになる。



(株)カプコン

  • 所在地 : 大阪市中央区内平野町3-1-3
  • 設立 : 1979年
  • 代表者 : 代表取締役社長 最高執行責任者 (COO) 辻本 春弘
  • 売上高 : 1696億400万円(連結、2025年3月期)
  • 従業員数 : 3766名(連結、2025年3月現在)