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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2026.02.27

看板商品『お~いお茶』のグローバル化に経営資源を集中 伊藤園



「ユニーク×価値創造×グローバル」の重点戦略

伊藤園が掲げる長期ビジョン「世界のティーカンパニー」は、日本の緑茶文化を広めながら世界中の人々の健康で豊かな生活を支え、喜ばれる企業となっていくことを体現する姿だ。それは、世界中で「ITOEN」の認知度を高め、愛されるグローバルブランドになるという決意である。長期ビジョンの柱となる成長戦略は、「ユニーク×価値創造×グローバル」。中期経営計画で重点戦略として掲げるのは、①『お~いお茶』のグローバル化、②国内既存事業の盤石化、③新たな事業の創出、④経営基盤の強化、⑤サステナビリティ経営の推進の5つだ。


特に、主力ブランド『お~いお茶』のグローバル化は2025年4月期に始動した5カ年中期経営計画から第2ステージに突入。「グローバルマーケティングの展開」「グローバル生産・販売体制の構築」「茶産地育成事業の進化」が施策として挙げられている。中国・東南アジア、北米、オーストラリアなどでグローバルなマーケティング・ブランド戦略が進む海外事業は、グループ連携を強化しエリア特性に対応した製品展開で、収益性を改善し海外売上比率を向上。中期経営計画では現状の販売国・地域数40を60に増やし、2041年4月期に100カ国・地域以上を目指す。一方で、人口減少やニーズ・消費嗜好しこうが変化・多様化する国内市場は、2041年4月期までに営業利益率10%以上を目標に、収益性向上を重視した効率的な事業体制の構築を進めている。


人口増と経済発展、健康志向の高まりによって、無糖茶飲料の消費量は海外市場で拡大している。市場ニーズの変化を成長機会と位置付け、日本茶の緑茶成分・カテキンの健康改善効果など「健康な無糖飲料」という新たな価値カテゴリーに事業ポートフォリオを絞り込み、強みである日本茶(緑茶)の飲料・ティーバッグ・抹茶に経営資源を集中投下している。


抹茶入りの緑茶ティーバッグ『MATCHA GREEN TEA』は8種類のフレーバーで展開するなど、ニーズが高まる無糖茶飲料を日常的に飲用する文化を、グローバル市場において創造。2024年春には『お~いお茶』を欧州市場向けに設計開発した紙パック「Oi Ocha Unsweetened Matcha Green Tea」を新発売し、現地生産を開始した。欧州でプラスチック製容器入り飲料が規制強化され、日本からの輸出が困難になる状況にも的確に対応している。


KPI(重要業績評価指標)は2024年度の連結売上高4538億円を基準に、2025〜29年度に年平均伸長率2%以上(海外8%以上)、さらに2041年度には同3%以上と設定。海外における『お〜いお茶』の年平均伸長率は2025〜29年度に24%以上、2041年度には10%以上という成長像を描き出している。すでに、2025年度の連結売上高は約4727億円で過去最高を記録した。


海外事業拠点を拡充し、世界の品質基準と国・地域の現地ニーズに適応するマーケティング連携と製品開発・生産・販売体制を確立。ギネス世界記録認定「世界No.1の無糖緑茶飲料ブランド」として、海外サプライチェーンの最適化とグローバルブランド化を加速している。


※ギネス世界記録認定 記録名「最大の無糖緑茶飲料ブランド(最新年間売り上げ)」(2023年度)



「グローバル&ローカル」のシナジー展開

「いつの日も、僕のそばにはお茶がある」


伊藤園ホームページのトップページは、グローバルサイトも日本語サイトも、世界的に高い認知度を誇るグローバルアンバサダー・大谷翔平選手が、『お〜いお茶』を手にした姿が現れる。国内・海外共通でブランドデザインと品質を発信する、グローバルマーケティングだ。同時に、エリアごとに異なるニーズに即した最適なアプローチで日常生活に浸透・定着を図るローカルマーケティングを併せ持つのが伊藤園の特徴だ。国内・海外事業を統括するグローバル本社と、国内で蓄積した技術・品質管理力を高い生産性で機能させる現地法人設立とブロック生産・販売体制の構築。「グローバル×ローカル」(統一ある価値訴求×差異を許容する最適解)のシナジー展開が、グローバルブランド化に成功した要因と言える。


100年企業になる新たな40年を見据えて、2025年度から中期経営計画と連動する7つのマテリアリティを新たに策定。重点テーマやKPIを設定し、サステナビリティ経営の実効性を高める一歩を踏み出した。その一つが、「世界のティーカンパニー」への道を切り開く最も大切な資産=人財を育成する、人的資本経営への投資である。自己啓発援助制度「伊藤園大学」は、営業、財務、マーケティング、グローバル、「伊藤園大学院」も経営的立場のアウトプットや実践、などのカリキュラムを開講。また、海外研修制度はグループ企業と連携し毎年、海外研修生を公募。市場調査やマーケティング戦略、営業、財務管理など幅広い研修を1年間体験し、海外展開の即戦力人材の育成に注力。『お~いお茶』のグローバル化を加速する海外生販体制の確立に向け、茶葉製品に精通し海外事業をけん引できるグローバルな経営人材の輩出を、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するキーストーンに位置付けている。


「経営戦略と連動した人財戦略」の再構築にも着手。CHRO(最高人事責任者)が委員長を務める「人財戦略委員会」で中長期的に求める人材・組織とその育成策・方向性を定めるとともに、人事・福利厚生制度のグループ共通化など、中期経営計画とその先に描く経営戦略や成長ステージと連動した「中長期的な人財・組織のありたい姿とその育成策や方向性=人財ポートフォリオ」を想定し、重点テーマとKPI策定の検討を進めている。基盤となるのが、経営理念「お客様第一主義」を実践する「STILL NOW」(顧客は何を不満に思っているか)の問題意識やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)・行動規範の価値観である。全ての社員がチャレンジマインドや専門性を持ち、経営環境の変化に応じて自ら考え挑戦し、新たな価値創造とビジョン実現へ行動し、イキイキと活躍し、能力・価値を発揮できることを目指している。


物価や為替、地政学的な情勢や市場環境の変動など、グローバル戦略には予測を超越する時流や価値観の変化にも対応できるビジョンと人材が不可欠になる。広く新天地を求めて移動し、その地の環境に適応しながら価値や文化を守り、進化させることが求められるだろう。



(株)伊藤園

  • 所在地 : 東京都渋谷区本町3-47-10
  • 設立 : 1966年
  • 代表者 : 代表取締役社長 執行役員 本庄 大介
  • 売上高 : 4727億1600万円(2025年4月期)
  • 従業員数 : 7916名(連結、2025年4月末現在)