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【企業事例】優れた経営戦略を実践する企業の成功ストーリーを紹介します。
モデル企業 2026.02.27

『HI-CHEW』をフラッグシップに海外市場を切り開く 森永製菓



2030年に海外市場売上高25%超を目指す

森永製菓がグローバル展開を加速している。2025年3月期の海外売上高は300億1600万円と前年比12.5%増の伸びを記録し、海外売上高比率は13%を超える。特に高い成長を遂げているのが米国市場だ。


2021年3月期に72億1500万円だった米国事業売上高は、2025年3月期には209億5600万円へ拡大。実に3倍近く伸びている。加えて、中国・台湾などのアジア市場やその他の地域への輸出が堅調に推移した結果、海外売上高の合計は2021年3月期の117億7500万円から4年間で2.5倍になるなど躍進が続いている。


中でも、グローバルにおける市場拡大のけん引役となっているのがロングセラー商品『HI-CHEW(ハイチュウ)』だ。2001年に台湾で発売したのを皮切りに、2004年に中国、2008年にはタイと米国で発売すると、2010年にはニュージーランドへの進出を果たした。


さらに、2018年からは英・豪・仏で順次販売をスタートさせるなど、海外市場を切り開いていった。その結果、アジアから米国、オセアニア、そして欧州へと人気は広がり、今や世界30カ国以上で販売されるグローバルブランドとしての地位を確立しつつある。


HI-CHEWの海外売上高は、すでに日本を超える規模まで拡大している。同社は今後も各地域でHI-CHEWの売上高拡大を進める一方、さらなる市場進出および事業基盤の構築を積極的に進めていく考えだ。


2023年にはHI-CHEWブランドの深耕のため「HI-CHEWグローバル推進室」を開設。グローバルでHI-CHEWブランドを広げていくのはもちろん、今後はHI-CHEWで培った事業基盤を活用しながら各エリアでゼリー飲料やウェルネス商品の育成や経営基盤の強化、生産体制の拡充に務め、2030年には海外売上高750億円、海外売上高比率25%以上へ引き上げていくことを目標としている。



米国で人気に火が付き欧州に広がる

海外展開のフラッグシップ的な役割を果たすHI-CHEWは、日本でも人気が高いロングセラー商品だ。日本でHI-CHEWが発売されたのは1975年。「かむほど幸せ食感」のキャッチフレーズ通り、ソフトな食感とあふれるフルーツのおいしさが口いっぱいに広がるオリジナリティーの高い大人向けのお菓子として、50年を経ても色あせることなく国内でも根強い人気を誇っている。


ロングセラー商品として売れ続けるのには理由がある。高級を意味する「ハイ」を付けて『ハイチュウ』と名付けられた同商品は、これまでストロベリー味やグリーンアップル味、グレープ味、ブルーハワイ味など多種多様なフレーバーを投入。味だけではなく、2000年以降は他社の人気商品とのコラボレーション商品や、プレミアム商品へとラインアップを広げた。


また、パッケージも従来のスティックタイプに加えて複数の味を楽しめる袋入りアソートなどニーズに合わせた商品を次々と投入しており、これまでに発売されたHI-CHEWは238種類に上る。商品そのものの独自性や質の高さに加えて、常に新しい魅力を発信し続けている点もファンを飽きさせない理由である。海外展開においても、2022年に米国研究所を設立。現地ニーズに合わせた商品開発のスピードアップを図っている。


一方、販売戦略の転換が米国市場拡大のきっかけとなった。もともとは日本食品の一つとして日系やアジア系の小売店で販売されていたが、米国系大手チェーン店のキャンディーコーナーを攻略すべき売り場と定めて戦略的なマーケティングを推進。2019年に米国系大手チェーン店のキャンディーコーナーへの導入が実現したことで、顧客接点が大幅に増えた。さらに、2021年から2023年にかけて販売エリアが全米に拡大したことで、大きく売り上げを伸ばしていった。



『ハイチュウ』から『HI-CHEW』へ

2024年、同社はブランドロゴをカタカナの『ハイチュウ』から英語表記の『HI-CHEW』にリニューアルした。日本から世界へ。これからも多くの人に愛されるグローバルブランドへと育てていく意思を明確に打ち出したのだ。商品ラインアップについても、砂糖使用量を削減した健康軸の商品や個包装を減らした環境配慮型の商品など、進出する国や地域のニーズに対応する商品展開に力を入れている。


また、海外市場が堅調に拡大する中、生産体制の拡充も進める。2024年には日本円で約196億円を投じて米国に第2工場を新設すると発表。2027年の稼働開始を目標に、急成長する海外市場における安定的な供給体制の確立と生産効率化を図っていく。


今後もHI-CHEWのさらなる市場拡大に努める一方、中長期的にはウェルネス商品の育成にも力を注ぐ。具体的には台湾や香港、シンガポールでは『inゼリー』の展開を推進。中国やタイではコラーゲンドリンクの販売拡大に取り組んでいく。さらに、米国では新たなゼリー飲料である『Chargel』のブランド認知拡大に注力していく方針だ。


これらの商品はHI-CHEWほどの認知度はまだ得られておらず、売上高についても限定的だ。しかし、これまで培った独自技術と昨今の健康意識の高まりも相まって海外市場におけるポテンシャルは高いと同社は見ており、ウェルネス領域をHI-CHEWに次ぐ新たな成長の原動力にすべく今後も積極的に事業拡大を図っていく。


さらなる飛躍を目指し、ここ数年で海外事業を一気に加速させている森永製菓グループ。国内の少子高齢化が進む中、海外市場の拡大は国内企業にとって成長のために不可欠な戦略でもあるが、同社にとって海外進出への挑戦は創業者から受け継がれた企業DNAでもある。


「森永が世界の五大製菓会社の一つになろうという大願を抱いていたのである」。これは、創業者である森永太一郎氏の著書『パイオニアの歩み』の一文であり、太一郎氏が当初から世界市場に対して強い思いを抱いていたことが伝わってくる。1899年に森永西洋菓子製造所を設立した太一郎氏は、その後もたびたび米国を訪れ、主要な製菓工場を視察して回ったという。


グローバル市場で勝負する――。「世界の森永」を目指した創業者の志は、今も海外市場へ挑戦する上で大切な礎となっている。


森永製菓(株)

  • 所在地 : 東京都港区芝浦1-13-16
  • 創業 : 1899年
  • 代表者 : 代表取締役会長CEO 太田 栄二郎
    代表取締役社長COO 森 信也
  • 売上高 : 2289億5700万円(連結、2025年3月期)
  • 従業員数 : 3153名(連結、2025年3月現在)