その他 2022.07.28

ホールディングスグループ経営フォーラム
ゲスト:ヤマチユナイテッド、セレンディップ・ホールディングス

 

 

事業・組織・財務のバランスをとる経営システム

 

タナベ経営は2022年7月11日、「ホールディングスグループ経営フォーラム」を開催。優れたグループ経営により企業価値を高めている企業と、グループ経営実装支援の実績を数多く持つタナベコンサルティングのコンサルタントによる講演をリアルタイムで配信した。

※登壇者の所属・役職などは開催当時のものです。

 

 

ヤマチユナイテッド:「THE 100 VISION」達成のグループ経営手法

 

 

ヤマチユナイテッド
代表
山地 章夫氏
累計120の事業を立ち上げ、住宅関連、インテリア、飲食、介護、イベント、商社など現在50事業、社員700名、年商245億円のグループ経営を手掛ける。1955年生まれ。28歳で稼業を継ぎ、独自の経営手法「連邦・多角化経営」で飛躍。多角化経営をポピュラーな経営戦略にするために、講演、執筆活動を精力的に行っている。

 

1.会社概要

・山地氏が28歳のとき、札幌で社員30名の事業を承継(現在設立65期目)。1996年ホールディング経営スタート。連邦経営に進化する。

 

・累計120以上の新規事業を起業、現在50事業を運営。起業、リストラ、大口不良債権、社員クーデターなどを経験。全員経営、ホールディング経営、多角化、理念整備により数々の環境変化を切り抜けてきた。

 

2.理念・ビジョンがグループ経営成功の要

・理想的な会社とは「売り上げ、利益、内容において成長し続ける」「十分な収益と、強い財務内容」「ブランド力があり自分、社員、家族が誇りを持つ」「社員がやりがい、生きがいを感じ輝いている」など。実現する方法は、「事業を多角化し、ホールディング会社中心に連邦グループ経営を行う。連邦本部をつくり、理念で会社をコントロールする」「社員参加型のシステム経営を行う」の2つ。

 

「理念経営」で一貫性を持たせるためには、①グループ全体の理念をつくり浸透させる、②各事業・子会社ごとにミッション・ビジョンを作成する(グループ理念との一貫性)ことが必要。
→全社員が会社を代表するような判断と自律的行動をするには、理念の整理・浸透が大事

 

・理念経営による業績アップ事例として、グループ会社のジョンソンホームズの取り組みがある。リーマン・ショック時、経営不振で赤字に陥ったが、企業理念を整備したところ会社が生まれ変わり、業績が向上。今では札幌トップのハウスメーカーに成長。

 

3.グループ経営成功のための「システム経営」

①社長、幹部中心のトップダウンとボトムアップのミックス経営、②システム経営は仕組みにより合理的、自主的に経営される、③全社員が経営感覚を持ち、経営に一部参加する仕組み、④自主計画→自主管理→自主評価→自主分配、⑤採用に全社で取り組むため、良い人材が入社する、⑥幹部人材が急激に育つ仕組みと社員教育、⑦社長は重要決裁と情報収集のみ→新規事業開発や自己実現、自由な時間をつくる

 

4.人材の宝庫になった「採用と教育手法」

新卒採用成功企業になるために、①積極的に打って出る攻めの新卒採用、②学生目線の会社を研究し近づける、③楽しく、風通しのよい社風にする、④ブランディングしワクワクするビジョンを伝える、⑤多角化を企業の魅力にする→職種別採用、などを実施
→採用ファースト戦略で就職人気企業に

 

社長育成・幹部養成のために、①責任あるポストが多いと幹部が育つ、②幹部は経営会議で育つ、③新人教育と幹部教育のサンドイッチ作戦(中堅社員が自然に育つ)、④新人は社長自ら関わる、⑤理念やビジョンと一貫性ある目標設定、⑥情報共有の機会、褒められる機会、会議で発言する機会、損益感覚や具体的な数字による管理の機会を与える、⑦成長にフォーカスした個人面談を実施

 

 

セレンディップ・ホールディングス:「経営の近代化」を実現するホールディングス経営

 

 

セレンディップ・ホールディングス株式会社
代表取締役社長
竹内 在氏
米国Bradford大学卒業。ニフティ株式会社の経営企画担当として従事を経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社にて、経営・マーケティング戦略のコンサルタントとして活躍し、日本オラクル株式会社のマーケティング本部長に就任。現在は、セレンディップ・ホールディングス株式会社の代表として、子会社の経営にも従事。

 

1.会社概要

・製造業に特化した事業投資会社として、「事業承継」と「地方創生」を積極的に推進。具体的には事業承継プラットフォーム構築、中小企業の経営近代化、M&Aによる業界再編を手掛ける。パーパスは「100年企業の創造 日本の中堅・中小製造業に経営革新をもたらし、中小企業の未来を創る」。

 

・経営者の高齢化、事業承継という社会課題を起点に事業を構想し、ビジネスモデルを確立させ、2021年6月東証マザーズに上場。

 

2.M&Aにおけるリアリティ

・企業成長には、①オーガニックグロース(自助努力による成長)、②レバレッジグロース(外部資源活用による成長)の2種がある。②にはIPO、M&Aなどの手段がある。

 

・日本の中小企業はM&Aへのマイナスイメージが強く、心理的阻害要因になっている。欧米では経営と所有の分離が一般的だが日本は分離されていない。M&Aにまつわるトラブルとして、業績、新経営体制と成長戦略、取引先や従業員の理解、創業の精神・企業文化、準備不足、などがある。

 

・M&Aにおけるリスクとして、①十分なデューデリジェンス※ができていない(グループ全体での明確な成長戦略が描けていない)、②のれんの減損リスク、③資金調達・M&Aファイナンス、④ガバナンス・コンプライアンス・法務問題、⑤偶発債務・追加投資の必要性、⑥チェンジオブコントロール(有能な人材の離反、顧客・取引先の離反)などがある。

 

※M&Aのための買収価格を決定する際、買収者が買収対象企業の財務などに関する情報を入手し、その情報が真実かどうかを調査すること

 

3.プラットフォーム型ホールディングスの構築方法

・ホールディング経営は異なる複数の事業体を経営していく上で、最も合理的な経営手法だが、運営の難易度は高い。

 

・導入ステップは、①異なる業界慣習、異なる歴史、異なる企業文化・価値観を1つの目標や考えでまとめる、②ホールディング会社と事業会社の役割の違いを明確化する、③共通プロセスで組織を共有化する、④標準化と独自化、となる。

 

・セレンディップの「モノづくり事業承継プラットフォーム」は、事業承継に必要な全てのソリューションをワンストップで提供する。特に製造業のバックオフィスは最も業務革新が進んでいないため、新たに買収した企業に対し、業務支援サービスを提供。標準化したオペレーションにより、高い品質と生産性を実現する。

 

4.買収した企業の統合

・M&Aアプローチは、①デューデリジェンス、②統合プラン、③PMI(M&A後の統合プロセス)、④シナジーの実現、の順となる。攻めのPMIとして、キャッシュフローの最大化を行う(売り上げの拡大、オペレーションコスト低減、運転資本の提言、設備投資の回収)。守りのPMIとして、リスク最小化を行う(コア社員のつなぎ止め、GRC※の構築、内部統制の導入、事業計画の蓋然性)。

 

※ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス

 

・M&Aの一番の難所は、従業員の抵抗(人は変化を恐れるのではなく、喪失感を怖がる)。人間関係、自分の領域、ストラクチャー、将来、意義、コントロールなどが喪失しないと示すことが大切。