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【研究リポート】

ビジネスモデルイノベーション研究会

秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート2024.06.05

多様化する宇宙ビジネスの現状と将来予測:スパークス・アセット・マネジメント

【第2回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における「知の探索と深化の融合・結合の実践」をテーマに様々な分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問している。
第11期第2回のテーマを「To the new place, new future~新たな場所へ、新たな未来へ~」とし、サブテーマに下記3点をおいて、ゲスト企業の視察を実施した。
1.超速で変化する世界の中で挑む新領域への挑戦
2.未知・未見に対する好奇心ドリブン経営
3.New 3C イノベーション戦略の実践
“Curiosity, Creativity, Collaboration”
研究会参加者は、JAXA視察、スパークス・アセット・マネジメントの講話、霧島酒造の講話と視察から、新たな領域への可能性を感じ、自社のブランディングについて学びを深めた。

開催日時:2024年4月23日(鹿児島開催)

 

 

多様化する宇宙ビジネスの現状と将来予測:スパークス・アセット・マネジメント株式会社

 

スパークス・アセット・マネジメント株式会社
次世代投資成長本部 次世代投資成長部 宇宙投資チーム エグゼクティブバイスプレジデント 大貫 美鈴 氏

 

 

はじめに:種子島宇宙センター/スパークス・アセット・マネジメント株式会社のご紹介

 

種子島宇宙センターは、総面積約970万㎡の日本最大のロケット発射場。種子島東南端の海岸線に面しており、世界一美しいロケット発射場といわれる。

 

センター内には、「大型ロケット発射場」「衛星組立棟」「衛星フェアリング組立棟」などの設備があり、人工衛星の最終チェックからロケットへの搭載、ロケットの組み立て・整備・点検・打ち上げ、打ち上げ後のロケットの追跡まで一連の作業を行い、日本の宇宙開発において人工衛星打ち上げの中心的な役割を果たしている。

 

スパークス・グループ株式会社は、代表取締役社長・CEOの阿部修平氏が1989年に創業し、国内の独立系運用会社として初の株式上場を果たした企業である。「世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」をパーパスに掲げる同社は、宇宙フロンティアファンドを有しており、宇宙開発に関わる人材・技術を支援し、世界と戦える日本発の宇宙企業の育成、さらには、日本全体の技術革新への貢献を目的として運用している。

 

今回ご登壇いただいた大貫様は、大学卒業後、大手建設会社の宇宙部署やJAXA勤務を経て独立。現在はスパークス・アセット・マネジメント株式会社の宇宙投資チームにて、宇宙ビジネスコンサルタントとして、宇宙ビジネスの最前線で活躍されている。

種子島宇宙センター
種子島宇宙センター

 


 

まなびのポイント 1:宇宙開発の歴史と国際的な宇宙産業のトレンド

 

米旧ソ連の対立による開発競争であった宇宙開発は米中の開発競争に変遷、宇宙新興国の登場、そして民間企業の台頭により多極化の様相を見せている。2005年頃には約1700億ドルだった世界の宇宙産業の規模は、2020年には5000億ドルに達し、30年代には1兆ドル、40年代には約3兆ドルの市場規模になると予想されている。

 

市場の急拡大に影響を与えている要因は、①ロケットの再利用や高頻度打ち上げ、ライドシェアによる打ち上げコストの低下②宇宙商業化にともなう民間企業台頭の2点である。

 

①については、多数衛星打ち上げの実現により規模の経済効果を生み、②については特にspaceX社の活躍が目覚ましい。スターリンク計画では累計6,000機以上の衛星を打ち上げるなど、ロケット企業のみならず衛星オペレーターとしても宇宙産業の成長と改革をけん引している。現在開発中の超大型スターシップが注目されている。

右の写真はH-2ロケットに搭載されている再着火能力を持つLE-5Aエンジン、左下の写真はエンジンの断面
右の写真はH-2ロケットに搭載されている再着火能力を持つLE-5Aエンジン、左下の写真はエンジンの断面

 

 

 

まなびのポイント 2:多極構造への転換期にある宇宙ビジネスの現在地

 

米中対立の二極化時代から、宇宙新興国の登場、そして民間企業の台頭という宇宙産業の多極構造への転換は、そのエコシステムにも影響を及ぼしている。

 

従来は政府を頂点としてその下に大企業、中小企業と続くピラミッド型構造であったが、現在では政府、民間企業、宇宙ベンチャー、VCなどが並列に並び、相互協力し合う形へと変化しており、これが、宇宙産業の門戸を大きく開く要因となっている。事実、現在世界で宇宙ベンチャーが約3000社、宇宙産業に携わるメーカーは約12000社と、2000年以降、宇宙に携わる企業数は増加している。

 

また、M&Aの活性化により、低軌道・商業宇宙ステーション市場においてはベンチャー企業の垂直統合が盛んに行われており、次世代の宇宙分野におけるリーディングカンパニーが生まれている。このように「産学官金」の連携が加速する中で、スパークスは宇宙産業の拡大に資するVCとしてエコシステム形成に貢献している。

ロケットガレージ内の様子
ロケットガレージ内の様子

 

 

 

まなびのポイント 3:宇宙利活用の拡大・多様化で未来産業へ

 

この構造変化とエコシステムの形成によって、宇宙ビジネス専業のベンチャー企業のみならず、非宇宙関連企業の参画も顕著になっている。

 

特に、地球低軌道(LEO)における小型衛星のコンステレーションによるブロードバンド通信や携帯で直接衛星通信を行うDirect to Device (D2D)通信などで全地球のコネクティビティの実現を目指す中、Amazonや楽天などのプラットフォーマーによる通信事業の参入が大きな流れとなっている。

 

また、衛星データの利活用が、社会課題の解決に貢献するなど衛星利用サービスが衛星ビジネスの中で非常に高い割合を占めている。

 

宇宙での活動の幅が広がることにより、新たに生まれる宇宙事業もある。例えば、スペースデブリ除去や、衛星の修理や燃料補給による運用の延長などの軌道上サービスなどがある。

 

さらに、有人宇宙探査のアルテミス計画では月面着陸機やローバー、宇宙服などが民間企業からのサービス調達で進むなど、宇宙産業は、さまざまな業界の民間企業が参入してくる未来の主要産業となることが期待されている。

宇宙滞在中に食されている宇宙食
宇宙滞在中に食されている宇宙食

 

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