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【研究リポート】

企業価値を高める戦略CFO研究会

経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート2024.05.13

社会課題解決型製品の展開を軸にした攻めのESG経営:雪ヶ谷化学工業

【第2回の趣旨】
CFOは、単なる財務担当者ではなく「企業参謀」として、経営者目線での財務はもちろんのこと、非財務への取組により企業価値を向上させる存在である。
第2回テーマは「ESG経営と財務・非財務戦略による企業価値向上」。経営戦略と財務・非財務戦略を連動させ、それらを企業価値に変えていくCFOの視点でESG経営と企業価値向上について学びを深めた。

開催日時:2024年4月17日

 

 

 

雪ヶ谷化学工業
代表取締役社長 坂本 昇 氏

 

 

はじめに

 

坂本氏は半導体製造装置メーカーであるディスコを経て、2007年に雪ヶ谷化学工業へ入社し、2013年に同社代表取締役社長に就任した。常に新しい価値の創造を求めて努力を積み重ね、日夜研究と開発に全力で取り組んでいる。2019年には社会課題解決型製品を手掛けることの必要性を感じ、サステナブルな製品開発に着手。会社組織全体で取り組んだ結果、2023年12月には「第7回ジャパンSDGsアワード SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞」を受賞した。

 


スポンジや雑貨など、雪ヶ谷化学工業が手掛けている製品

 


 

まなびのポイント 1:ゼロエミッション+サスティナブル活動

 

同社では、社会課題解決型製品の普及と身近な努力の積み重ねを大切にしている。SDGsに対する取り組みを社内体制として坂本氏が整えて以降は、基本的に社員が自ら考えて取り組む体制となっている。坂本氏は裏方に徹し、旗振り役である総務部長と連携して推進活動を見守る立場だという。

 

社内において社会貢献活動を推進する中で「周囲の企業へも拡大させてはどうか」という声が社員から上がった。この発案を基に周辺企業を巻き込み、日本で初めてのSDGs工業団地「iSIP(Inashiki Sustainable Industrial Parks)」を立ち上げた。工業団地全体でサスティナブルになることが、地域へ波及していくのではないかとの考えから始まったこの取り組みに、今では17社が参加している。活動の輪が広がることで地域の人口減少抑制につながると期待が集まっている。

 


出所:雪ヶ谷化学工業提供資料

 

 

 

まなびのポイント 2:社会課題解決型製品の開発

 

化粧品用スポンジは油に強いことから、石油由来原料の合成ゴムが100%使用されている。

 

そこで、同社では合成ゴムの使用量を少しでも減らせないかとの発想から合成ゴム90%、天然ゴム10%で構成する化粧品用スポンジ「ユキロンRPN10」を開発した。

 

本製品の開発に際して、脱石油由来原料にシフトすることでかえって社会のほころびを生まないか懸念した同社は、天然ゴムに関するフェアトレード調査を実施した。しかし、当時、天然ゴムに関するフェアトレードを認証あるいは管理する団体がなかった。そこで、「ないものは自分達でやろう」との発想の基、自社使用分に関して同社が調査を開始。

 

フェアトレード素材を証明する仕組みを作った。本取り組みに関するロゴマークを作成し、消費者にまでメッセージが届くようにした。

 


出所:雪ヶ谷化学工業提供資料

 

 

 

まなびのポイント 3:ルールメイキングによる市場創出

 

フェアトレード天然ゴム市場の取り組みが、経済産業省の「市場形成ガイドライン」に掲載された。ルールメイキングと社会課題解決は相性が良い。購買者の意識啓蒙と行動変容を促す意味でも、ルールメイキングは効果的である。

 

ESGの取り組みを行っても上場企業の株価は効果が薄い。上場企業のステークホルダーは多様で複雑化しているが、非上場企業のステークホルダーは少ないため、ESGに関する高い目標数値を設定して積極的にチャレンジしやすい側面がある。

 

社会課題解決型製品を開発・販売しても、会社の利益につながらないと意味がない。価値を理解してもらい、取引企業や消費者に対して、意識変革や行動変容を促していくことが重要である。

 


出所:雪ヶ谷化学工業提供資料

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