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【研究リポート】

新しいものを生み出す組織カルチャー研究会

ビジネスモデルや組織の変革が求められる現代において、人材価値を見直し、その価値を最大限に引き上げイノベーションを起こすことは必須の経営技術です。成長発展の足掛かりとなる「新しいものを生み出す組織カルチャー」を研究します。
研究リポート2024.04.12

浦和学院を甲子園優勝へと導いた意識改革:ファイアーレッズ メディカルスポーツクラブ

【第1回の趣旨】
新しいものを生み出す組織カルチャー研究会では「文化」を研究対象とし、変革を起こし、持続的に成長している企業ではどのような「文化」を作り出しているのか、またはすでに「風土」となっているケースも含めて、研究テーマとして扱い、相互に学び合う場としている。
第1回目はスポーツチームにおける組織を題材に「組織カルチャー」の定義を明らかにし、“勝てるチームの根本要因”について強豪・浦和学院の監督を務めた名将・森士氏にご講演いただいた。

開催日時:2024年2月21日(東京開催)

 

浦和学院を甲子園優勝へと導いた意識改革:ファイアーレッズ メディカルスポーツクラブ 理事長 森士氏

 

特定非営利活動法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブ
理事長 森 士 氏

 

 

はじめに

強豪・浦和学院の野球部監督として甲子園に通算22度導き、2013年には春のセンバツで初優勝を成し遂げた名将・森士氏。3年でチームが一新される高校野球という制約のある環境下で、 “常勝する組織づくり” を行っていた。

 

現在は高校野球の監督を勇退しており、特定非営利活動法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブを設立。教育サービスを通じた子供たちの健康と健全な精神の育成のサポート及び次代を担う指導者の育成など、本活動を通じた地域社会への貢献を目的にNPO団体の理事長として活躍されている。

 

今回は、約30年間に渡る監督時代の実体験から浦和学院を甲子園優勝へと導いた意識改革について講演いただいた。

ファイアーレッズメディカルスポーツクラブは総合型地域スポーツクラブを通じて、スポーツと勉学の両立を行い、子供たちの健康と健全な精神の育成のサポートをすることで、地域社会に大きく貢献している
特定非営利活動法人ファイアーレッズメディカルスポーツクラブは総合型地域スポーツクラブを通じて、スポーツと勉学の両立を行い、子供たちの健康と健全な精神の育成のサポートをすることで、地域社会に大きく貢献している

 


 

まなびのポイント 1:成果・目的の追求

浦和学院では野球部の目的 を“勝負の世界を通じて培う人間形成”としており、その成果(結果)を“全国制覇”としている。つまり成果(勝ち)だけにこだわるのではなく、日々の練習や活動を通じた「人間としての成長」を目的としており、実際に礼儀作法の徹底やボランティア活動にも力を入れている。

 

企業活動も同様であり、業績を追い求めることも必要だが、それはあくまで“成果(結果)”であって“目的”ではない。企業活動における目的は経営理念やパーパスの実現にあり、社会にとってどのような価値を提供するのか、何を目指しているかが周知・浸透している組織は強い。

 

浦和学院においても選手一人一人が目的を捉え、正しい判断基準を持つからこそ、常勝するチームとして継続できるのである。

 

まなびのポイント 2:チームづくりの3つのモットー

浦和学院野球部はチームづくりにおいて、以下の「3つの責任」をモットーにしている。

 

①自己責任(自分を高める責任)、②部下(後輩)の育成責任、③チームを向上(繁栄・勝利)させる責任である。

 

大会でベンチ入りできるメンバーは20名、レギュラーとして試合に出られるのはわずか9名の高校野球において、約100名の部員が所属する浦和学院では、3年間ベンチ入りを果たせない選手も多い。

 

しかし、たとえベンチ入りできなくてもそれぞれが自らチームを支える役割に気づき、応援や練習のサポートなど、チームのパフォーマンスを最大限高めるための役割を担うのである。大事にしているモットーがチームに根付いているからこそ、選手一人一人の自律的行動につながっている。

 

第85回記念選抜高等学校野球大会にて浦和学院が優勝した瞬間
第85回記念選抜高等学校野球大会にて浦和学院が優勝した瞬間

 

まなびのポイント 3:自分の行動を振り返る仕組みづくり

一日の練習が終わると日誌に今日の目標・今日の課題・明日のテーマを綴り、翌日の練習に挑む。日誌を通じた考え方の整理・自己内省・活動内容の明確化を行っている。毎日がむしゃらに練習しているだけでは意味がなく、自分自身で考え試行錯誤しながら、改善につなげることが大事であると森理事長は言う。

 

浦和学院では、日誌というツールを用いて自らの成長に生かしているのである。この日誌は企業における人事評価と同等の役割を果たしていると考えられる。人事評価の本質的な価値は処遇を決めることではなく、評価を通じて、できていることと課題点を洗い出し、次に生かすことにある。

 

組織力を向上するためにも日々の活動を“内省”した上で、次のアクションにつなげることが重要である。

 

毎日を振り返り、明日からの活動を明確にした野球日誌
毎日を振り返り、明日からの活動を明確にした野球日誌

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