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【研究リポート】

SDGs・ESG経営研究会

2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート2024.03.08

ペットとサステナビリティの関係性とビジネスの広がり:PETOKOTO

【第3回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においてサステナブルというキーワードが非常に重要になる。SDGs・ESG経営研究会では、「未来の社会課題を解決するための新たな事業を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。
第3回は、ビジネスモデルそのものが社会課題解決に直結する2社から、ESG経営の実践について学んだ。
1日目では、株式会社PETOKOTO代表取締役CEOの大久保泰介氏より、ペットとサステナビリティの関係性とビジネスの広がりについてご講演いただいた。

開催日時:2024年1月25日(東京開催)

 

株式会社PETOKOTO 代表取締役CEO 大久保 泰介 氏

 

株式会社PETOKOTO
代表取締役CEO 大久保 泰介 氏

 

はじめに

 

ミッション(自社の存在理由)として「ペットを家族として愛せる世界へ。」と掲げている株式会社PETOKOTOでは、一生を通し、ペットが家族として「どう生きるか」を考えて、世界中のペットのクオリティ・オブ・ライフを進化させていく事業を推進している。

 

同社は「全ての命を尊重し、人が動物と共に生きる社会を目指す。」を信念とし、ペットが幸せな一生を送るためのサービスや情報を提供する、ペットウェルネスカンパニーである。人も動物も全ての命が生きやすい世界の実現に向けて、ITの力でペットライフを豊かにする社会課題発想のonly oneモデルを推進している。

 

ペットの一生によりそうウェルネスブランド
ウェルネスブランド体系図


 

まなびのポイント 1:ペット市場の動向と顧客ニーズ

 

サステナブルではない人間主導のペット市場、毎日80匹に上る犬や猫の殺処分問題など、ペットをモノとして扱っている現状を解決するために大久保氏は同社を起業。近年、SDGsへの関心の高まりとともに保護猫・保護犬の認知が高まり、世界的で保護活動が活発化する中、ペットを家族として再定義した事業展開を実現している。

 

同社の立ち上げた保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」は、日本No.1の保護団体数を誇るサイトへ成長。現在は行政との連携も進んでおり、データレコメンドマッチングを実施することで、双方のミスマッチを防ぐ仕組みも有機的に機能している。

 

海外と同様、日本においても飼育・販売の規制強化、超高齢化社会と晩婚化による飼育数や年間支出額の増加といった傾向がある。これらの社会的トレンドを的確に捉えることで、国や自治体、消費者の関心がどこに向いているか、その先にある顧客ニーズに応える事業展開が躍進の鍵となっている。

 

ペット=家族として、現状のサービスや市場を再定義
ペット=家族として、現状のサービスや市場を再定義

 

 

まなびのポイント 2:顧客のLTV向上を目指した事業展開

 

ミッションをベースとした事業領域の拡大により、ペットおよび顧客のLTVが高まり、顧客を離さない仕組みづくりを推進している同社。保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」の他、ペットライフの情報メディアでは3000本の記事・動画を発信。獣医師など専門家150名が執筆しており、正しい情報と分かりやすさに定評がある。

 

また、ペットの一生に寄り添うフレッシュフードとして、国産食材の使用や産地情報の透明性にこだわりを持ち、さらには人間と同じ食品工場で製造(スチーム加熱・急速冷凍)を行うことで、「餌ではなくご飯をペットに提供する」という明確なコンセプトを打ち出している。

 

加えて、365日獣医師サポートによるカロリー管理の体制を整えることで、関わる全ての人のエンゲージメント向上に取り組んでいる。事業を通してミッションを明確に発信することで、顧客・社員・社会も共感し、採用力強化にもつながる善循環を生み出している。

 

地球環境・保護犬猫への取り組み
地球環境・保護犬猫への取り組み

 

 

まなびのポイント 3:ペット産業とSDGs/ESG

 

「アニマルウェルフェア」が今、ESG投資の重要指標として注目を集めている。アニマルウェルフェアは「動物の福祉」と訳され、動物が生きている間はその動物の生活の質を上げることを目指す考え方である。昨今マクドナルドを筆頭に、ケージフリー(平飼い)の卵に切り替える欧米の大手企業が続出しており、動物福祉の考えがビジネスの基準になりつつある。

 

現在は家畜中心だが、ESG投資の重要指標として、今後ペットも指標に入ると見られている。PETOKOTOでは売り上げの一部を保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」へ循環させることで、命が循環する経済を作り上げているが、このような社会問題の解決に取り組む経営が企業ブランド構築に欠かせない時代となっている。

 

ケージフリーの卵に切り替える大手企業
ケージフリーの卵に切り替える大手企業

 

 

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