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【研究リポート】

アグリサポート研究会

アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート2024.02.09

育てる、つくる、食べる、つなぐ。:フードハブ・プロジェクト

【第2回の趣旨】
アグリサポート研究会(第8期)は、「アグリ分野でのサステナビリティ(持続的成長)モデルを追求する」をコンセプトに、先端技術の活用や新しいビジネスモデルの構築について研究し、成功のポイントを学んでいる。
第2回のテーマは「SDGs」。17の目標のうち、食料の供給は「飢餓をゼロに」、生産者の生活・雇用面の支援は「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献する。
今回の視察では、各社が考えるSDGsの課題解決のための考えと使命についてご講演いただいた。

開催日時:2023年12月14日(徳島開催)

 

 

農業法人フードハブ・プロジェクト
共同代表取締役 支配人 真鍋 太一 氏

 

はじめに

 

フードハブプロジェクトは、人口約4800名の徳島県神山町で、地域の農業問題の解決や食文化の継承、雇用創出、移住促進、コミュニティーの活性、次世代教育など、幅広いテーマで地域社会の課題解決を担っている。

 

何をする会社かという問いに「神山の農業を次世代につなぐためにできた農業法人です」と話すのはフードハブ・プロジェクト 共同代表取締役 支配人の真鍋氏である 。事業内容は次の5つをメインに据えている。

 

(1)新規就農者の育成事業、(2)農作物の生産・流通業、(3)加工品などの製造・販売、(4)飲食・食料品店の運営、(5)フードハブ事業の企画・デザイン・プロデュース


フードハブプロジェクトが運営する食堂「かま屋」

 


 

まなびのポイント 1:地産地食 ~「小さいものと、小さいもの」をつなぐ~

 

神山の農業を次世代につなぐために、地域の食材をふんだんに使った料理を、食堂「かま屋」で提供している。地域で育てた作物を作り手と来店者が一緒に食べることで、両者の関係性を豊かにし、神山の「農と食」を次の世代につないでいる。

 

各地から来る観光客が来店することもあるが、地元住民が利用することも多い「かま屋」。地元住民が来店しやすい工夫や取り組みがあるからか、中には、毎週来店する人もいるという。同社の狙いである「地域で作った作物を地域で食べる」仕組みが見事に成り立っていると言えよう。

 

日本では、高齢化、後継者不足、耕作放棄地の問題など、農業分野における大きな社会問題を抱えている。それらを一気に解決するのは難しい。しかし、神山で「小さいものと、小さいもの」、つまり少量生産と少量消費をつなぐことで解決の道筋を見出せるかもしれない。

 


視察日のランチ。左上から時計回りにケールサラダ、菊芋のスープ、カブと柿のピクルス、素揚げスズキとパクチーサルサロースト人参、釜炊き落花生ご飯が並ぶ

 

 

まなびのポイント 2:育てる、つくる、食べる、つなぐ

 

収益性のある農業という目線だけではなく、環境を整え景観を維持するなど、「社会的農業」(社会・公益性のある農業)を実践している。

 

例えば、農業を通じて地域に貢献できる人を育てるための農業研修が挙げられるだろう。有機あるいは特別栽培(化学肥料不使用)の少量多品目による神山町の地域性や圃場条件、気候にフィットした農業などを実践の中で学んでいく。受講生は生活費のサポートを受けながら、独立就農するまで神山町役場と連携した活動を行う。

 

そのほかにも、農業体験や食育のイベント、学校給食の提供なども社会的農業の取り組みとして挙げられる。


フードハブプロジェクトでは、神山で真剣に社会的農業に取り組みたい人材を募集している

 

 

まなびのポイント 3:SDGs:Sustainable〝Delicious〟Goals

 

同社では「SDGs :サスティナブル デリシャス、ゴール」という独自の考えを持っている。作り手と消費者が食卓を囲み一緒に食べる取り組みでは、先人の知恵や工夫、地域に伝わる伝統食、食文化について理解を深められる。

 

人も野菜も土も健康になる食べ方を学ぶ取り組みでは、農体験で土に触れ、生き物に出会い、それらの働きが感じられる目を鍛える。

 

作り手と消費者の交流を通して、食に関わる人々の働きやその思いを感じられる感性を育む取り組みでは、「地産地消」を実践して生産・流通・消費・循環の仕組みを知る。

 

いきなり大きな問題を解決することは難しく、持続させるのはさらに難しい。小さな課題解決を積み重ねることが、持続的な成長をもたらすのである。


フードハブプロジェクトが運営する「かまパン&ストア」

 

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