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【研究リポート】

物流経営研究会

”物流は世の中を支えている”にもかかわらず、他業種と比較して長時間労働、低賃金です。第7期は高収益ビジネスモデル、人財確保・デジタル化への取組を全6社と参加企業から学びます。
研究リポート2024.02.06

物流2024年問題など社会課題解決に向けた共創の取り組み:NEXT Logistics Japan

【第2回の趣旨】
物流業界を取り巻く環境は日々大きく変化しており、2024年問題への対応・デジタル化・自動運転技術の発展などを受け“労働集約型”から“装置産業型”への移行が進むと考えられている。
第8期物流経営研究会は「自社の真の価値を再定義する~バリューコネクトを発見しよう~」をテーマとし、視察企業や学びをもとに“選ばれる企業”になる理由をあらためて明確にするヒントを提供する。また「デジタル化」「環境対応」「採用」「育成」などの課題に対する解決の糸口になるよう、研究会参加者が学び、高め合う場でもある。
第3回はNEXT Logistics Japanを訪問し、「2024年問題」を端緒とする、物流の社会課題への共創的な取り組みについて講演いただいた。

開催日時:2023年12月18-19日(神奈川開催)

 

 

NEXT Logistics Japan
代表取締役社長CEO 梅村 幸生 氏

 

はじめに

 

NEXT Logistics Japanは、物流業界の社会課題であるドライバー不足やカーボンニュートラル、ホワイト物流の解決を目指すスタートアップ企業である。共通の危機感を持つ大手メーカーや物流会社の共同出資により2018年に設立された同社は、これらの社会課題を解決することを大きな使命としており、より少ないドライバーとトラックで、より多くの荷物を運ぶため、システムを最大限に活用し、業界の効率的な輸送スキームの確立を目指している。

 

現在の物流マーケットは、企業間物流が9割、消費者物流が1割程度を占めており、業界における企業間物流の存在感は強い。しかし、この企業間輸送は輸送効率が悪く、「6割が空気を運んでいる」と言われている。要因として、帰り荷のマッチングの難しさや、閑散期・繁忙期など荷量の変動などが挙げられる。


NEXT Logistics Japanが開発した全高4.1mの「ダブル連結トラック」。大型トラック3台分の荷物を混載して運び、積載率の大幅な向上、CO2排出量の削減、ドライバーの省人化に成功した

 


 

まなびのポイント 1:幹線輸送の効率化・省人化を目指す運送スキーム

 

1名のドライバーが多くの荷物を運ぶためには、1運行当たりの積載重量と容積の両面を考える必要がある。同社は、自社開発した「ダブル連結トラック」の実走などにより、ドライバー1人で2台分の輸送を可能にしている。さらに、2023年12月にはトラック3台分の荷物を「ダブル連結トラック」1台で運ぶことにも成功した。

 

積載率を高めることに貢献したシステムが、同社の物流最適化システム「NeLOSS(ネロス)」だ。NeLOSSは、人の手で2時間以上かけて割り出していた配車と荷物の組み合わせを、量子コンピューターを用いることにより、約40秒で算出できる。荷姿や重量、温度帯が異なる荷物も、自動で積み付け・割り付けの最適解を短時間で割り出せるため、作業時間が大幅に短縮され、効率化・省人化に寄与する。

 


リアルのダブル連結トラック幹線輸送で培ったノウハウをデジタル技術に生かす物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS」

 

 

 

まなびのポイント 2:業種・業態の壁を超えた「オールジャパン」での仲間づくりの枠組み「NLJ Plus+」を設立

 

さらに2022年、同社は物流の社会課題解決に向けた取り組みを、日本全体でより一層加速することを目指して「NLJ Plus+」を設立した。これは、共同出資のパートナー企業とともに培ってきた物流最適化のソリューションを、パートナー企業以外も活用できるオープンスキームである。

 

物流の社会課題は、1社単独では解決し得ない。同社はパートナー企業の枠を超え、連携企業の業種・業態数の幅を広げることで、より多くの企業の参画、 「NLJ Plus+」での取り組みの加速を目指している。

 

 

 

まなびのポイント 3:サステナブルロジスティクスの実現で社会課題を解決

 

同社は、2019年の運行開始以来、事業開始から4年で運行トラックの複合積載率で最大89%を実現したほか、6600名の省人化と1350トンのCO2排出量の削減に成功し、着実に社会課題解決に貢献している。

 

また同社のトラックドライバーの給与は600万~800万円(業界平均463万円)と高く、時間外労働時間も360時間(時間外労働時間の上限は960時間)と少ない傾向にある。

 

同社の代表取締役社長CEO・梅村幸生氏は、「当社のドライバー待遇改善や生産性を上げる取り組みを指数関数的に業界に浸透させ、モノが運べなくなる危機を回避していくことが必要」と提唱している。

 

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