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100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【研究リポート】

ライフスタイルビジネス研究会

変容する社会課題や顧客課題を的確に掴み、ドメインとバリューチェーンの拡大を切り口にした新たな「ライフスタイル価値」を創造するための真髄に迫ります。
研究リポート2024.01.30

100年続く100億企業を目指して ~「贈る文化」を支えるオンリーワン企業~:ヤマニパッケージ

【第2回の趣旨】
ライフスタイルビジネス研究会では、ライフスタイルに根差したビジネスを展開し、真に社会に貢献し続ける企業を「ライフスタイルカンパニー」と定義している。
第4期は「-ライフスタイルカンパニー100社の創造-10年後のビジネスモデルをデザインしよう」をコンセプトとして掲げ、実践型講義と現地視察で「ライフスタイルカンパニー」を増やすべく、研究を行っている。
第2回では、岐阜県でフルーツや酒類、ギフトなどの包装パッケージを手掛け、パッケージ業界でトップクラスの高収益を実現するヤマニパッケージ様にご講話いただいた。

開催日時:2023年12月7日(岐阜・名古屋開催)

 

 

株式会社ヤマニパッケージ
代表取締役社長 吉田 信宏 氏

 

はじめに

 

ヤマニパッケージは、岐阜県に本社を持つ1952年創業の紙製品卸業者である。中でも、箱や手提げ袋などの包装資材を取り扱い、全国のスーパーマーケットや雑貨店、ギフトショップなどを販路に持つ。約1万点の既製品パッケージをストックしており、別注品(オーダーメイド)にも対応している。

 

単なるパッケージメーカーではなく、自社デザイナーが顧客のブランドコンセプトに合わせて形状からデザインまで提案を行うブランディング支援を行っていることが同社の特色である。

 

2023年6月に完成した「ヤマニパーク」と名付けた開放的な新社屋、近隣の自動倉庫を見学し、同業他社とは一線を画したブランディング手法やビジネスモデル革新のヒントを学んだ。

 


ヤマニパッケージ様本社

 


 

まなびのポイント 1:100年続く企業を目指したブランド経営

 

ヤマニパッケージでは、経営ビジョンである「100年続く100億企業を目指して」を達成するためのブランディングを学んでいる。

 

以前、当社の顧客や社員にアンケートを実施した際、会社の強みが伝えきれていないことがわかった。このため、顧客に伝えたいことを整理し、当社のブランドコンセプトを『さあ、あけよう「未来のワクワク」を』とした。

 

取引先は1万1,100社以上を有しており、業界ごとにカタログを作成するほか、デジタルマーケティング活用など既存の展示会だけでなく新たな顧客とのコミュニケーションも大切にしている。営業戦略では、粗利益率の高い既製品をいかにリピート受注するかが、収益面でのポイントで、デジタルとアナログを組み合わせた提案を行っている。

 

新社屋では、1階にてショールームのようにパッケージ事例を展示しているほか、応接室のデザインにも拘り「ワクワク」する商談ができる環境を整える。

 


本社1階にて、ショールームのようにパッケージ事例が展示されている

 

 

 

まなびのポイント 2:3つのブランド価値

 

当社ブランドのコンセプトは「専門価値」「人材価値」「社会価値」でカタチづくられている。

 

中でも専門価値としては、商品ごと(例えば産地によってデザインが異なるメロン専用の箱や日本酒専用の箱など)に顧客のニーズをスピーディーに形にする営業・組織体制が挙げられる。既存品と別注品(オーダーメイド)は約半々となっており、既存品を自動倉庫で管理することで実現している。この2種類の製品を同時に提供できるのは、工場を持つことを辞め、代わりに12,000パレットの大型自動倉庫を保有したからである。このような「保有する・しない」の経営判断は、業界の常識に囚われることなく行うことが重要である。

 

人材価値としては、遊び心やユーモアを様々な業務に取り入れることに加え、社員がデザイン・設計を行うことでノウハウを蓄積できるよう仕組み化を行っている。

 

こうした取り組みもあり、パッケージを通じて贈る文化に貢献することが当社の社会価値であるとしている。

 


商品は、本社近隣の自動倉庫で管理され、搬入・搬出は操作スタッフ2名で行うことができている

 

 

まなびのポイント 3:顧客にワクワクを届けるサステナビリティ経営

 

当社ではパッケージを通じてSDGsへの取り組みも行っている。これまでFSC®認証パッケージを積極的に推進してきたほか、バイオマス比率最大90%のレジ袋もいち早く既製品化(当社評)した。

 

営業面では、「1社依存比率の低減」を重視しており、1万1,000社以上の取引先に対し、1社依存比率は最高でも約1.5%、1社あたり平均売上高は50万円/年と取引先を小口分散化させることで取引解消リスクに備え、盤石な財務体質につながっている。

 

環境対策パッケージの積極的な開発や働きやすい環境作り、地域貢献活動を行いサステナビリティ経営を行い、100年続く100億企業に向け、意欲的に成長を続けている。

 


ヤマニパッケージ本社における講演の様子

 

 

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