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【研究リポート】

『成長M&A』実践研究会

「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート2024.01.11

中小企業のPMI事例:エムジーエス

【第5回の趣旨】
当研究会では、独自のM&Aモデルを確立している企業からM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供する。第5回は、PMI(経営統合プロセス)をテーマにゲスト2社(企業法務Matching合同会社、株式会社エムジーエス)を迎え、M&AにおけるPMIのポイントや実例について講演いただいた。
開催日時:2023年10月26日、27日(北海道開催)

 

 

株式会社エムジーエス
北海道支社長 佐藤 嘉和 氏

 

はじめに

 

エムジーエスは1957年創業の建設会社で、社員138名中88名が石工・造園・土木職人で構成される。2009年に初めてのM&Aを実施し、土木系の会社を譲受。その後、2018~2019年に造園会社・建設会社・建築事務所の3社を譲受。道路の縁石や河川工事のブロック張りなど建設業に係わる全ての工事を展開し、北海道内では石工工事において約50%以上のシェアを誇る。

 

同社は将来的な1つの業種への偏りに危惧し、総合建設業に向けたM&A戦略にかじを切った。「M&Aは思いやりが不可欠である」と考えており、社是にはキーワードとして「思いやり」が入っている。現在は、貿易・造園・建築・不動産・土木・石工・警備事業などの複合化事業を進め、「オリジナル技術による社会貢献」を提供し続けている。今後は建設以外の異業種も含め幅広い業種との連携を考えており、M&Aにこだわらず、事業提携など柔軟なアライアンス戦略を検討している。

 


株式会社エムジーエスの社是

 


 

まなびのポイント 1:PMIで最も重要なことは意識・企業文化の統合

 

総合建設業として事業成長を続けるに当たり、多くの技術力や人材が必要である同社は、M&Aを行い各事業の技術力や人材を融合し、新しい強固な組織の構築に取り組んでいる。

 

特に、材料の輸入から設計・施工まで一貫したサービスの提供を行い、顧客のニーズに応える総合的な建設企業を目指すためのM&Aを推進している。

 

PMIの主な統合対象は、経営、財務、組織・業務、人事・労務、意識・企業文化であるが、同社は意識・企業文化が最も重要であると考えている。これに失敗すると、M&Aの大半は失敗すると考えているためだ。

 

 

まなびのポイント 2:買収先企業の文化を尊重しながら進める

 

前述したように、PMIにおいては「企業文化の融合」と「企業方針の統一」が肝要である。シナジーを考えて譲受するものの、思った以上の効果を出すことは至難の業だ。

 

筆者のコンサルティング経験上、買収から統合までの労力を考えると、買収作業が約1~2割、統合作業が8~9割の感覚である。

 

企業文化の融合については、買収前は社員の性格や動きが見えないが、中小企業であれば社員一人一人と面談ができる。最初の訪問時は、雑談などで交流を深めると徐々に心を開いてくれることも少なくない。

 

このような経験から、シナジーを早く生み出すのは難しいと考える。買収先企業の文化を尊重しながら進めることが重要である。

 

 

まなびのポイント 3:PMIプロセス

 

PMIは、M&Aの成立前にすでに始まっている。PMIの計画を立て、DD(デューデリジェンス)で得た情報を落とし込み、初動プラン(クロージング後の3~6カ月後に行うべき作業プラン)の作成に入る。中長期プランは、1年程度を目安に設計すると良い。

 

初動プランでは司法行政手続きのほか、事務・物理的な作業を細かく分けて進める。中長期プランでは、経理システム、社内規定、給与基準などを一つ一つ確認しながら進める。

 

最も重要なのが給与基準である。自社より相手企業側が給与が高い場合もあり、統一作業に苦戦するケースは多い。PMIのプロセスにおいて、「PMIは売り手・買い手双方の組織再編である」という意識を忘れないでいただきたい。

 


M&Aによる事業の複合化をを進め、オリジナル技術による社会貢献サービスを提供する

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