TCG REVIEW logo

100年先も一番に
選ばれる会社へ、「決断」を。
【研究リポート】

ビジネスモデルイノベーション研究会

秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート2024.01.05

「空港型地方創生」地域活性化のモデル的存在に~関西の奥座敷から、日本の白浜、世界のKiiへ:南紀白浜エアポート

【第6回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、「両利きの経営」における知の探索をテーマに、秀逸なビジネスモデルを構築し成功しているさまざまな業界の優良企業を視察訪問する。
「両利きの経営」は、イノベーションを生み出すプロセスとして、“知の探索と深化の融合・結合の実践が必要”と提唱する経営論である。当研究会では、自社がイノベーションを起こす挑戦要素として、クレイトン・クリステンセン教授が述べる自社へと関連付ける力、質問力、観察力、実験力、人脈力を発信し、実践している。
今回のテーマは「CX×クオリティリーダーシップ」である。下記3点の切り口から、株式会社南紀白浜エアポート様、株式会社むさし様、株式会社アワーズ様より、顧客体験価値を最大化する方法と卓越した強みとそのブランディングを実現する方法について学んだ。
1.「CX(顧客体験価値)」のデザインとブランディング(個ではなく、地域一体での発信力強化)
2.組織変革を推進する「コンセプト・ブランディング」
3.~不易流行~時代変化に立ち向かうサステナブルな企業変革
開催日時:2023年12月20日(和歌山開催)

 

 

株式会社南紀白浜エアポート
代表取締役社長 岡田 信一郎 氏

 

はじめに

 

南紀白浜空港は1968年に開港。その後、2019年に株式会社南紀白浜エアポートを運営会社として民営化した。

 

民営化後、「空港型地方創生」を掲げ、民営化前には年3億円を超える赤字経営であった空港の立て直しを図るとともに、地域活性化に向け、自治体や他企業と連携したさまざまな事業を展開している。

 

同社は、仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」の普及や、「顔認証システム」などさまざまなデジタル技術の活用を進めており、民営化した空港だからこそできることを追求している。

 

 


 

まなびのポイント 1:赤字のトップバッターの白浜から「空港型地方創生」で地方に夢と希望を

 

南紀白浜空港の年間旅客数は関西国際空港の2.1日分である。これを10年計画で2倍の人数にすることを目指す。これを実現すべく、旅行会社「紀伊トラベル」を設立して地域への受け入れを担ったり、観光庁「地域連携DMO」や和歌山県「総合コンシェルジュ」への登録を実施したり、地域全体をマネジメントする取り組みを実現してきた。

 

その結果、民営化以降、旅客数は10年前の2倍以上に伸長。季節の良い夏場の観光客のみをターゲットとするのではなく、ビジネス客を呼び込んだ結果、平日や冬場にもお客様に来てもらえるように変化した。

 

コロナ禍には「地域丸ごと安心」をコンセプトに南紀白浜空港が地域全体をリードし、三密センサーを設置した。その後地域の各施設にも展開。また「笑顔で除菌」と銘打って、「笑顔」を認識しないと出ない除菌スプレーを南紀白浜空港へ設置。「笑顔大量製造」を目指して、空港から町役場、銀行等へつないで、地域活性化に貢献した。

 

 

 

まなびのポイント 2:~弱小空港がIoT先進空港~「白浜まるごと顔認証」でリゾート白浜をIoTの白浜に

 

自社が旅行会社として動き、さらに人を呼び込むために地域の魅力の発信と投資の呼び込みに努めてきた。その中で、“ビーチ・温泉は、「手ぶら、顔パス、キャッシュレス」で“をコンセプトに、NECと連携して顔認証システム「白浜まるごと顔認証」を開発した。

 

また、国内最先端の「空港DX」を推進すべく、①スマホを活用した点検台帳、②AI手荷物検査、③ドローン点検、④ドラレコ点検(滑走路点検の際、ドラレコで滑走路の状況を撮影しAI認証で判断)、⑤人工衛星データによる動態観測を実施している。

 

そして、南紀白浜空港が県・地域と連携してワーケーションを推進。ワーケーションで「人」「知」「企業」を呼び込み、地域活性化につなげている。

 

 

 

まなびのポイント 3:~空港を「どこでもドア」に~空港を拠点とする交通網の整備で経営改善

 

自転車、バス、タクシー、レンタカー、ヘリ・ビジネスジェットなど様々な交通手段が活用できるよう各所と連携して取り組んでいる。レンタサイクルを24時間便利に利用可能な状態にしたり、鉄道・空港・バス・県・市の5者で飛行機利用促進したり、富裕層への対応としてビジネスジェットやリムジンを横づけし、「希望を何でも考えてあげる」プランの提案をしたりと空港をハブとした地域活性化の取り組みを実施している。

 

また、地域を束ねるオンライン会議を空港がけん引し、関係者を束ねる地域プラットフォームづくりに貢献している。

 

空港は外需の取り組みが可能な貴重なインフラであり、都市と地域の間に存在する様々な不均衡、地域の課題を解決する重要な「飛び道具」になる。

 


空港写真は南紀白浜空港ホームページより抜粋
http://shirahama-airport.jp/kannai

 

ビジネスモデルイノベーション研究会一覧へ研究リポート一覧へ

関連記事Related article

TCG REVIEW logo