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【研究リポート】

企業価値を高める戦略CFO研究会

経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート2023.11.13

サステナビリティ時代のグループ経営:東京都立大学 大学院 経営学研究科 教授 松田 千恵子氏

【第5回の趣旨】
第5回テーマは「グループ経営とデシジョンマネジメント」。
攻めと守りの観点で経営戦略を実現していくための有力な組織戦略の1つにホールディングス経営体制への移行がある。ただし、その効果を獲得するためには、現状の経営課題を整理し、ホールディングス化により期待する効果を明確にし、その効果を実現させるための設計を正しくする必要がある。グループ経営の在り方は時代とともに変化していくため、取り組むべきテーマを明確にした上で組織戦略へ落とし込みたい。変化の激しい世の中において、どのようにグループ経営を推進していくのか学んだ。
開催日時:2023年10月20日

東京都立大学 大学院
経営学研究科 教授 松田 千恵子 氏

 

 

はじめに

 

松田千恵子氏は、東京都立大学大学院の経営学研究科および経済経営学部の教授であり、全社戦略(事業ポートフォリオマネジメント)を中心に、財務戦略と企業統治に関する研究、教育、実務に携わっている。

 

変化の激しい時代において、グループ経営を推進していくためのポイントをご講演いただいた。

 


 

まなびのポイント 1:荒波を越えていくために、経営者が難しい意思決定をする局面が増加

 

かつて経済成長に身を任せていればそれだけで企業が成功するというような時代があった。しかし、現在は経済環境や社会環境の変化が激しく、これまでの手法が通用しない時代となった。経営者は先行きが不透明な中で経営の意思決定を行う必要があり、それが企業の生死を分ける。マネジメント層の意思決定能力が企業の行く末を左右しかねないのである。ガバナンスの必要が増す一方だ。

 

東京証券取引所からは 、PBR1倍割れの企業への改善要請など、これまでよりも一歩踏み込んだ企業体質の改善が求められている。将来的には非上場企業を見る目線になってくると考えられることから、実効性のある執行機能の強化が求められる。

 

 

 

まなびのポイント 2:「戦略」を定量化して検証サイクルを創り上げる

 

「会社の目指すべきところ」に対して、軸となる企業価値は次の2つが挙げられる。1つ目は経済的な価値(負債および資本のコストを勘案した後の将来キャッシュフロー生成能力の総和の現在価値)。2つ目は社会的な価値(企業が常に希求し続ける目標およびそれを希求する態度や価値観)である。経営者はがこれらのバランスをとりながら経営を成り立たせることが必要になってきた。

 

将来に向けたシナリオを「戦略」としてバックキャスティングで作成し、戦略内容を定量化して検証するサイクルを作り上げることだ。数値化することで社内の意識が統一化され、モニタリングできる。


 

 

まなびのポイント 3:人的資本の面では、経営人材の多様性が必要

 

多様性の確保に関して、女性取締役の人数が注目されがちだが、スキル・ノウハウ・職業経験の異なる人材が多いと業績へ好影響が出るという研究結果がある。多様性の目的は「意思決定の成功確率を上げる」ことであり、ビジネス面でのバックボーンの異なる人材が多い方が判断に対する視点が増え、企業の置かれているリスクや機会に気が付く可能性が高まるのである。

 

外部環境が安定していれば、同一性が高い人材が集まった方が経営効率は良いが、現在のように外部環境の変化が多い時代には経営人材の多様性が必要になってくる。

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