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【研究リポート】

建設ソリューション成長戦略研究会

人件費・資材の高騰、地方の衰退など、外部環境の変化に合わせて提供価値を進化させている企業を研究し、建設業界の発展に寄与する機会を作っています。
研究リポート2023.10.25

草野作工が目指す建設業の姿~草木を守り、野の土を愛し、もの作りを楽しみ、工を極める~:株式会社 草野作工

【第6回の趣旨】
建設ソリューション成長戦略研究会では、秀逸なビジネスモデル・経営ノウハウを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を創出し、経営改革・業務革新のヒントを提供する。
第6回は、カーボンニュートラル木造建築へのチャレンジや特殊建築など価値提供領域を広げている土屋ホームと、ブランディング戦略やDXの推進で大きな変革を起こした草野作工の2社から学ぶ。
開催日時:2023年7月27日、28日(北海道開催)

草野作工
執行役員副社長 小町谷 信彦 氏

 

 

はじめに

 

草野作工は、1918年に創業した橋梁工事や道路・河川工事などを手掛ける総合建設会社である。近年は、発酵ナノセルロースの製品開発や農業法人の多角的な事業展開、自然環境の保全を目的とした「河畔林トラスト財団」設立などが評価され、経済産業省の「地域未来牽引企業」に認定された。

 

同社の成功の軸として挙げられるのが百年企業を目指した変革戦略「START THE CHANGE」である。「スタッフファースト(働き方改革)」&「建設DX」をキーワードに職場環境やイメージの悪さを改善。改革を行った結果、20代の土木系社員の年齢構成の比率が、2017年は7%だったところ、2023年には6倍(32%)に増えたという。さらに、土木系社員の平均年齢も49歳から43歳にまで引き下がった。


草野作工のDXセンター。


 

まなびのポイント 1:スタッフファーストの経営指針と意識改革

 

危機的な状況であった同社を変えたのは、百年企業を目指した変革戦略「START THE CHANGE」である。変革のポイントは3つある。1つ目はスタッフファーストの経営方針、2つ目は社内の情報共有と意識改革、3つ目は「働き方改+建設DX+ブランディング+情報発信」である。

 

まず、変革の目標を社員と共有し、会社一丸となっての推進を目指して、幹部、中堅、若手、女性によるブランドコンセプト会議を設立し、ブランドコンセプトとスローガンを固めた。そして、「社員が自分の子どもを就職させたい会社」を目標に掲げ、それを実現するためのクレドを制定。また、情報共有と社員の意識改革を目的としたシステムを導入し、全社員の休日取得情報を「見える化」させ安心して有給休暇を取れる環境を整備した。


草野作工のフィロソフィーや行動規範が書かれたクレドカード
 

まなびのポイント 2:「6K」から「ニュー6K」への取り組み

 

具体的な取り組みとしては、「給与が良い」については年俸制による収入の安定化、「休暇が多い」に関しては工事現場における完全週休二日制、「絆で結束」は若手協議会の設置(若手主体の新人教育、PR 活動の企画検討など)を進めている。ほかにも「危険回避の徹底」として、ICT 技術を活用した安全チェックや、広々とした敷地を生かした「きれい」な緑あふれる本社オフィス、ICT 技術を駆使した「格好良い」職場づくりを推進している。

 

 

まなびのポイント 3:建設DXの取組

 

草野作工では生産性向上のためには建設DXへの取り組みは必須であると考えている。全ての工事にウェブカメラやウェアラブル端末を導入し、相互に情報を共有し、進捗管理や体調管理、異常気象対応、車両運行支援などに活用している。これら全てをDX専属スタッフ「本社i-Conチーム」が担い、デジタル処理を内製化している。

 

特徴的なのは、建設DXを単なる生産性向上のためだけではなく、社内外に「先端産業」であるイメージをもってもらうために活用している点である。テレビCMでは「老舗」「建設業が変わった」ということを、HPでは「泥臭い印象から美しい土木施設」「最先端のICT技術を活用した美しい建設業」をPRしている。


DXセンター内部の様子

 

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