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【研究リポート】

『成長M&A』実践研究会

「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート2023.09.08

イトーキが考える新しい働き方とそれを実現するためのオフィス:株式会社イトーキ

【第2回の趣旨】
当研究会では、M&Aのモデルを確立している企業から独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例を学ぶ場を提供する。また、M&Aを活用した成長戦略を実現し、自社の企業価値を向上させるための道しるべを提示する。第2回のテーマは「ドメイン×M&A」。「住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会」との共催で、ゲスト3社(ITOKI、小松物産、Colors Japan)による「働き方」「事業ドメインごとのM&A戦略」についての講演を配信した。本リポートでは、イトーキが考える「明日の『働く』をデザインする」オフィスの在り方、レイアウトについて報告する。
開催日時:2023年5月18日(東京開催)

 

 

イトーキ 中央研究所
上席研究員 二之湯 弘章 氏

 

 

はじめに

 

イトーキは1890年に伊藤喜商店として、輸入事務用品や文具を取り扱う商社として創業。

 

その後、自社製品の開発、製造分野へも進出し、オフィス用品メーカーとして各商品で高いシェアを占める。また、事務用品だけでなく、空間設計も手掛けており、生産性や効率性の向上、感性や創造性を育む空間づくりを研究し、新たな価値を生み出す場としてオフィスを再定義している。

 

イトーキでは、経営課題を解決する糸口である「働く場としてのオフィス」に変革を起こすことは、経営課題を解決しようとするアプローチであると考える。

 

多くの日本企業が採用してきたオフィスレイアウトは、近年、業務の多様化や高度化、輻輳化、そしてワーカー自身の意識の変化により機能不全を起こしている。これらの課題をオフィスレイアウトで解決する方法についてお話しいただいた。


国際的に権威あるデザイン賞の1つである「German Design Award 2021」(ドイツ)でSpecial mentionを受賞した、イトーキ本社オフィスの「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」


 

まなびのポイント 1:働き方改革の本質的な意味 生産性向上のための改革

 

働き方改革が叫ばれて久しい近年、働き方改革の本質的な議論は置き去りにされているきらいがある。特にコロナ禍を経て、働き方改革は労働時間の短縮化やフレックス化、テレワークやハイブリッドワークといった「場所にとらわれない働き方」など、外形的な部分がフォーカスされてきた。しかし、働き方改革の本来の目的は生産性の向上、つまり、より短い時間で大きな生産性を生み出すことにある。単なる「時短」にとどまらない「労働生産性の向上」が働き方改革の本質である。

 

日本の労働生産性はOECD加盟国38カ国の中で27位と1970年以降、最も低い水準にあるという(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」12月19日公表) 。非正規雇用の増加、生産年齢人口の減少といった社会構造由来の課題があるなかで、労働者一人当たりの生産性の向上は、各企業ひいては日本社会が真剣に取り組むべき課題である。

 

 

 

まなびのポイント 2:オフィスレイアウトで生産性は変わる

 

多くの日本企業が採用しているデスクのレイアウトは島形対向式と呼ばれるものである。部署や課ごとにメンバーの座席が固定されており、上司やその組織の長が、ひな壇となる島の上部に陣取る形になっている。多くは組織図上の上下関係がそのままデスクの配置に反映されている。組織に対するエンゲージメントの醸成や、決まったメンバー同士でコミュニケーションを取るという点においては有益である。しかし、業務の多様化、高度化が進む昨今、自席が割り当てられているが故に部署間の連携が取りづらくなっていたり、ワーカーの意識変化により集中しづらい環境となってしまっている側面があり、必ずしも有効なオフィス環境とは言えなくなっている。生産性の高いオフィスをつくるには、活動主体のレイアウトにするべきであろう。例えば、ウェブ会議用スペースや少人数での打ち合わせスペース、デスクワークに集中できる半個室型のスペースなど、活動にフォーカスしてその活動が効率良く行えるような環境づくりからオフィスのレイアウトを考えていく必要がある。

 


イトーキで取り扱っているWeb会議ブース。フィンランド最大のオフィス家具メーカーフラメリー社の製品だ

 

 

 

まなびのポイント 3:離職を防ぎ、人材が定着するオフィス環境をつくる

 

イトーキの調査によると、オフィス環境に満足していない職場においては人材の離職傾向が高く、反対にオフィス環境に満足している職場は人材の離職傾向が低いという。

 

ワーカーのオフィス環境に対する総合的な満足度を高めるには、ワーカーの活動をサポートする空間機能を提供することが重要である。同社で行ったアンケートによると「すぐに集まり議論できるスペース」「Web会議用スペース」「適度に姿勢を変えながら仕事ができるデスク」「リフレッシュスペース」などが満足度の高い空間機能となっている。


イトーキでは、自己裁量を最大化し、ワーカー自らが働き方を自律的にデザインする総合的なワークスタイル戦略であるABW(Activity Based Working)を支援するサービスを展開している

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