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【研究リポート】

学校・教育ビジネス研究会

ICT教育・GIGAスクール構想やビックデータ活用など、時代の先を行く尖った企業のアイデアから、自社の"価値を再発見"をするためのヒントを探していきましょう。
研究リポート2023.05.11

中学受験市場を盛り上げる“独自ブランディング戦略”:株式会社日能研関西

【第3回の趣旨】
当研究会では、大きな経営テーマの1つである「人材育成」について、企業による社員教育ではなく、学校教育現場の取り組みを中心に紹介する。教育の最先端は学校教育現場にあり、保育・幼稚園から大学に至るまでの教育モデル・コンテンツを研究することで、自社の人材教育に生かすことができる。第3回では、日能研関西と四條畷学園を訪問・視察。縮小するマーケットの中で生徒募集・集客に成功している先進事例からポイントを学んだ。
開催日時:2023年3月2日、3日(大阪開催)

株式会社日能研関西
代表取締役社長 小松原健裕 氏

 

はじめに

 

日能研関西は、日本能率進学研究会(現、日能研)の直属校として1977年に神戸元町で教室を開校し創業。現在は、小学生の中学校受験に特化した進学塾を展開する。中学校受験の特徴から、ブランディングは「全国」と「地域」に分けた2つの観点で取り組む。施策では、自社だけでなく中学受験という業界全体を活性化するための取り組みを展開。さらに、教育的効果、顧客、社員など、複数の観点から社内のデジタル対応を推進している。中学受験専門塾である日能研の、ブランディング戦略や、人材を支えるための学生採用や新入社員の育成での工夫についてご講演いただいた。


電車の広告などで有名な日能研のキャッチコピー「シカクいアタマをマルくする」


 

まなびのポイント 1:ブランディングにはリスクが伴う

 

同社のポリシーは学校では教えないことを提供することだ。進学塾だからといってただ入試問題で点数を取るためだけの指導をしているのではなく、自ら考える力を大切にしている。そのこだわりは、教育方針にとどまらず、ブランディングツールからも見て取れる。例えば、オリジナルのペットボトル1つをとっても、多くのメッセージを掲載するためにコストをかけて制作したという。また、校内に掲示する合格実績の見せ方も、難関中学の実績だけではなく、全学校の実績を貼り出すようにしている。

 

徹底した生徒目線で考え、リスクを許容した上で対外的なPRを企画し、独自のブランドを展開していると言えよう。


日能研関西 マスコットキャラクター「Nかばん君」

まなびのポイント 2:「人」を生かす企業姿勢

 

受付事務は全て正社員として採用している。コストを考えればパート・アルバイトで良いのだろうが、学生が毎日通う塾に常駐する「責任のある仕事」だからだ。

 

新卒採用では、ナビサイトやSEO対策で多くの学生に自社を認知させていく方法では勝てないと判断し「何でも言える企業文化」「ホスピタリティー溢れる企業文化」を自社の強みとして打ち出した。また、インターンシップ生へは丁寧なフィードバックを行っている。それらが「一人一人の個性を生かす企業姿勢」として学生に伝わり、結果、毎年募集枠を超えるエントリー数を実現している。


全教室が確認できる待合室のモニター

まなびのポイント 3:マーケット拡大に向けた協業

 

市場が縮小する中、同社はマーケット拡大に向けた取り組みとして、中学受験を広めるためのWebサイトを開設。またYouTubeチャンネルも開設し、中学受験に関するコンテンツを発信している。特筆すべき事項は、中学受験のメリットをアピールする取り組みを競合企業とともに行っている点である。縮小する市場だからこそ、ライバルと協業し、今後はオウンドメディア化を構想しているとのことだ。

 

ユニークなコンテンツを制作し続けるモチベーションの維持に苦労する企業は少なくない。そんな中、同社は情報更新が追い付かないことに苦労しているという。ネタが尽きない同社の今後の動向に注目が集まる。


生徒のモチベーションを刺激するよう工夫された校内の掲示物

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