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【研究リポート】

ビジネスモデルイノベーション研究会

秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート2023.10.19

創業125年を超える井村屋グループが目指す持続可能な経営とは:井村屋グループ株式会社

【第2回の趣旨】
ビジネスモデルイノベーション研究会では、両利きの経営における知の探索をテーマに、様々な分野で秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察訪問する。
そのビジネスモデルを構築している経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、現地訪問によってビジネスの現場に触れることで、イノベーションを「体感」する機会を提供している。
開催日時:2023年4月19日、20日(三重開催)

 

 

井村屋グループ株式会社
取締役 取締役会議長 Chair of the Board (COB) 浅田 剛夫 氏

 

 

はじめに

 

1896年、三重県松阪市にて菓子舗「井村屋」を開業し、1947年株式会社井村屋設立。創業125年を超える老舗メーカーである。

 

井村屋グループ株式会社を中心とし、ようかん、あずきバー、肉まん・あんまんなど常温・冷凍に対応する流通商品を扱う井村屋株式会社や、企業向けビジネス(BtoB)を行う井村屋フーズ株式会社など10の事業会社から構成されている。

 

海外では中国に4社、アメリカに1社、マレーシアに1社拠点を持ち、グローバル活動にも力を入れている。日本を代表する老舗メーカーの井村屋グループが目指す持続可能な経営についてご紹介いただいた。

 


ホールディング経営により、各事業会社が「特色経営」を実現する体制を構築


 

まなびのポイント 1:人の真似をしない「特色経営」で進化し続ける

 

創業からの企業ポリシー「特色経営」を軸に、人の真似をしない、独自性のある商品開発、経営を実践してきた。あずきバーシリーズは2022年度年間販売本数3億本を誇る主力商品で、2013年には「あずきバー」が商標登録された。

 

特色ある商品であるため、近年の原材料高騰等に伴う価格転嫁についても顧客からは受け入れられている。2023年春には原材料見直しを含めた13年ぶりのリニューアルを実施するなど、常に進化すべく挑戦し続けている。

 

経営においては2010年、持ち株会社制へ移行。事業会社が太陽系の惑星、持ち株会社が太陽のように存在しており、事業会社が4つの自(自主・自律・自立・自発)を発揮できる体制を構築している。また、海外戦略においても「進取」という思想のもと、現地生産・現地販売に取り組んでいる。


年間3億本を売り上げる主力商品の「あずきバー」

 

まなびのポイント 2:SDGsを軸に「経営」から「継栄」へ

 

国内マーケット縮小の中、同社は海外輸出商品を強化している。原材料の供給や販売も含め、海外活動を強化しないとサプライチェーンマネジメントができない時代となっているためだ。

 

同社は環境保全をはじめとした社会性の考え方を重視している。例を挙げると、あずきバーでCO₂を削減すると宣言し、環境マネジメントシステム認証を取得。また、バイオマス燃料や太陽光発電を積極的に活用して環境保全に取り組んでいる。

 

さらに、エコロジカル(環境保全)はエコノミカル(経済活動)そのものであるとし、サステナブル(持続可能性)を「継栄」と称してSDGsを軸とした経営にシフトしている。

 


マレーシアで現地生産、現地販売しているあずきバーシリーズ

 


津工場の太陽光発電

 

まなびのポイント 3:次の100年に向けてレジリエントカンパニーを目指す

 

次の100年に向けて、より加速する環境変化に適応するため、①アンカー(錨)②自己革新力③社会性という3つの要素を大切にしている。これまで培ってきた伝統をアンカーとして守りつつ、革新に挑戦する二刀流の「バランス」が持続性実現のポイントであると強く語る。「バランス」を大切にするために、所属⾧のデスクにはやじろべえ人形が設置されているという。

 

「商品こそわが命、人こそわが宝」。レジリエントカンパニーの根幹は「人づくりである」とする同社では、AIを活用し人的資本と協業することでイノベーションを起こし、次の100年に向けたレジリエントカンパニーを実現していく。

 


所属長のデスクに設置されているやじろべえ人形

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