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【研究リポート】

『成長M&A』実践研究会

「戦略」と「実行のスピード」をポイントに、アフターコロナ時代に求められる戦略の方向性と、それを実現するためのM&A・アライアンスの手法を学びます
研究リポート2023.09.15

SHIFT流 成長する企業のM&A/PMIの実務ポイント:株式会社SHIFT

【第4回の趣旨】
第4回は、独自のM&Aノウハウと業種の特徴を取り入れた事例に学び、自社の企業価値向上する道しるべを提示する「『成長M&A』実践研究会」と、経済的価値と社会的価値を両立させる経営をファイナンス思考で研究する「CFO視点で企業価値を高めるサステナビリティ経営研究会」が共同開催。M&A/PMI(統合プロセス)において再現性のある仕組みをつくり、企業の成長ステージに合わせて具現化できるようになることを目指し、ゲスト2社(溝端公認会計士事務所、SHIFT)からM&A戦略とその推進体制について講演いただき、考察を深めた。

開催日時:2023年8月25日(大阪開催)

 

 

 

はじめに

 

2005年創業のSHIFTは、「新しい価値の概念を追求し、誠実に世の中に価値を提供する」を企業理念とし、ソフトウエアのテスト事業を起点に、サービスづくり全体のサポートを手掛ける会社である。

 

ソフトウエアにおける「テスト」「品質保証」のソリューションをフックに、顧客の「事業拡大」「DX」「売れるサービスづくり」をワンストップでサポートできる体制「ONE-SHIFT」を補完・増強すべく、同社はM&Aを積極的に実施。累計27件のM&A実績(2023年7月末時点)を持ち、SHIFT流のM&A/PMIの下、ソフトウエア分野における事業領域を拡大させている。

 

 

 


 

まなびのポイント 1:M&Aにおけるソーシング力

 

「SHIFT流M&Aソーシング」は、戦略マップから対象企業を選定する一般的なソーシング※1と並行し、アドバイザーからの持ち込み案件を全て検討する独自の手法である。「M&Aを目的にしてはいけない」とよくいわれるが、「そこにロジカルな戦略があるなら目的にしても良い」という考えの下、「出会った案件に対してSHIFTは何ができるのか」という視点でソーシング力を高めている。SHIFT流M&Aのポイントは、次の通りである。

 

①M&Aアドバイザーに向けたM&A成功事例集・トークスクリプトを提供する。

②アドバイザーとのリレーション構築により案件紹介数を増やす。

③多様なメディアへ露出し、M&Aにおけるブランディングを強化する。

 

※1 M&Aの候補企業を選定し、交渉を行うプロセス

 

 

 

 

 

 

まなびのポイント 2:エグゼキューションの「型化」

 

限られたリソースで戦略的なM&Aを実行するには、M&A体制の強化による再現度の高い案件クロージングが求められる。そのための「SHIFT流エグゼキューション※2」は次の通りである。

 

①LOI(基本合意書)提出前の工程をチェックリスト化。トップ面談によりスピーディーに対応する。

②統一されたフォーマットによるLOI検討により、判断基準を統一しスピーディーな対応を可能とする。

③M&Aが成約に至らなかった理由を分析し、改善策を実行。トップ面談により自社のカルチャー共有やシナジーの提案を行い、ソーシングとエグゼキューションの役割分担により体制強化を図る。

 

※2 M&A候補企業を見つけた後の、交渉から最終契約の締結・クロージングまでを含む手続きの実行・管理

 

 

 

 

 

まなびのポイント 3:グループの成長ストーリーを描くPMI

 

M&A戦略によりグループ全体での圧倒的成長を目指すため、同社は次のように仕組み化された「SHIFT流PMI」を実践している。

 

(1)グループ会社運営

①ミッション・ビジョン・バリューを徹底的に議論する。

②M&A後の「100日プラン」を組み、対応事項を型化する。

③各事業会社の成長ステージに合わせた運営体制を構築し、グループ本社の経営管理リソースを最適配分する。

 

(2)自社の採用・営業・戦略支援をグループ会社展開し、グループ全体での成長を推進する。

 

(3)CXO副業人材のデータベースを活用し、適切な経営人材をアサインする。

 

※3 事業活動の効果・効率を高めて競争優位性を磨き上げること

 

 

 

 

 

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