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【研究リポート】

人材育成研究会

EVP(従業員に対する価値提案)を高め、社員のエンゲージメントを向上させ、自律的に成長する・会社に貢献する人材を生み出していくためのヒントを優秀企業から学びます
研究リポート2023.09.15

逆転の発想が生み出した組織活性化の手法と成果への転換:株式会社スノーピークビジネスソリューションズ

【第3回の趣旨】
当研究会では、最先端の教育制度や人材育成の仕組みを持つさまざまな企業の視察を通じて、人材の育成・活躍・定着を成功させるヒントを提供している。
今回は『「アウトドア×仕事」の体験価値で従業員満足度を高め、成果へ繋げるスノーピークビジネスソリューションズの挑戦』をテーマに、実際にアウトドアを体験しながら、スノーピークビジネスソリューションズ事業戦略本部副本部長兼HRS事業部長・榊原佑介氏に講演いただいた。
開催日時:2023年3月17日(愛知開催)

 

 

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ
事業戦略本部副本部長 兼 HRS事業部長 榊原 佑介 氏

 

 

はじめに:ミッションステートメントに紐づく事業

 

「私達スノーピークは、一人一人の主体性が最も重要であると自覚し、同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、自然指向のライフバリューを提案し実現するグローバルリーダーになろう。

私達は、常に進化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。

私達は、自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できる体験価値を提供します。

私達は、地球上の全てのものに良い影響を与えます。」

 

これは、スノーピークのミッションステートメントであり、全社員が暗唱できるほど社内に浸透しているそうだ。社員は迷った際、ミッションステートメントに立ち返り、どうすべきか判断するという。

 

ミッションステートメントの中で榊原氏が強調していたのは「一人一人の主体性」「常に進化し、革新を起こし」「自らもユーザーであるという立場」という言葉。スノーピークビジネスソリューションズの沿革や今後の挑戦についてお話を伺うと、すべての取り組みがミッションステートメントに基づいているものだとわかる。

 


社員の想いが自由に記載された鏡。スノーピークビジネスソリューションズの良好な人間関係が育まれる文化が垣間見える。


 

まなびのポイント 1:組織の成功循環モデル

 

企業へシステム導入の支援をしている同社は、多くの会社が導入キックオフまでに綿密な計画を行い、仕様作成に時間をかけるものの、キックオフ後は想定外の連続や社内の反発など、失敗している事例が多いことが分かった。同社は多くのシステム導入と定着を成功に導いており、多くの失敗事例と成功事例の比較から、「プロジェクトが定着し組織が活性化するときの鉄則」に気付いたのだ。

 

その鉄則とは、「“組織の良好な人間関係が土台として構築されている”ことを前提に、①「なぜそれをやるのか」(WHYの合意形成)を行い、②目的に向かうまでのプロセスが社員全員に共有され、③いい意味で計画を練りすぎない=スモールスタートによる全員参加型で実施すること」。

 

こうすることで、良好な関係の質が土台として構築されていると、前向きなアイデア・積極的な行動が生まれ、良い結果を生みだすことが可能になるのである。

 

そしてこの鉄則は、元MIT教授のダニエルキム氏が提唱する【組織の成功循環モデル】でも立証されている。

 

組織の「関係の質」を高めようとすると、「思考の質」「行動の質」と順に向上し、最後には「結果の質」が上がるグッドサイクルが成り立つというものである。

 

まなびのポイント 2:逆転の発想「IT企業×アウトドアメーカー」に至った経緯

 

「まず自分たちがそうあるべき!今までにない全く新しい発想で考える。今すぐできることを、まずやってみる。」「自分たちがいいと思ったものをお客さんにも提供する、自分たちで行ったものの価値を広げていく」という信念をもとに、 “組織の成功循環モデル”(まなびのポイント1参照)を自社でも実践しようと、キャンプ会議を実施した。すると、チームの活性化や集中力向上といった効果があり、アウトドア研修は関係性を高める上で有効であると確認できた。

 

そこから、「時間と空間を共にして関係性を高める」アウトドア事業を展開し、スノーピークビジネスソリューションズが始まった。この展開についても「一人一人の主体性」「常に進化し、革新を起こし」「自らもユーザーであるという立場」という、スノーピークのミッションステートメントと連動している。


「お昼寝制度」により体のコンディションを整え、パフォーマンスの向上を狙う。

 

 

まなびのポイント 3:「IT企業×アウトドア」が生み出した新サービスと社内浸透のプロセス

 

アウトドア事業を開始した際、「社員には、なぜこの事業を展開するのか理解できるまで対話し、一緒に体験をしてもらうことで、スムーズに受け入れられた」と榊原氏。さらに、その前提となる「良好な人間関係構築」の施策を積み重ねたことで、現在の風土や文化が醸成されたとのことである。

 

特に「WHYの合意形成・プロセスの共有」のための施策として、榊原氏は以下の3つを紹介する。

 

①「VSD(Vision Sharing Day)」:年初に会社・部署の方針を全社員に共有し、目線合わせを行う。

②全体昼礼:日々のアクションや社員自身の思いも含めて発信・共有できる場として毎日開催する。

③SKR(社員研修旅行):社員が「学び・遊び・交流」のテーマで企画し、会社の方針を理解しながら、全社員の交流を図る。

 

最後に、榊原氏は「どんなに小さくてもいいから、まず第一歩を踏み出してみることが重要」と伝えた。

 


焚火(疑似)を囲みながらのコミュニケーションが可能なスペース

 

 

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