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【研究リポート】

人的資本研究会

人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート2023.08.18

ハートビーツのインナーブランディング:株式会社ハートビーツ

【第3回の趣旨】
採用を経営課題と捉え、全社的に推進していく「戦略採用」を実践する企業に、そのエッセンスを学ぶ戦略採用研究会。当研究会では、採用の成功事例を研究し、採用難の時代でも自社の戦略にマッチした人材を獲得するためのイノベーションのヒントを提供している。
第3回は「採用ブランディング」をテーマに2社のゲスト講師を迎え、ゲスト企業による講演と、研究会参加者のディスカッション、ゲスト企業講師とのコミュニケーションを実施。また、採用に関して専門的な知識を有するタナベコンサルティングのコンサルタントによる解説を通じて、「採用マーケティング」と「採用ブランディング」の違い、一貫性のある情報発信を通じた求職者への魅力訴求や、インナーブランディングを通じた組織力強化について研究を行った。

開催日時:2023年6月30日(東京開催)

 

 

株式会社ハートビーツ
人事広報グループ グループマネージャー 磯崎 怜 氏

 

 

はじめに

 

(株)ハートビーツは世の中のITインフラを支えるMSP事業を主軸としながら、開発支援、受託開発サービスを提供している。

 

同社の強みは、本質的な課題を発見できること、その課題を解決する技術力があることである。これらの強みは、個々が目の前の課題に対して真摯に向き合いながら、自分がすべきことを能動的に考え、現場主導で活動することを大切にするという、ハートビーツのカルチャーから生まれている。

 

磯崎氏はハートビーツに入社以来、採用広報の仕組みを整備してきた。その後、組織開発や労務などにも業務領域を拡げ、現在の同社のカルチャーの基盤を構築。試行錯誤してきたインナーブランディングの取り組みについて話を伺った。

 


多種多様な課題に対してソリューションを展開し、日々の「当たり前」をITインフラ整備を通じて支えている(ハートビーツHPより抜粋)


 

まなびのポイント 1:話題の施策より、自社のカルチャーに合った施策に取り組む

 

インナーブランディングとは、自社の従業員に対して、企業理念やブランドの価値、ビジョンなどを浸透させる活動のことを指す。自社の理解度を高め、社員同士の連帯感や組織のパフォーマンスを向上することが目的である。

 

インナーブランディングの取り組みは正しいステップを踏む必要があり、「①知る⇒②理解する⇒③共感する⇒④行動する」の仕組みを整備することが重要である。故に共感を得られない、自社のカルチャーにマッチしない施策をいくら導入しても、行動に移してもらえない。人気の施策や話題の施策、他社の成功事例を見ると真似てみたくなるが、自社でうまくいくとは限らない。

 

あくまで自社の理念や社風にマッチした施策を取り入れていく。これは採用施策においても同様であり、理念やカルチャーにマッチした一貫性のある取り組みを実施することで、求職者の共感を生み、自社にマッチした人材を確保しやすくなり、ミスマッチ防止にもつながる。

 

まなびのポイント 2:トップからの継続発信の徹底

 

ハーツビーツでは、ことあるごとにトップからの理念発信の場を設けている。面接では、求職者に企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を語り、入社時オリエンテーションでも「理念のお話」として改めて企業理念やMVVを中心にトップが語る。また、全社朝会やキックオフの場など、ここぞとばかりにトップが理念やトップメッセージを発信するのである。

 

磯崎氏は「基本的に理念浸透にやりすぎはない。発信し続けることが浸透させていくうえでの第一歩」という。また、ハートビーツではなにかしらの施策を実施後、施策に対しての満足度や目的達成度を測るアンケートを毎回実施し、あがった意見に対して改善をしていく仕組みを整備している。

 

入社前から入社後のオンボーディング、日々の業務の中で浸透させる手法と浸透度合いを測る仕組みが構築されているのである。


講演の様子

 

まなびのポイント 3:各種制度と理念浸透の戦略的な連動

 

ハートビーツでは、各種制度や取り組みと経営理念・ビジョンを一貫性のあるものとして運用している。例えば人事評価制度では、評価項目のうち、「行動評価」に経営理念を紐づけている。理念を実践できたかどうか評価することで一貫性を持たせているのである。

 

また、理念実践の行動も具体的な行動例を示すことで、理解とアクションのサポートを行うとともに、経営陣による言語化を通じて経営陣も再認識する仕組みとなっている。さらには先ほど触れたオンボーディングとの連動や、役職者のジョブディスクリプションへも理念実践に係る内容が、求められる行動として明記されている。

 

こうした一貫性のある取り組みを通じて社員の日々の行動に現れ、理念が社員に定着している会社だという認知につながり、ファンを獲得し、採用活動に活きてくるのである。

 


オンボーディングをはじめとした、入社後の理念浸透の全体像

 

 

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