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【研究リポート】

SDGs・ESG経営研究会

2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート2023.08.18

SDGsを事業に取り込むGOOD NATURE STATIONの挑戦:株式会社ビオスタイル

【第1回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマの下、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。第6回では、社会的価値と経済的価値を両輪で生み出す経営をビオスタイルから学んだ。

開催日時:2023年7月25日(京都開催)

 

 

株式会社ビオスタイル 常務取締役
GOOD NATURE STATION館長 山下 剛史 氏

 

 

はじめに

 

100年の鉄道の歴史を持つ京阪グループの提案するライフスタイル「ビオスタイル」は、「健康的でクオリティの高い生活」「自然環境との共生」などをテーマに2014年誕生。その後SDGsという概念が誕生し、ビオスタイルは“京阪版”SDGsの取り組みとなった。社会的価値と経済的価値を両輪で創造する「BIOSTYLE経営」を掲げ、SDGsを義務ではなく「楽しみながら無理せず取り組めること」として事業化を推進している。

 

京都・四条河原町に位置する複合型商業施設「GOOD NATURE STATION」は、そうした取り組みの象徴である。自然由来の素材を建物、プロダクト、提供する料理などに共通して使用。快適な宿泊、魅力的な雑貨の購入など、利用者が楽しく施設を利用することで自然体でSDGsの取り組みに参加できる。こだわりの詰まった施設は複合型商業施設として関西初のLEED認証、ホテルとしては世界初のWELL認証v1を取得した。

 


 

まなびのポイント 1:「BIOSTYLE経営」で叶える5つのGOOD

 

京阪グループの新事業を担う企業として2017年誕生した株式会社ビオスタイルは、グループとして初の製造販売業に参画した。無理なく取り組める項目として「5つのGOOD=地球、社会、地域、心、体にとって良いこと」を選択基準とし、パートナー企業や仕入れ商品に対しても徹底的にバックグラウンドを求める。

 

例えば、コスメブランド「NEMOHAMO」は根も葉もすべて、植物の力をまるごと利用するというコンセプトのもと生まれた。自社の保有する里山・農園で、オーガニックに育てた植物を工場に運び、排煙・排水を出さない環境で丁寧に作られている。石油由来成分は一切使っておらず、パッケージの箱もサトウキビでできており、土に還る素材を使っている。そうしてできたコスメはGOOD NATURE STATIONやECサイトのほか、全国の百貨店、小売店、ホテルへ卸されている。


徹底したSDGsの取り組みのもと製造されたコスメたち。人の手で丁寧に作られているからユーザーの評価も高い。

 

まなびのポイント 2:利用者が五感で感じるSDGs

 

GOOD NATURE STATIONには様々なレストラン、マーケット、カフェが入っており、見て、触って、食べて楽しめる空間になっている。ホテルのロビーがある4階にはカフェ・レストラン「Hyssop」がある。ここでは日本をはじめとする様々な国で昔から親しまれてきた食文化から着想した、国籍にとらわれない料理が楽しめる。フードロス削減のため、規格外の野菜も積極的に取り入れる。農家が丁寧に育てた、甘すぎて市場に出回らないトウモロコシをかき氷にアレンジしたところ、大変好評だったという。

 

また、施設の壁や天井は天然の素材の特徴をそのまま活かしている。木材はペイントせずそのままの色を見せていて、経年劣化により変化する色も楽しむ。数年後にまた訪れたときに、印象の違いを楽しめる。

 


ホテルのロビーには光を取り入れる吹き抜けの中庭がある。ブラインド代わりの植物はテイカカズラで、種を植えここまで育つのに4年程かかった。

 

まなびのポイント 3:エピキュリアン・ナチュラルの考え方

 

ビオスタイルでは、当初ストイックにSDGsを追及していたが、「ストイック・ナチュラル=我慢して実現する志向」から「エピキュリアン・ナチュラル=楽しく、本能的によいエピキュリアン(快楽)志向」へ転換。5つのGOODのうち、少なくとも1つを満たしているものを基準として取り入れている。

 

例えば、ホテルに通常置いてあるペットボトルの水を、GOOD NATURE HOTELでは給水機とタンブラーに変え、使い捨て容器の削減を目指した。ところが、思うように削減に繋がらなかったため、アルミ缶での水の提供に変更。ペットボトルはペットボトルに再生できないが、アルミ缶はもう一度アルミ缶に生まれ変わる。このように、できる範囲、楽しめる範囲のSDGsの実現に取り組み、発信している。

 


ホテルの客室にあるタンブラーとアルミ缶の飲料水。

 

 

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