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【研究リポート】

デザイン経営モデル研究会

経営に『デザインの力』を活用して、魅力ある自社らしいブランドづくりを実践している素敵なデザイン経営モデル実践企業の取り組みの本質を視察先講演と体験で学びます。
研究リポート2023.07.19

北海道でのものづくりとデザイン:株式会社カンディハウス

【第4回の趣旨】
「デザイン経営」とは、デザインを「企業やビジネスモデルそのものを変革する経営資源」と捉え、顧客の体験価値を高め、自社らしさを醸成する経営手法である。当研究会では、デザインの力を経営に活用する「高収益デザイン経営モデル」実践企業を視察し、経営の現場でデザインがどう活用され、他社との差別化、社員の活躍と成長、地域社会との共創を実現しているかを体験。その本質に迫っていく。
第4回はアイビック食品、カンディハウスの講義と視察で、人と情報、専門価値が集まる仕組みのデザインである共創型プラットフォームモデルについて学び、デザイン経営の本質に迫った。

開催日時:2023年4月25日、26日(札幌・旭川開催)

 

 

株式会社カンディハウス
代表取締役会長 藤田 哲也 氏

 

 

はじめに

日本を代表する家具産地であり、「ユネスコデザイン創造都市」にも認定されている北海道旭川市に本社を置くカンディハウス。1968年創業の同社は、旭川ブランドの中心的存在となっている総合家具メーカーだ。素材・技術・デザインにこだわり、世界市場を視野に入れた戦略で、ロングユースの家具作りを行っている。

 

同社は「北の共創力」をスローガンに掲げ、家具のデザイン性の高さを追求。国内外の気鋭デザイナーが審査員のデザインコンペ「国際家具デザインコンペティション旭川(IFDA)」、ものづくり産業の各社をはじめ、学校や研究施設が参加する総合デザインイベント「あさひかわデザインウィーク」などを通じて、地域全体でデザインを追求している。

 

同社がデザインをどのように経営資源に昇華させていったかについて、同社の代表取締役会長・藤田哲也氏に講話いただいた。

 

 


カンディハウスが提案する暮らしのスタイルの1つ「ノース ノーブル」。
北国の凛とした空気を思い起こさせる、清潔で気品ある空間を演出する

 


 

まなびのポイント 1:世界に評価される「洗練デザイン×日本らしさ」

カンディハウスは、卓越した技術を背景に、実力派デザイナーとタッグを組んで世界に通じるデザインの家具を次々と発表。素材の使い方とミニマムで洗練されたデザイン、緻密なつくりというモダンな「日本らしさ」をテーマに、「ニッポン」のものづくりを世界に発信している。

 

新しいデザインソースを貪欲に求め、デザインコンペ作品の製品化を積極的に行うなど、作り手として挑戦し続けることでファンを増やし続けている同社は、現在、海外12カ国で製品を販売。藤田氏が社長に就任後、海外での売り上げは5倍以上に伸びたという。

 

北海道産材を積極的に活用し、多彩なデザインを展開するものづくりと、合法木材の使用、植樹活動による森づくり、グリーン購入ネットワーク(GPN)への参加など、環境に配慮した企業姿勢が、国内外問わず評価されている。

 

 


北海道の自然と日本の文化に育まれた美意識を、デザインとものづくりに生かす

 

 

まなびのポイント 2:ブランド価値を高める一気通貫のコンセプト

カンディハウスの経営は、「創業者・経営者がデザインの発想を持つデザイナーでなければならない」という思想に基づいており、その実践が、開発から製造、販売、アフターサービスに至るまで、一気通貫でコンセプトを設計する「デザイン経営」になっている。

 

また、ファクトリーツアーやワークショップを通じてものづくりの現場を積極的に発信したり、自社内にショールームやショップを設置してブランドの価値を体験できるようにしたりしているほか、自社ロゴを北海道の広葉樹・ミズナラをモチーフにしたものに一新するなど、ブランドの良さが伝わるコーポレートコミュニケーションを行っている。

 


発売50年のロングセラー製品「ルントオム」。北海道産材2種もラインアップ

 

まなびのポイント 3:自治体や組合を巻き込んだ取り組み

メーカー同士がつながり、旭川家具のブランド力をさらに高めるため、藤田氏は旭川家具工業協同組合の理事長も務め、業界全体の地位向上に努めている。同組合は、1949年に設立し70年以上の歴史を持つ、旭川地域41社の組織である。全国でも類を見ない、協同組合で運営する常設展示場「旭川デザインセンター(ADC)」を運営しており、1000坪の広い空間に約30のメーカーがブースを設け、1200アイテムを販売している。

 

デザインのさらなる追求のため、同組合は2023年4月にADCを産業観光拠点としてリニューアルオープン。デザインに関するミュージアム、ギャラリー、体験工房などを新たに開始し、旭川のデザイン力の高さを発信している。

 

 


2023年4月にリニューアルオープンした旭川デザインセンター

 

 

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