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【研究リポート】

マーケティングイノベーション研究会

顧客の購買行動が激変する時代の中、コミュニケーションモデルを新たに創造し実践するため、最先端のマーケティング事例を学び、自社での展開をサポートします。
研究リポート2023.05.17

焼酎文化の発信とシェア確保の取り組み:霧島酒造株式会社

【第4回の趣旨】
当研究会は、「自社のファンを創造・育成するためのコミュニケーション設計を最先端事例から学ぶ」という趣旨のもと、ゲスト講師をお招きし、LTV向上の成功ポイントについて事例を交えながら紹介している。
第4回では霧島酒造様より、焼酎業界のリーディングカンパニーとして、地元南九州に根付く焼酎文化を全国に広げるべく、商品プロモーションや食文化を中心とした九州文化の発信、同社直営の観光施設の運営など、同社の“地域に根差し、地域と共に発展する”という経営方針に基づいたブランディングについてお話を伺った。
開催日時:2023年4月14日(九州開催)

 

 

霧島酒造株式会社
広告CX課 課長 小野 竜一 氏

 

はじめに

焼酎業界のリーディングカンパニーである霧島酒造。1970~80年代当時、焼酎ブームで競合商品である「白波」「いいちこ」の九州勢が躍進する中、同社は波に乗り切れず低迷していた。

 

そこで同社は1998年に「黒霧島」を発売、反転攻勢に出る。2012年には焼酎売上高1位へと躍進(帝国データバンク調べ)し、以降は焼酎のトップブランドとして、「本格焼酎」の提唱を軸とした焼酎文化の発信と新たな市場創造に取り組んでいる。

 

今回の講義では、同社の広告CX課・課長である小野竜一様より躍進の原動力になった一連のブランディングについてお話いただいた。

 

多くのファンに支持される霧島酒造ブランド
 


 

まなびのポイント 1:焼酎文化の火付け役とトップブランドとしての成功の秘訣

 

(1)徹底した原料・品質へのこだわり

九州産さつまいも100%・霧島裂罅水100%・国産米100%・自社工場生産100%など「100%へのこだわり」。またオートメーション化した工場では、原料であるさつまいもの選別などの重要工程は人が行っている

 

(2)「本格焼酎」ブランドの開発・確立

「本格焼酎」=「原料の味が生かされた、伝統的な製法で造った焼酎」と定義し、新たな市場を創造

 

(3)ユーザーニーズに合わせた商品開発

伝統と品質を守りながらも、新しいユーザーを開拓する商品を開発。何かを足したり引いたりするのではなく、芋・麴を変えることでユーザーが求める味を創造

 

霧島酒造が考える徹底した原料・品質へのこだわり
 
 

まなびのポイント 2:焼酎文化の発信とシェア拡大の取り組み

 

(1)商品だけでなく地元九州の食文化・文化活動を発信し幅広い顧客層へアプローチ

一番大切にしているのは「食文化」。「焼酎文化は食文化の基にありき」という考えのもと、地元九州の食文化の情報発信に注力

 

(2)各種メディア・販促チャネルを活用し、継続的なプロモーションを実施

宮崎県内の“うまいもの”を紹介する記事を1987年~2020年の33年間、計810回にわたり発信。また、TV・ラジオCM、タウン誌、SNSの活用や、焼酎の里「霧島ファクトリーガーデン」の運営、「霧島春まつり」「霧島秋まつり」などのイベントを毎年開催

 

(3)海外25カ国への展開

2019年4月に海外事業部を立ち上げ。現地に合わせた形で「焼酎文化」を伝える

 

焼酎文化・食文化を伝えるプロモーション活動
 
 

まなびのポイント 3:「CX」を創出・提供する工場見学・視察

 

(1)工場見学=CX(消費者体験価値)を生み、霧島酒造ブランドのファンを育てる

「五感(見る・聴く・香る・味わう・触れる)で焼酎造りを体感する」というコンセプトのもと工場見学・視察を実施

 

(2)品質に対する姿勢や、製法・製造過程を見せることでブランドの世界観を伝える

「100%へのこだわり」を工場現場で体現

 

(3)企業が大切にする思い・こだわりを伝える

一連の製造工程、さまざまな装飾ディスプレイや動画を活用することで、霧島酒造が伝えたい情報を発信

 

工場の見学者を迎える霧島連山や南九州の大地をモチーフにした壮大なアート作品「霧島ワンダーランド」

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