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【研究リポート】

ビジネスモデルイノベーション研究会

秀逸なビジネスモデルを持つさまざまな企業の現場を「体感」する機会を提供しております。ノーボーダー時代に持続的成長を実現するためのヒントを学びます。
研究リポート2023.03.24

イノベーションと急成長を支える組織人財の在り方:チャンスメーカー 株式会社

【第6回の趣旨】
ビジネモデルイノベーション研究会では、両利きの経営における「知の探索」をテーマにさまざまな分野における秀逸なビジネスモデルを構築し、成功している優良企業を視察・訪問する。経営者・経営幹部の方から直接講義いただくとともに、イノベーションが息づくビジネスの現場に触れる機会を提供している。
第6回は、福井県において、100年以上の歴史を有する老舗企業でありながら、常にビジネスモデルを進化させることによって、成長発展し続けている2社の企業の講義と視察からイノベーションとチャレンジの秘訣を学んだ。
開催日時:2022年12月21日、22日(福井開催)

 

チャンスメーカー 株式会社

 

イノベーションと急成長を支える組織人財の在り方

チャンスメーカー株式会社
代表取締役CEO  平林 満 氏

 

はじめに

チャンスメーカーは、年商1億円前後の老舗印刷会社から、わずか20年で売上60倍(グループ売上60億円)という急成長を実現してきた創業100年企業だ。ビジネスモデルを何度も変えながら、現在は、クライアントが新たな商機を生めるよう販促サービスを提供している。

 

「お客様に販促サービスを提供し、ビジネスチャンスの創出、売り上げ拡大の手助けをする。」をミッションに掲げ、販促の予算やノウハウがないことに課題を抱える中小・零細企業を中心に小ロット・短納期でのソリューションを提供する。

 

今回は、急成長を実現させた「顧客ニーズに合わせたビジネスモデルイノベーション」や、企業が急成長していく中で直面する「組織・人材のジレンマや課題」についてご講演いただいた。

 


 

まなびのポイント1:創業100年老舗印刷会社が急成長を実現したビジネスモデルイノベーション

 

1910年に創業し、「町の印刷屋さん」として長年事業を営んできた同社。現社長の平林氏が入社した1993年当時、社員は10名、年間売上高は9000万円、取引先は福井県の官公庁が約8割以上を占めていた。

 

平林氏の入社後は、民間企業との取り引きが拡大し福井県以外へエリアを展開。約2年で売上高2億円を突破した。順調に売り上げを伸ばすかのように見えたが、売上高3億円を達成するまでに10年を要したことから、「個」のマンパワーに頼った営業に限界を感じたという。「会社というチーム」として、Webでの顧客リード獲得などを積極的に進め、2005年にはノベルティーサイト「販促花子」を開設。その後はM&Aなどを駆使し、2018年には売上高27億円、2021年度には売上高63億円と、約28年で売上高は70倍となり、町の印刷屋から、福井県を代表するリーディングカンパニーへと成長を遂げた。


チャンスメーカーの販促webサイト「販促花子」。オリジナルノベルティーの取り扱い数5000点以上と国内最大級の規模を誇る

まなびのポイント2:小ロット発注や短納期で、企業価値を向上させた

 

本社には、DM(ダイレクトメール)の制作に絞った工場を構え、案件を全てデータで管理することで徹底的に自動化を進めており、1通という小ロットでも対応できる体制を整えた。

 

さらには、センサーを活用したミスの防止や、受注や生産計画の見える化を進めることで納期にかかる期間を短縮。受注を受けたその日のうちに出荷できる仕組みを構築し、ビジネスの勝負の決め手となる「スピードと品質」を顧客に提供している。今後は、従業員”ゼロ”の工場を目指して、ITやRPAなどの最新テクノロジーも積極的に導入して業務のスマート化を推進していく予定だ。


最新の設備で小ロット受注や短納期を実現する本社。今後はさらに最新技術を駆使し、従業員“ゼロ”の向上を目指す

まなびのポイント3:成長段階に応じた組織と経営システムイノベーション

 

平林氏の入社後、「個」のマンパワーに頼って業務を行っていた時期は2~3年で社員が辞めていたという。それを踏まえ、平林氏は個人にスキルや業務の負担が集中するのではなく「チーム」で活動できるように業務の仕組みを変えた。そうすることで、社員が定着し、売り上げも拡大した。現在は、社員のエンゲージメント向上のため、社員が交流できるカフェスペースを本社に設置したり、社内報で社員紹介をしたりして、社員が生き生きと働けるような環境整備を積極的に進めている。

 

「若い人を育てる」ことを目標に掲げる平林氏は、若い社員にチャンスを与えるために、組織を拡大し多くの役割を与えたいと考えている。そのため、2022年度は課長職の70%を入れ替えたという。役職者を年功順で決定せず、意欲や目的意識の高い社員が活躍できるよう正当に評価し仕事へのモチベーション向上を図る。


社内報をはじめ、社員同士のコミュニケーションを促進するための施策を講じている

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