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【研究リポート】

企業価値を高める戦略CFO研究会

経営者・経営幹部は、事業価値・企業価値を見極め、事業ポートフォリオを最適化する必要があります。会計ファイナンス思考による戦略的意思決定を学びます。
研究リポート2023.03.13

グローバル企業のケーススタディに見るサステナビリティ経営の潮流:株式会社インテグリティ

【第1回の趣旨】
CFOは「企業参謀として経営者の戦略意思決定を支援する人」という意味を持ち、ビジネスリテラシーを持った経営者のビジネス・パートナーとして、企業価値を高める役割を担っている。
そのためCFOは、財務戦略だけではなく、サスティナビリティ経営に向けた非財務戦略の立案・推進が必要となる。日本ではソニーが初めてCFOを設置。今では多くの企業が設置している。
当研究会の第1回テーマは「企業価値向上とCFOの役割」。グローバル企業のサステナビリティ経営の潮流と、帝人グループのESG経営におけるコーポレートガバナンス改革について学んだ。
開催日時:2023年2月24日(東京開催)

 

株式会社インテグリティ
代表取締役 田中 慎一 氏

 

はじめに

田中氏は監査法人、投資銀行を通じて会計監査、IPO支援、デューデリジェンス、M&A・事業再生・資金調達に関するアドバイザリー業務に従事。現在は、アドバイザリーサービスに加えて、スタートアップ企業のCFO、買収後の企業変革、ターンアラウンドマネージャーとして買収先企業の再建にも取り組んでいる。また、著書も多く執筆されている。

 


 

まなびのポイント1:ESGムーブメントにおいて、日本と世界のギャップは縮まりつつある

 

グローバル企業の経営者がサステナビリティ経営に本気で取り組んでいる理由は、「儲かるから」(顧客の求めに応えているだけ)である。実際、通常商品とサステナビリティ商品の価格差として許容できる差は日本が10%であるのに対し、海外、特に、米国西海岸とオーストラリアでは2倍とサステナビリティへの問題意識・関心が高い。

 

その一因として、世界と日本の人口ピラミッドの型の違いがある。世界はミレニアルズ+Z世代の人口比率が高く、その世代がサステナビリティを志向しているのである。

 

金融機関や投資家からもサステナビリティを求められる時代となっている。これは上場企業などの大企業に限らず、ローカル企業についても例外ではない。

 


事業会社のバランスシートとSDGs/ESG/CSVの関係

 


Googleでの「ESG」検索数推移から見る日本と世界のギャップ
※左上:日本、右上:アメリカ、左下:フランス、右下:ドイツ

 

まなびのポイント2:サステナビリティ経営のキーワードは「長期」「マルチステークホルダー」「パーパス」

 

サステナビリティ経営においては、既存事業から見た「馴染みやすさ」と「効果実現のタイミング」の視点で、既存事業とは馴染みがない領域も踏まえ、中長期的な視点で仕込み・仕掛けが必要である。

 

グローバル企業で3カ年中期経営計画を策定している会社は少なく、10年後、20年後の長期ビジョンと単年度計画を立てているケースが多い。それは、今の取り組みは20年後の成果という中長期的視点で経営しているからである。

 

その中長期的視点で進めていく中で重要なのがパーパスである。サステナビリティ経営におけるパーパスとは、首尾一貫した行動が取れるものでなければ意味がない。

 


サスティナビリティ経営においては、長期志向/ファイナンス思考、メガトレンドを踏まえた超長期のミッション、パーパスが重視される

 

まなびのポイント3:海外企業の潮流とサステナビリティの事例

 

ダノン、ネスレ、Siemensは事業のポートフォリオを中長期的に変革させ、企業価値を向上させてきたグローバル企業の例である。日本でESGが盛り上がってきたのはパンデミックになってからであるが、ダノンなどは日本でサステナビリティが喧しくなる前から課題に取り組み、20年かけて事業ポートフォリオを変革している。

 

Corporate Knightsが発表した2020年世界1位の企業であるオーステッド(デンマーク)はーロッパでヨーロッパで最も石炭に依存した会社だったが、進行中の石炭火力発電所プロジェクトをすべて中止し、この比率を2040年までに逆転すると発表。この目標は予定より21年早い2019年に達成し、時価総額7兆円(日本企業の時価総額ランキングでは15位程度)にまで企業価値を高めている。

 


ダノンのミッションに基づく変革(2000年~2019年)
※図表はすべて講演資料より抜粋

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