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【研究リポート】

SDGs・ESG経営研究会

2030年までの成長戦略は、環境・社会・経済のサステナビリティへの挑戦です。SDGs・ESGを通してサステナブルなビジネスモデルの再構築について学びます。
研究リポート2023.03.07

フタガワグループが取り組むSDGsとは:株式会社二川工業製作所

【第3回の趣旨】
2030年に向けた戦略構築においては「サステナブル」というキーワードが非常に重要になる。当研究会は、「社会と企業のサステナビリティを実現し未来を創造する」というテーマのもと、ビジネスとしてSDGsに取り組んでいる先進的な企業を紹介する。
第3回では、株式会社田中よりSDGsへ取り組む際の社内SDGsムーブメントのポイントを、株式会社二川工業製作所よりSDGsへの取り組みを通じた企業価値向上のポイントを学んだ。
開催日時:2023年1月30日、31日(大阪開催)

 
 

 

二川工業製作所 経営企画室 サステナビリティ推進部 総務部取締役統括部長 薮本 大輔 氏(右)
二川工業製作所 海外事業部 部長
安田 藤平 氏(左)

 

 

はじめに

 

1943年創業の産業用機械部品メーカー・二川工業製作所は、中小企業のSDGsロールモデルとして広く知られている。2014年の太陽光発電事業のスタートを皮切りに、2019年にはCSRとして環境問題への取り組みを始め、SDGs活動へと発展させた。

 

こうした取り組みは、環境負荷が小さい製品・サービスの市場形成を推進する「グリーン購入ネットワーク(GPN)」からの表彰のほか、たびたびメディアで取り上げられるなど、同社の認知度向上につながっている。また、社会や地域の課題に応えて新規事業を推進し、2023年2月現在、ホテル事業や人材紹介事業など6事業を展開中である。

 

本研究会では、ステークホルダーを巻き込みながらSDGsの輪を広げる取り組みについて、経営企画室サステナビリティ推進部・総務部取締役統括部長の薮本大輔氏と海外事業部部長の安田藤平氏に講演いただいた。

 


 

まなびのポイント 1:付加価値の再定義で「企業×地域」のビジネスモデルを構築

 

同社の代表的な取り組みは、2015年にスタートした「ため池ソーラー発電」だ。通常は価値を生み出さない“池の水面”にソーラーパネルを設置することで、「発電事業」と「賃料収入」という付加価値を創出している。森林伐採などが不要な上、パネル設置によって有害な水草の発生が抑制される効果があり、企業と地域の間にWin-Winの関係が結ばれている。

 

こうした取り組みを通じ、2020年12月には「自社の全国内拠点での使用電力を、自社所有の太陽光発電によって100%賄う」という目標を達成。2023年現在は、次のステップとして、自社の製造パートナーに対し、生産活動に使用する電力に自然エネルギーの電力を利用するように働きかけを行うことで、SDGsの輪を広げている。

 

 

地域と連携して実施している「ため池ソーラー発電」

 

 

まなびのポイント 2:全社員を巻き込むSDGs浸透策

 

SDGs活動の認知度がいくら高くても、社員が自分の業務と社会貢献の結び付きを深く理解することは難しい。そこで同社は、全社員を巻き込むSDGs活動としていくために、2021年からボトムアップ型の社内プロジェクトを推進している。外国人労働者も多く在籍するため、母国語表記で浸透を図る、SDGs新聞を発行するなど、全社員に身近に感じてもらえる施策を行っている。

 

また、オリジナルカリキュラムによるSDGs研修を行い、各拠点や他事業部による取り組みを学ぶ機会を提供している。2023年には、さらなる社員参画を目指してSDGsアワードの立ち上げを行う予定だ。各拠点の小集団活動の内容を共有し、全社員が評価し合うことで、モチベーションの向上と社内コミュニケーションの拡大を目指す。

 

 

まなびのポイント 3:採用応募が1年で4名→263名に増加

 

二川工業製作所の取り組みは「中小企業が取り組むゼロカーボンチャレンジ」として2021年にGPN「第22回グリーン購入大賞」優秀賞を受賞するなど高い評価を受けている。書籍やテレビ番組でもたびたび取り上げられるため、「宣伝しなくても取材や講演依頼が舞い込み、知名度が上がっていく」という善循環が実現している。

 

SDGsブランディングの中で、同社が最も効果を感じたのは採用活動だという。採用ブログによる発信も奏功し、2021年に4名だった一次面接応募者が、2022年には約66倍の263名に増加。最終採用人数は19名となった。「採用売り手市場」と呼ばれる中で異彩を放つ実績であり、各SDGsの取り組みが同社の企業価値の向上につながったと捉えられる。

 

 

採用ブログで社内の活動を発信

 

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