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【研究リポート】

人的資本研究会

人材を投資により生産性を高められる「資本」として捉え、人的資本と活育サイクル(採用・育成・活躍・定着)の視点で事例研究を進めます。
研究リポート2023.03.01

旭化成の人財戦略~「終身成長」と「共創力」で未来を切り拓く~:旭化成

【第2回の趣旨】
企業と社員が一体となって成果を発揮するためには、これまでの人事戦略では立ち行かなくなってきている。本研究会では、「事業と連動した戦略人事を実践する」という企業側の視点と、「自分の活躍を最大化する」という社員側の視点から、現代に不可欠な戦略人事と組織パフォーマンスを追求していく。第2回は、人事領域全般における支援実績を数多く持つタナベコンサルティングのコンサルタントによる講義のほか、「エンゲージメント」を共通テーマに、「個人の成長や働きがいの向上が組織の価値向上に、組織の成長が個人の成長や働きがいの向上に」という双方向の関係を構築するための取り組みについて、特別ゲスト2社にご講演いただいた。
開催日時:2023年1月26日(東京開催)

 

旭化成の人財戦略~「終身成長」と「共創力」で未来を切り拓く~:旭化成

 

旭化成
人事部 人事制度室 室長 白井 彰 氏

 

 

はじめに

 

2022年に創業100周年を迎えた旭化成グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開しているグローバル総合化学メーカーだ。事業との連動性を重視した人事戦略の実践事例として、経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」でも紹介されている。「人は財産、すべては『人』から」という考え方のもと、「終身成長+共創力」で従業員の働きがいを向上し、グループの競争力を高めるという好循環を生み出している。人財戦略を明確化した上で人事KPIを設定し、そのKPI達成に向けた施策を策定して、全社および各事業部へ展開するという、まさに「戦略人事」のモデルである。同グループの人事部人事制度室長・白井彰氏から、「エンゲージメントの可視化→フィードバック→改善活動」といった取り組みをはじめ、多様な人財の成長と活躍を実現するための施策を紹介いただいた。

 


 

まなびのポイント 1:旭化成グループの人財戦略

 

無形資産の潜在力を価値創造と成長に結び付けるため、同社は2022年度開始の新中期経営計画で「求められる人財像」として、同グループが企業DNAとして紡いできた旭化成の精神「A-Spirit」を掲げた。従業員の自律的成長を後押しし、多様な「個」が活躍できる基盤づくりを推進する人事施策のキーワードとして「終身成長」と「共創力」を設定し、個人の成長と強い組織をつくるためのマネジメント力の強化、主体的なキャリア形成と成長の支援、多様な人財の確保などに加え、その人財をつなげて知の融合を図ることを目指している。

求められる人財・組織と人財戦略

旭化成の人財戦略概要

出所:旭化成提供資料

 

 

まなびのポイント 2:「終身成長」を促す施策

 

社内外の有益なコンテンツを整備した、旭化成独自の学習プラットフォーム「CLAP」は、社員一人一人の志向やニーズに応じた専門性強化とキャリア形成を支援することを目的としている。専門力を高めるべく、社内講師によるコンテンツを拡充させるとともに、外部コンテンツの活用によって学びの幅を広げ、キャリアの可能性を拓いている。また、エンゲージメントサーベイ「KSA」を年1回実施し、個人と組織の状態を可視化。①上司と部下の関係、②活力、③成長につながる行動の3指標を確認し、それを事業部から各職場へと落とし込み、対話をはじめとする各職場での取り組みを通じて、個人と組織の成長と活力の向上を図っている。

 

 

「終身成長」を促す施策

上記①②③の指標とそれらの影響度合いを確認することで、
✔ これまでの取り組み(打ち手)の成果を「見える化」する
✔ 現在の組織の状態について知り、次の打ち手に役立てることにつなげる

 

 

まなびのポイント 3:「共創力」を促す施策

 

新規事業創出・事業拡大に必要な専門性を持つ「プロ人財」を、継続的に育成する仕組みを整備している。領域ごとに人財育成委員会を設置し、任命要件や候補者の選定、次世代候補者の育成について協議。候補者には3年間の活動計画をプレゼンテーションさせ、任命可否を決定している。また、任命者は社内に公表し、専門人財の見える化と共創を促している。また、社員個人の職務経歴やキャリアプランを一元管理するタレントマネジメントシステム「CaMP」を構築。個人の保有スキルや専門性は全社員が閲覧可能であるため、互いをよく知るきっかけになっている。さらに、理事以上には全情報の閲覧権限を付与し、サクセッションプラン(後継者育成)や人事異動の検討にも活用している。

 

 

「共創力」を促す施策

プロ人財:高度専門職の役割
✔ 専門性を積極的に発揮し、新事業創出・事業強化に参画・貢献する
✔ 専門性をさらに深耕・発展させる
✔ 専門性を後進に継承し、グループ横断的にプロ人財を育成する
出所:旭化成提供資料

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