ライフスタイルビジネス研究会第3期は「CX(顧客体験価値を追求し、真のライフスタイルカンパニーへ進化しよう」をコンセプトとして掲げている。タナベコンサルティングの基調講義ではライフスタイルビジネスの潮流を説明した。また、CX(顧客体験価値)を追求する3社のゲストを講師にお招きし、CXに対する理解と重要性についてお話いただいた。
視察会場としてボーネルンドの“室内あそび場”「キドキド」を訪れ、参加者は身をもってCXを体験することができた。
よなよなエールピースラボUnit (CRM設計・CXデザイン) Unit Director
佐藤 潤 氏
はじめに
1997年の創業から8年連続で赤字だったヤッホーブルーイング。創業から3年間は地ビールブームによって好調であったが、2000年よりブームが衰退し、4年連続の減収となった。そこで、販路の拡大を図るために2004年からネット通販をスタート。ネット通販を通じて直接ファンの声を聞くことにより、「ファンの支持なくして製品・会社の成長はない」との考えを見いだした。
「顧客=一緒にクラフトビール市場をつくる仲間」と捉え、顧客と向き合うことで19期連続の増収を達成。更に直近期では前期比3割増の売上高を誇り、過去最高益を更新した。また、近年では、同社の働き方や組織文化が認められ、Great Place to Work(R) Institute Japanが主催する「働きがいのある会社」ランキング(日本版)の中規模部門において、6年連続でベストカンパニーに選出されている。
まなびのポイント 1:お客様=一緒にクラフトビール市場をつくる仲間
ヤッホーブルーイングは「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションを掲げ、「画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出することでビールファンにささやかな幸せをお届けすること」を目標にしている。2004年に通販を始め、ファンと直接つながることが業績の向上へ貢献しており、19期連続の増収を達成。
同社は“お客様の声”を重要視しており、通販会員・SNSフォロワー合計50万人へ「熱狂度」「NPS=おすすめ度」という2つの項目を軸としたアンケートを毎年実施。顧客が同社のビールをどれだけ好んでいるかを確認し、製品・サービス・企業を愛してもらえることを最優先に考え、ファンに求められた製品を開発している。
「日本に新しいビール文化を創出する」
ヤッホーブルーイングの価値提供は「クラフトビール体験」である。同社は、自社が顧客に支持されている価値を「個性的な味わい、つくり手の顔が見える、革新的行動」と定義。「クラフトビールの革命的リーダー企業」として業界にイノベーションを起こし、ビールファンを楽しませ、さらには「クラフトビールを楽しむ」という新しい文化を日本につくることを目標としている。
まなびのポイント 2:熱狂的なファンが生まれる要因とは?
ファンの共感・支援の輪を広げていくために、コミュニティの外にいる非認知層が仲間になってみたいと思えるようなコミュニケーションを行っている。定期的なファンイベントや、2018年には5000名規模の野外イベントを実施。また、コロナ禍においては多くの企業がSNSを活用したセールスプロモーションを行う中、オンライン飲み会を開催するなど、ファンとのつながりを心から大切にしている。
同社はSNSの活用方法を「自社を知っていただく、思い続けていただくプラットフォーム」と位置付けている。マーケティングにおいては「定期購入サービス よなよなの里」を展開。会員特典のファンイベントや会員限定ストアでの製品購入を通じて、同社の良さをファンへ訴求。そうすることでファンへの熱い想いが伝わり、熱狂的なファンを生んでいる。
ヤッホーブルーイングのクラフトビールは、市場における1、2割の消費者から強い支持が得られるよう狭く具体的にターゲットを絞っている。他社がまねを躊躇するくらいの徹底した差別化が強み。
まなびのポイント 3:ヤッホーブルーイングのチームづくり
同社はフラットな組織づくりを目指している。「ガッホー文化(頑張れヤッホー!)」を全社員に浸透させ、スタッフ一人一人の力と自発的な努力を原動力に、一人では成し遂げられないことをチームとして達成する。そして、ファンにささやかな幸せを届けることで「ビールを中心としたエンターテインメント事業」の醍醐味を味わう働き方を推進している。また、「Unit Director立候補制度」を導入しており、毎年1回行われる「Unit Director立候補プレゼン大会」において立候補者が全社員の前で事業計画をプレゼンし、社長・プレイヤーからの信任を得る場が設けられている。プレゼン後には、全スタッフとの質疑応答の場が設けられ、経営課題の抽出と戦略立案が有効かどうかを投票で決定する。
このようなチャレンジによって積極性のあるスタッフが育てられ、会社全体の成長へとつながっている。