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【研究リポート】

アグリサポート研究会

アグリ関連分野において、先進的な取組みをしている企業を視察。持続的成長のためのポイントを研究していきます。
研究リポート2023.01.31

農畜産業における6次産業化とサステナビリティへの取り組み:株式会社カミチクホールディングス

 

 

【第2回の趣旨】
アグリサポート研究会第7期は、「アグリ業界の持続的成長と課題解決へ向けた生きた事例を学ぶ」がコンセプトとなる。当研究会ではアグリ関連分野の成長企業を経営の視点から研究し、成功のポイントを学ぶ。

アグリ関連分野では旧来型のビジネスを展開している企業が多数存在する。一方、先端技術の活用や、新しいビジネスモデルの構築により成長している企業もある。

第2回は、6次産業化の展開で持続的成長やアグリ業界の課題解決に取り組んでいるグループ企業(カミチクホールディングス)、地域コミュニティとの連携など地元の強みを生かしている企業(ファームランド櫻島)の2社をお招きし、独自のビジネスモデル、成長のポイントについてご講演いただいた。

開催日時:2022年12月8日、9日(鹿児島開催)

 

 

株式会社カミチクホールディングス
代表取締役
上村 昌志 氏

 

 

はじめに

 

カミチクグループは1985年に創業し、現在はグループ経営にて農畜産業における6次産業化を展開。「安全・安心な良質のお肉を納得のいく価格でお届けする」という6次化スタイルを推進している。近年ではサステナビリティへの取り組みとして持続可能な農畜産業の推進の他、環境保全への取り組みにも力を注いでいる。

 

また、ベトナム、香港、台湾にも進出し、日本の農畜産業界のリーダーとして世界的な展開を図っている。

 


 

 

カミチクグループの畜産6次化スタイルの体系図。独自のバリューチェーンを築いている

 

 

まなびのポイント 1:6次産業化のビジネスモデルを明確に描きバリューチェーンを築くことで成長拡大

 

「日本の農業をかっこよく!  Be Smile~本物の笑顔のために~」というコーポレートメッセージを発信し、“エサづくりから牛・豚の飼育、食肉の製造・加工・販売、外食まで”の、独自の「6次化スタイル」を明確に打ち出して取り組んでいるカミチクグループ。

 

「農畜産業は儲からない」「自分で値段を付けられない」という経験から、上記の目標を胸に畜産の6次産業化のビジネスモデルを展開。1次産業(4社)・2次産業(3社)・3次産業(4社)と、各グループ企業の役割が分かれている。

 

特徴的なのは、上記11社以外に、1次産業をサポートする会社、物流をサポートする会社、海外3カ国にそれぞれ現地法人を設けて取り組んでいることだ。グループでバリューチェーンを組むことで、技術を向上させ、高い商品とサービスを提供。こうして収益性を高めることで、各産業に携わる人たちの働き方改革や収入アップを実現している。

 

6次産業化のビジネスモデルを明確に描き、バリューチェーンを築いて取り組んでいることが、同社の事業成功のポイントの1つと言える。

 

 

現地視察風景。TMRセンターを自社で持つため、自給飼料生産が可能(中央)。また、牛の行動をモニタリングするUmotion(ユーモーション)導入(右)により、持続的な生産体制を築いている

 

 

まなびのポイント 2:地域に根差した資源循環型農業でサステナビリティを実践!

 

TMRセンターを中心に、地元の農家の方々に飼料用作物を栽培してもらい、地域産業を活性化。南九州地域で出た焼酎粕などの食品副産物も有効活用している。その結果、畜産農家は、国産飼料で育てた安心・安全な畜産物を生産することができ、低コスト・高品質を実現。また、耕作放棄地の水田を利活用し、新規需要米の生産にも取り組んでいる。その水田では、家畜糞尿を良質な堆肥とし地力を維持している。

 

カミチクグループの1社である(株)九州ファームソリューションは、九州の農畜産業の発展、生産者の安定経営に貢献すべく、金融・会計・機材・人材・販路・技術等のサポートを行っていることも特徴的な取り組みである。

 

さらに同グループでは、講演会や食育活動を通して、農畜産業の魅力や6次化スタイルを伝えるとともに、「未来の農業人材育成プロジェクト」を立ち上げ、農業高校の学生に実践的な学びの場を提供している。

 

自グループのバリューチェーンのみならず、地域に根差した資源循環型でサステナブルな農畜産業に挑んでいる。

 

 

地域に根ざした資源循環型農業のサステナビリティモデル(左)
九州の農業畜産に関わる生産者や企業を支援する(株)九州ファームソリューションのイメージ図(右)
講演や食育活動を通して、農業・畜産の魅力や6次化スタイルを伝えている(下)

 

 

まなびのポイント 3:地方再生や海外展開で日本の農畜産業を切り開く

 

同グループでは、経営難に陥ったアグリ関連事業者を支援すべく、直販・直売事業とし、地方再生に取り組んでいる(写真参照)。

 

また、「和牛のお肉を世界へ」「6次化スタイルを世界へ」「人財交流」をコンセプトに外食事業を柱とし、香港・台湾・ベトナムで店舗展開。海外戦略に挑戦している。

 

カミチクグループでは、エサづくりから牛・豚の飼育、食肉の製造・加工・販売、外食までを一貫して行う「6次化スタイル」を海外でも展開し、世界市場へとフィールドを広げている。

 

さらに九州プロモーションセンターを設立・運営し、カミチクベトナムがレンタルオフィス・シェアオフィス・コワーキングスペースを提供してベトナムと九州を繋ぐビジネスプラットフォームを実現。九州の情報発信やベトナムのビジネス情報収集の拠点として活用している。日本の農畜産業が世界への扉を開くリーディングカンパニーとして、今後の展開が楽しみである。

 

 

カミチクグループの海外戦略 簡略図(左)
地方再生モデル:伊佐牧場直売所本店 鹿児島県伊佐市(右上)
海外生のみなさんと上村社長。海外の人材育成にも力を入れている(右中)
ベトナムの外食事業店舗:WAGYU DINING USHINO KURA(右下)

 

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