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【研究リポート】

学校・教育ビジネス研究会

ICT教育・GIGAスクール構想やビックデータ活用など、時代の先を行く尖った企業のアイデアから、自社の"価値を再発見"をするためのヒントを探していきましょう。
研究リポート2022.12.23

『体験は教えられない!! ~子どもが育つところ、ふじようちえん~』:学校法人みんなのひろば(ふじようちえん)

【第1回の趣旨】
当研究会では、永遠の経営テーマの1つである「人材育成」について、企業の社員教育ではなく、企業に入社するまでの教育過程である学校・教育現場を研究する。
教育の最先端は、学校・教育現場にある。保育園・幼稚園から大学に至るまでの教育モデルや教育コンテンツを研究し、自社の教育に生かすためのポイントを学ぶことが狙いである。
第1回では、外部の教育機関のはじまりである保育園・幼稚園、義務教育のはじまりである小学校で、どのような教育が展開されているのかを学んだ。
開催日時:2022年9月29日(東京開催)

 
 

 

学校法人みんなのひろば 理事長・ふじようちえん 園長
加藤 積一 氏

 
 

はじめに

学校法人みんなのひろばが運営している「ふじようちえん」。その他、保育室スマイルエッグス、Fuji赤とんぼ保育園、なすび保育園、Fujiれもん保育園、スマイルキッズクラブも運営しており、総勢約1,100名が通っています。(2022年9月1日時点)

 

開園から、モンテッソーリ教育を基本に保育を行っており、子どもが本来持っている“自ら育つ力”を引き出し、洗練させる科学的なプログラムを実施しています。

 

また、環境・設備として、さまざまな工夫が施されており、多くの受賞履歴を有しています。特徴としては、緑に恵まれた広い園庭を中心に全ての保育室が園庭に面した楕円形・平屋建ての園舎で、園庭には楽しく遊べる遊具がたくさんあります。

 

今回は、学校法人の理事長兼ふじようちえんの園長でもある加藤積一氏に、ふじようちえんの教育モデルについて伺っていきます。

 


 

まなびのポイント 1:子どもが体験で育つところ「ふじようちえん」

 

世の中には、「How to 本」がたくさん出版されているが、なぜ、この「How to」が必要なのかという体験から考えるということが不足しているという加藤園長の危機感から、「見て、触れて、感じて、考えて、行動する」の体験サイクルを考え、このサイクルを機能していくように運営している。
 
また、教育の考え方として、教職員も、園舎も、周りの自然も、全て子どもたちが育つ道具の一つであるということをモットーに、子どもが育つ環境づくりに注力しており、子どもの育ちに役立つものには、さまざまな工夫を施している。

 

ふじようちえんのドーナツ型の園舎
 
 

まなびのポイント 2:教職員の仕事は、幸せな未来をつくる人を育てること

 

ふじようちえんの教育理念は、「幸せな未来をつくること」。そして、教職員の仕事は、その幸せな未来を「つくる人を育てること」。その行動基準として、言葉、行動、立ち居振る舞いが、子どもの育ちに貢献しているかという点を追求している。
 
また、その教職員自身が幸せでなければならないという事で、さまざまな取り組みを行っている。「求人→採用→人員配置→最適化→成長」が、適切に連鎖していくように、工夫が施されており、取り組みの1つとして「せんせいエゴグラム診断」という教職員同士の相性診断を行っており、最適化・成長を促すことができている。
 
理念から行動、子どもの育ちにつながるための施策を充実させている。

 

「内廊下」。教室が窓ガラスになっており、園舎のどこからでも見渡せる設計になっている
 
 

まなびのポイント 3:教育を、デザイン・空間に生かす

 

アートディレクターの佐藤可士和氏がデザイン、建築家の手塚貴晴・由比夫妻が設計したドーナツ型の園舎は、さまざまな視点で学びがデザインされている。
 
「子ども時代には、子どもをしっかりやること」というコンセプトのもと、園庭の地面をわざとガタガタにさせて子どもの体幹をつくる工夫をしたり、蛇口の受け皿を作らず水の出し方によっては濡れるようにして、水の出し方を考えさせたり、意図的に不便をつくり、ものの道理を教育している。
 
何事も便利な現代社会において、子ども達に少し不便をさせることによって、気づく力・食うすべき力を目覚めさせ、考える力を養っている。

 

「園庭にある水道蛇口」。この蛇口設計にも、さまざまな教育思想が盛り込まれている

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