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【研究リポート】

マネジメントDX研究会

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研究リポート2023.04.05

RPAから始める業務プロセス改善:日本生命保険

【第6回の趣旨】
当研究会は、デジタル戦略のケーススタディー・ワークショップを通じてデジタル戦略のロードマップを描くことを目的としている。今回は、自社のビジネスモデルのイノベーション実現に向けた取り組みを2社・1校より学んだ。
開催日時:2022年12月08日(東京開催)

 

 

日本生命保険相互会社
IT推進部 小池 正芳 氏

 

はじめに

 

RPAとは、人がPCで行う作業をロボットが代行し、業務を自動化する技術である。単純作業をロボットに任せることで、人は創造的な業務に注力することが可能となる。

 

日本生命では、全社一丸で各部署へのRPA導入を推進してきた。今回は、RPAの導入を全社展開し、大きな改善効果を生んだ日本生命保険のIT推進部・小池正芳氏より、これまでの取り組みの背景や工程、導入ノウハウについてお話を伺った。

 


 

まなびのポイント 1:日本生命保険におけるRPAの位置付け

 

日本生命保険では、デジタル活用をテーマに基盤強化を図っている。その中で、RPAの重要性が位置付けられており全社で推進している。推進に当たり、RPAの定義を「RPAソフトウェアを用いてロボを開発し、定型作業を自動実行する仕組み」と定め、登録・照会受付・回答業務、集計・レポート業務など、従来人間が行っていた業務をRPAに代行した。

 

2018年度からRPAの全社導入を開始。対象部署・業務を拡大し、2022年度末時点では約27万時間の効率化を実現させたという。RPAの推進をビジョン・中期経営計画の重要テーマに据えて、推進したことが大きな成功要因である。

 

日本生命保険の新中期経営計画「Going Beyond-超えて、その先へ-」(2021-2023)
 
 

まなびのポイント 2:全社展開の進め方

 

RPAを全社で展開するに当たり、次の3ステップで進めた。

 

(1)トライアル:特定の部門でトライアルを行い、捜査システムとの相性や処理速度、ユーザビリティーなどを確認

 

(2)先行導入:事前に決めた3部門でRPAの取り組みを継続し、多くの成功・失敗を経験。役員会などへRPAの取り組み方針を付議・決定し、RPA導入・運用ルールや導入ガイド、ドキュメント類を整備しながら徐々に展開を進めた

 

(3)全社展開:3部門でのロボット開発拡大を行い対象業務を拡大。未導入部門ではRPAの導入を順次開始。

 

また、プロジェクト推進体制として、2018年にPRA推進事務局を設置し、リスク・コンプラ部門を含めた体制を整備した。

 
 

まなびのポイント 3:RPA導入の勘所

 

RPAを全社展開していく上で、組織レベルの環境・ルール整備だけではなく、現場レベルでRPA利用部署に対する適切なアプローチを行うことが重要である。ポイントは、次の3つだ。

 

⑴業務改善:業務プロセスの改善・最適化を行いながらRPAを導入。また、RPA適用パターン、事例をノウハウ化することで効果的に横展開を実行

 

⑵動機付け:取り組み意欲の高い担当者を各部署から発掘。スモールスタートを意識し、成功体験を積んで横展開していく

 

⑶実行支援:RPA推進事務局が業務プロセス改善・最適化を支援。研修や教育コンテンツの充実も重要なポイントである

 

新しいシステムを企業で導入する場合、押し付けて導入してもうまくいかない。成功体験・成功事例を材料に、各部署・部門ごとに横展開していくアプローチが肝要である。

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