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【研究リポート】

マネジメントDX研究会

企業は世の中の価値観の変化に対応し、持続的に成長する必要があります。自立型組織を構築し、実行力ある企業になるための進化型見える化を学びます。
研究リポート2023.04.05

これからの「デザイン経営」:多摩美術大学

【第6回の趣旨】
当研究会は、デジタル戦略のケーススタディー・ワークショップを通じてデジタル戦略のロードマップを描くことを目的としている。今回は、自社のビジネスモデルのイノベーション実現に向けた取り組みを2社・1校より学んだ。
開催日時:2022年12月08日(東京開催)

 

 

多摩美術大学
統合デザイン学科 教授 永井 一史 氏

 

はじめに

 

デザインとは、「物事をより良くすること」である。コーポレートロゴや、会社案内など、経営戦略においてもさまざまな形でデザインが活用されている。その中には、経営ビジョンやDXも含まれる。

 

コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など、外部環境の変化が激しい時代において、社会の変化に柔軟に対応しながら、顧客にとっての新たな価値を創造し続けることが不可欠だ。そこで重要になるのが、自社の役割を再定義し、新たな顧客価値を創造する「デザイン経営」である。

 

今回は、近年注目されるデザイン経営について、数多くの講演実績がある多摩美術大学の教授・永井一史氏より、常に人から考え、「考え」と「カタチ」を往復しながら最適解を探っていくデザイン経営の思想や方法論について伺った。

 


 

まなびのポイント 1:東京ミッドタウン・デザインハブの視察

 

第6回DX研究会では、東京ミッドタウン・デザインハブを視察。東京ミッドタウン・デザインハブは、2007年4月に開設したデザインネットワーク拠点であり、プロモーション・職能・研究教育という3つの異なる役割を担う機関が連携し、デザインによって人・ビジネス・知識を結び付けることを目的に、展覧会やセミナーの開催、出版などで情報を発信している。

 

同大学は、2021年より東京ミッドタウン・デザインハブに参画。オープンイノベーションによる価値創出、教育プログラムの提供、デザインとアートの情報発信を行っている。視察日には、同学プロダクトデザイン専攻による産学共同研究の成果作品展が行われていた。

 

多摩美術大学によるSDGs時代の廃棄物循環型経済モデル「すてるデザイン」。永井氏がディレクターを務め、多くの企業がプロジェクトに参加している
 
 

まなびのポイント 2:デザイン経営の活用段階

 

ビジネスにおけるデザインの活用は4段階に分けられる。

 

1段階目は、デザインが活用されていない状態。2段階目は、見た目に活用される状態。コーポレートロゴの制作、ウェブサイトのデザインなどである。3段階目は、プロセスとしてのデザインとなりイノベーション組織を指す。4段階目は、経営戦略としてのデザインであり、ビジョン・DXが挙げられる。

 

デザイン経営に取り組むに当たってのポイントは、①VUCAの時代の把握、②科学的経営、業務効率化の限界、③SDGs・ESGへの対応、④DX、⑤成長戦略の見直し、この5つである。これらをデザイン経営を通じて解決していくことが重要だ。

 

永井氏が手掛けたTama Design Universityは、誰でも学べるヴァーチャル大学である。第一線で活躍する研究者・実務家を招き、デザインの新領域を知り、共に考える機会として、50のオンライン講座を実施し無料公開した。
 
 

まなびのポイント 3:パーパス経営とデザイン経営の関係性

 

近年注目されるパーパス(存在意義)の策定はデザイン経営の1つである。パーパス経営とは、事業をリフレーミング(事業活動や企業そのものに新しい意味を与える)することだ。そのためのステップは、①広げる、②取捨選択、③具現化、この3つである。

 

パーパス策定後は、パーパスを個人の行動に結び付けることが重要だ。そこで必要になるのが、パーパスを見定めて、組織文化を構築し、新たな価値を生み出す経営手法であるデザイン経営だ。

 

不確実性が高い時代において、デザイン経営とは、企業を革新し、人の生活、未来の社会をより良くしていく経営手法である。

 

近年注目されているパーパス(存在意義)の策定もデザイン経営の1つ

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