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【研究リポート】

EX / 社員体験価値

EX(エンプロイーエクスペリエンス:社員体験価値)とは、CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)と同様に、感情的な価値を含めた社員の評価を高め、ロイヤルティー(自社への愛着心)を向上させる考え方である。FCCフォーラム「EX」のセッションでは、社員のエンゲージメントを高める制度設計や企業風土についてタナベコンサルティングが基本講義を行い、先進企業の事例を紹介。ゲスト3社の対談からは、学習体験を向上させるブレンディッド・ラーニングや、共感を高めるパーパス経営について学んだ。
研究リポート2022.10.03

社員体験価値が会社を変える:浜西健太

 

社員体験価値が会社を変える

 

 

タナベコンサルティング
HR大阪本部 本部長代理
浜西 健太(はまにし けんた)
「誰もが幸せに働ける会社を生涯かけて追求する」をポリシーに、組織・人事に関するプロフェッショナルとして多くのコンサルティングを展開。特に、経営者へのコーチングが高い評価を得ている。クライアントのステージに合わせた人事制度設計および組織開発を通して、エンゲージメント向上と売上倍増へと導いた経験を多く持つ。

 

EX(社員体験価値)とは、キャリアフローにおける「社員一人一人が良い体験や経験を得る中で育まれる価値の総和」と定義されます。EXが注目される背景として、組織と組織で働く関係性の変化が挙げられます。例えば、終身雇用の崩壊や多様なキャリアパスの増加といったキャリアに対する常識の変化。副業・同一賃金同一労働・ジョブ型雇用の加速に代表される雇用に対する常識の変化。さらに、DXによる働く場所や時間の自由化など、働き方の常識の変化が顕著になっています。

 

EXのポイントは、「入社前」「在職中」「退職後」の3つの時間軸で捉えること(【図表】)。入社前のキーワードは「採用マインドセット」です。入社後を最大限イメージできる体験価値の提供が求められています。例えば、サイボウズはYouTubeで社員の生の声を配信したり、入社前に社員との座談会を開いたりするなど、同社の思いや何に価値を置いているかを伝えています。

 

 

【図表】社員のキャリアフロー

出所:タナベコンサルティング作成

 

 

次に、在職中のキーワードは「エンゲージメント」。制度と風土の2軸から育まれる体験価値が重要です。制度で言えば、在宅勤務はワーク・ライフ・バランスを目的に導入する段階に入っていますし、職能・ジョブ型雇用をうまく組み合わせながらEXを高める人事制度の構築が主流になっています。風土については、社員の心理的安全性を高めることが肝要です。メンバー同士が腹を割って目標や自社のビジョンについて語り合い、進んでいける関係性や土壌を育みましょう。

 

最後は「卒業(退職)後のアルムナイ(自社の退職者)」。自社をよく知る退職者は、将来の顧客や取引先、株主になり得ますし、一度退職して視野を広げた人は再雇用すると活躍が期待されます。重要な人的資産として、卒業者と良好な関係を継続する時代に入っています。

 

パーパス(価値観)・カルチャーを軸に、組織として存在・機能・発達する意味を独自に醸成し、向き合い続けることが重要です。パーパスに共感する社員のための制度や風土を選択し、会社として意思決定していく。さらに、その結果を社内外に発信し、会社の思いやパーパスを広く伝えていく。この循環を通してEXを実現していただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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