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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2017.10.31

今どき新入社員との向き合い方:水本 伸明

 

今どき新入社員のバックボーン

私が経営コンサルタントになって驚いたことの1つは、「今どきの新入社員は……」「最近の若手社員は打っても響かない」「仕事に対する考え方が違うから、どのように指導すればよいのか分からない」といった、クライアント先の管理職が抱える部下育成の悩みの多さである。

統計を取ったわけではないが、ほぼ100%の上司が部下育成に悩んでいるのではないか。特に40代以上の上司の多くが、新入社員・若手社員との価値観の違いや、彼ら・彼女らへの指導方法に苦しんでいるようである。

では、昔と今で、新入社員の特性は大きく変化しているのだろうか。タナベ経営では毎年、新入社員を対象にアンケート調査を行っている。2017年に実施した調査では、「働くに当たり気になることは何か」という問いに対し、「仕事で活躍できるか」「上司・先輩・同僚と人間関係を構築できるか」との回答が多かった。一方、2006年の集計結果を見ると、当時の新入社員が心配していることとして 「仕事についていけるか」「職場の人間関係」が多かった。つまり、時代が変わっても新入社員の特性はさほど変わっていない。

2017年度に大学を卒業して入社する社員は、上司とは生まれたときの社会環境も違えば、上司が今まで経験してきたことや感性も違う。そもそも、人間一人一人、それぞれに性格や能力で違いがある。従って新入社員と向き合うと、違いがあるのは当たり前である。まずは、そうした違いについて上司が認識することが、部下育成の入り口になる。

 

 

新入社員育成のための4つのステップ
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これから新入社員を育てようとする上司は、そもそも一人一人の人間は違うものだということを受け入れること。そして、次の4つのステップを念頭に置いていただきたい。

〈ステップ1〉
今どきの新入社員の価値観を飲み込む

あなたの下に配属された新入社員は、どのような経験を経て、今、目の前に立っているのだろうか。「人は自分が経験したものしか理解できない」。これは上司のあなたにもいえるが、新入社員にもいえる。

経験のバックボーンが異なっていれば、いくらあなたが口を酸っぱくして注意しても、新入社員は表面上「はい」と答えるものの、正直、ピンと来ていないのが実情であろう。

従って指導する前に、彼・彼女が経験してきたバックボーンや考え方をいったん「飲み込む」ことが必要になる。理解しようと思ってもできない場合、無理に理解しようとしなくてもよい。嫌いなもの、分からないものでも、いったん飲み込んでみてほしい。清濁併せ呑む度量も、ときには求められる。

あなたは指導する前に、新入社員自身を分かろうとしているだろうか。一方的に「分かっているつもり」になっていないだろうか。1日5分でも話す時間を取っているだろうか。部下は、上司が自分のことを分かってくれていると感じたときに、その人に付いていくものである。

〈ステップ2〉
伝わる言葉を使う

「人を見て法を説け」という言葉がある。お釈迦さまが仏法を説くときに、相手の性格や気質を考慮して、適切な言い方をした故事が語源だが、上司であるあなたにも同じことがいえる。

「バブル世代」と呼ばれる人たちが使う言葉と、いわゆる「さとり世代」と呼ばれる、今どきの新入社員が使う言葉は違う。それは価値観が違うためで、当たり前のことである。時代に合わせた言葉を選び、使う技術が上司には求められる。

言葉を選ばない一方的な指示は、見方を変えれば上司の自己満足であり、仕事とはいえないだろう。部下を指示通りに動かし、成果を出させて初めて指示が仕事になるのではないだろうか。

伝わらない情報は無価値である。特に新入社員とコミュニケーションを取る場合、主導権はあなたにある。伝えた言葉が、きちんと行動につながっているか。やりっ放しに終わらせないよう、チェックとアドバイスを行うことがポイントになる。

〈ステップ3〉
小さな成功を積ませる

時代は変わっても、部下を成長させる原理原則は、「部下の長所を見極め、少し困難な目標を与え、仕事をやらせ切る」ことに尽きる。部下の長所を見極める、少し困難な仕事を与える。いずれも、部下をよく見ていない上司にはできないことである。

新入社員が育たない理由を、本人自身にあると考えた時点で、上司(あなた)の負けである。部下は上司を選べないのだから、部下に責任を振り向けても対策は何も出てこない。常に「自分に問題があるのではないか」という原因自分論の考え方に基づいて、新入社員に与えている仕事を見つめ直し、成功体験を積ませることができるよう、仕事をコントロールしていくことが必要になる。

〈ステップ4〉
部下が自発的に学ぶ環境をつくる

「上司は業績を上げて50点、部下を育てて100点」。企業が10年後も成長しているかどうかは、今の新入社員や若手社員が順調に育つことが鍵となる。そのためには上司のサポートだけではなく、部下自身が学び続ける癖をつけさせることも必要になる。今どき上司の役割は、部下の「学び方改革」に取り組むこともミッションの1つといえる。

タナベ経営の創業者である田辺昇一は、「心に情熱の炎を燃やせ」と自著の中で述べている。成長のスイッチを押せるのは、新入社員自身しかいない。しかし、スイッチを押しやすくする環境をつくるのは、上司の役割である。新入社員の胸の中に、成長に向けた情熱の炎はともっているだろうか。

 

 

 

 

PROFILE
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水本 伸明
Nobuaki Mizumoto
地域に根差したコンサルティング活動を通じ、「ファーストコールカンパニー」育成をミッションとして活躍中。人材に関わるコンサルティング全般を得意としている。