「職域市場」の攻略:ヘルスケア コンサルティングチーム
参入のポイント
このクローズドマーケットに参入していく上でポイントとなるものは何か。その「成功のための条件」として次の4点が重要となる。
1.自社の経営資源を生かす
「事業の立ち上げスピード」「他社との差別化」「参入難易度」の点から、新たな市場ではあるが、既存事業との親和性を含め自社の経営資源を活用することが重要である。なお、経営資源は必ずしも「自社の強み」でなくとも構わない。遊休資産、余剰人員も経営資源となり得る。
2.対象企業・従業員の抱える課題を明確化
職域市場における企業の抱える課題(=マーケット)の着眼点には、大きく次の3点がある。
(1)健康増進・採用・定着などに関する企業の抱える課題(健康支援マーケット)
(2)働き方改革・出勤形態・労働時間といった従業員の労働に関する課題(働き方支援マーケット)
(3)子育て・受験・介護といった従業員の生活に関する課題(生活支援マーケット)
この3点をさらに細分化し、ターゲットを明確化する必要がある。先述の事例のように「ウエルネス・子育て・時短」といった切り口でどんな時にどのような課題が発生するかに絞り、参入を検討することが重要である。
3.脱自前主義
フォーカスすべきは、企業または従業員の抱える課題に対する「最適なソリューションの提供」である。自社ができる範囲に限定したソリューションだけでは十分な満足度・成果を得られないことが多い。自前主義で全て解決できるに越したことはないが、専門性の高い企業と協力し、「最適なソリューションの提供」を実現すべきである。
4.事業のパッケージ化
モノ(単品商品)の提供ではなくソリューションというコト(事業としての商品・サービス)を提供する。そのためには、「事業(=コト)のパッケージ化」が必要である。
また参入企業のメリットも次の通りである。
・事業の水平展開の容易性、かつ拡大のスピード化を促進する
・複数の商品・サービス、複雑なサービスなどをパッケージ化することで提供しやすくなる
・B to B to C、B to B を想定した場合は特に、提供の効率化・容易性につながる
この1~4の流れを図にすると、【図表2】の通りとなる。「職域市場」は成長マーケットであり、潜在需要・解決すべき課題も多くマーケット自体に魅力がある。さらに参入企業にとってもクローズドで効率性の高いマーケットである。そこで成功するためには、先述した「成功のための4つの条件」を押さえることが重要だ。「職域×○○」の切り方によってホワイトスペースとなり得る。新しいサービスが新しい市場を創り出す。職域ビジネスを新たな成長エンジンとして、持続的成長×高い生産性を実現していただきたい。
※ 1「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標
※ 2 ワークサイズとはワーク(仕事)とエクササイズ(運動)を組み合わせたイトーキの造語
※ 3 内閣府が2016年より開始した、政府が企業に対して推奨している保育所形態。企業が主体となって保育所を設置し、利用者は企業の自社従業員のみならず、複数企業乗合や地域住民への開放も可能で、一定の基準を満たせば認可保育所並みの助成金を受けられる
※ 4「置き菓子®」「オフィスグリコ®」は江崎グリコの登録商標