コンサルティング メソッド
2017.08.31
実行力強化につながる組織の生産性の見える化:武政 大貴
自律型組織を目指して
実行力強化に向けた見える化の8つのポイント
「自律型組織」を究極の目的とし、企業固有の目的を設定して活動を推進していくことになる。タナベ経営では、見える化を大きく次の8つのポイントに分類し、考え方を整理している。(【図表】参照)
1.理念の見える化
理念は経営目的であり、経営のバックボーン(背骨)に当たる最上位概念である。単に掲示し唱和することが目的ではなく、現場で実践してこそ意味がある。よって、理念と現場をつなぐミッションマネジメント体系を見える化し、業務マニュアルなどを作成して日常業務へ落とし込むことが重要である。
2.ビジョン・方針・計画の見える化
単に理念を掲示するだけでなく、ビジョン・方針・目標・計画の全てを連鎖させ、見えるようにする。また、日々の行動を進捗管理することで、全社員のベクトルと熱量を合わせていく。経営指標と現場の業務プロセス指標を関連付け、ボードに掲示し、できるだけシンプルにマネジメントしていくことができる。
3.業績の見える化
業績は過去に打った手の結果であり、未来を保証するものではない。よって、先行管理が重要である。真の目標としての先行累計差額を見える化し、差額に対しての情報管理と先行行動管理をボード上でマネジメントすることで、効果的に未来を創り出すことができる。
4.財務・収益構造の見える化
見える化活動の最終的な成果は、定量的に財務諸表へ反映される。全てオープンにしてもよいが、階層別に責任を明確にし、見るべき(伝えるべき)数値と管理指標を定めて、原因分析と対策立案を行うとよい。
5.顧客の見える化
ここでいう見える化すべき顧客情報は、単なる顧客属性というだけではなく、顧客の声であることが重要だ。顕在化したニーズだけでなく、潜在化したニーズも現場のヒアリングやアンケート調査によって収集していくことが重要である。
6.自社の見える化(強みの見える化)
顧客の見える化とは逆に、顧客から見た自社の強み、固有技術は何かを見える化することである。技術マップなどで自社の強みを洗い出し、項目5 の顧客の見える化と掛け合わせることで、初めて進むべき戦略が明確になるであろう。
7.人材の見える化
あるべき人材像を明確にし、スキルマップにより力量を評価することで、乗り越えるべきギャップ(不足スキル)が明確になる。そして、育成ステップを定めて計画的に育成する。企業は人なり、実行力ある企業の大前提として、育成が重要である。人材育成は、見える化手法と大いに親和性があるところである。
8.ナレッジの見える化
会社が求める標準作業・標準時間を明確にし、バラつきなく全員が作業できるようにする。いわば先人の知恵(ナレッジ)を会社の財産として目録化することが必要だ。そのためにマニュアルを作成するが、作ること自体が目的なのではなく、日々の改善を常にアップデートする「運用ルール」も併せて設定することが重要となってくる。また、書面でのマニュアルだけでなく、特に職人的技能を要する作業については、ビデオマニュアルを活用することも非常に有効だ。
生産性向上のための見える化
見える化手法は、シンプルなマネジメント手法である。この手法を活用することで、生産性向上を図り、働き方を変えることができる。一例として会議を挙げる。例えば、営業戦略を検討するに当たって、何十枚にも及ぶ業績管理資料を作り込み、長時間会議室にこもって会議をする。会議自体も各部署が時間をかけて作った資料を説明することに多くの時間を割き、結果として今後将来どのように戦っていくかの意思決定の時間が取れていない、といったケースはよく聞く。
これは会議生産性が悪い例である。ここでの生産性とは、少ないインプット(投入:会議であれば時間)で多くのアウトプット(産出:会議であれば未来を決める意思決定)を出すことである。見える化手法を活用し、常に行動・問題点・要因が見えている状況をボードの前で作り出す中で、立ちミーティングなどのわずかな時間を活用し、積極的なコミュニケーションで管理サイクルを増やして、意思決定に多くの時間を割くことで生産性を高めていくことができるのだ(会議時間の削減と効果的意思決定の向上)。
見える化の未来
見える化はあくまで手法であり、生かすも殺すも人次第である。前述の通りのシンプルなマネジメント手法とはいえ、得てして表の作成・更新の負荷に追われ、作成することが目的となり本来的意味での活用に至っていないケースが散見される。意思決定と行動に時間を割くべきであるのに、資料の作成・更新に稼働時間の多くが割かれてしまうからである。
そこで、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の積極的活用がこの問題への解決策として有効だ。センサーを活用して動作分析を自動化したり、過去の販売データから需要予測をAI に行わせるなど、中堅・中小企業でもすでに導入・活用している企業がある。
手書き集計、手書き作成のアナログ的作業から一部IoT、AI を活用したデジタル的作業への移行が、見える化の未来の姿だ。当然、判断・決断、行動の主役は人間であり、全てがデジタル化されるとは思わない。管理ボードの前での積極的コミュニケーションなどアナログ的な強みは損なうべきではない。目的に照らしたアナログとデジタルのバランスを図った効率的な運用こそが、この手法をさらに進化させるヒントとなるのではないだろうか。
また、結果として付加価値の高い業務に人的経営資源を効果的に投入することができ、働き方や生産性が変わってくると思われる。手法の活用目的を常に見失わず、デジタルテクノロジーをバランスよく取り入れていくことで、さらなる成果直結型のマネジメント手法として進化させていくことができるであろう。
私は常々、「戦略は二流でも、実行力が一流の企業が生き残る」とお伝えしている。見える化手法を活用し、「実行力」ある企業(自律型組織)となることで、この目まぐるしい企業環境において生き残ることはもちろん、目的別の見える化、そしてデジタルテクノロジーの活用による進化型の見える化を推進することで、さらなる突き抜けた成長ができると信じてやまない。
PROFILE
武政 大貴
Hirotaka Takemasa
タナベ経営 コンサルティング戦略本部 部長 チーフコンサルタント 経営の見える化研究会 リーダー。中央大学法学部卒業。財務省関東財務局で金融機関の監督業務を経験後、企業経営に従事。タナベ経営入社後は、主に中期経営計画策定、企業再生・再建支援を行い、企業の収益体質改善に寄与。また5S・VM活動支援では、財務の視点による体質改善を行っている。現実・現場・現品主義を信条とする行動派コンサルタント。