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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2025.03.03

Surpassにおける未経験を含む女性の育成メソッド 小西 智美

営業未経験の女性が成長するフィールドづくり

 

Surpassは営業アウトソーシング事業を柱に、女性8割、かつ営業未経験者8割で事業を推進している。現在、多くの企業で営業アウトソーシングを活用する動きが広がっているが、その背景には人材不足やコストの最適化、営業の効率化、コア業務への集中など、さまざまな理由が挙げられる。

私たちは働く女性が「営業」というフィールドで長期的にキャリアを築ける環境づくりを目指しており、Surpassで働く女性たちは、まさにその姿を現場で体現している。本稿では、女性がさらに活躍し、企業価値を高めるためのヒントをお伝えしたい。

 

当社のアウトソーシング事業は、クライアントの営業課題に対して必要な領域を支援しており、分業型と一気通貫型の2つがある。中でも分業型が1つ目のポイントであり、本稿では分業型について説明したい。

分業型では、クライアントの営業プロセスの一部を担い、新規見込み顧客との関係構築や既存顧客のフォローアップをサポート。これによりクライアントの営業担当者が提案や受注といったコア業務に専念できる環境を提供している。(【図表】)

 

【図表】分業型のイメージ
【図表】分業型のイメージ
出所 : Surpass資料を基にタナベコンサルティング戦略総合研究所作成

 

 

従来、基本的に営業担当者が全ての業務を担当していたが、現在では分業化が進んでいる。営業の分業化には、前述の業務効率の向上や業務負担の軽減のほか、データ管理と分析の精度向上が期待できる。また、営業担当者に偏っていたノウハウを分散させることで、情報の蓄積と交換が密に行われ、全体の営業活動をより効果的に進める体制が整う。

分業化は、営業未経験者が新たに営業にチャレンジする際にも大いに役立ち、明確な役割分担があることで、トレーニング内容が絞られ、学ぶべきことに集中できる環境が整う。さらに、段階的な成果指標やキャリアステップを示すことで、安心してスキルを習得し、着実に成果を上げる仕組みを作ることができる。

女性が得意とする共感力の高さや丁寧なフォロー、柔軟なコミュニケーション能力、関係性重視の姿勢、細やかな情報管理、そして信頼感を与えるといった特性により、顧客との長期的な関係構築を得意とし、ナーチャリングで成果を上げやすいと言える。Surpassは、顧客心理を深く理解するために心理学のフレームワークを活用し、確かな信頼関係を築く営業スタイルを確立しており、「お客さまに価値ある提案をしたい」「期待を超える提案をしたい」といった思いを業務の中でしっかりと実現できる。

持続可能な育成の仕組み

 

2つ目のポイントは、未経験者が営業に挑戦し活躍できるように、Surpassが独自に取り組んでいる育成体制だ。

 

❶ 入社時のトレーニング
当社はこれまでの経験や知識を生かし、独自の育成プログラムを実施している。まずはビジネスマナーやコミュニケーションの基本、営業の基礎知識など、営業に必要なスキルを体系的に学べる内容を用意しており、特に訪問型や架電型の営業スタイルに応じたロールプレーイングを取り入れ、コミュニケーション力を磨ける実践的な研修を実施している。

座学で基礎を学んだ後は、繰り返しアウトプットすることで、想像力や課題発見力の向上を目指し、スキルの定着を図っている。

 

❷ 明確なルールで安心感(心理的安全性)を提供
心理的安全性とは、個々が意見を自由に発信でき、ミスをしても責められることなく安心して行動できる職場環境を指す。この心理的安全性を担保するためには、明確なルールの設定が欠かせない。ルールがあることで、業務の進め方や役割分担が明確になり、迷いや不安が軽減される。

新しいメンバーが加わった場合でも、ルールがあれば互いの期待や行動基準が明確になり、コミュニケーションエラーを防ぐことができ、その結果、誰もが安心して業務に専念できる環境づくりが可能になる。

 

❸ 迅速な判断をするためのOODAループの活用
OODAループとは、迅速な意思決定・行動を行うためのフレームワークである。 「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」で構成され、目標や課題に対してプロセスを踏んで意思決定・行動につなげていく。

現場で活用することで、状況変化に迅速に対応し、現場で得られるリアルタイムの情報を常に把握できる。これにより、問題の早期発見と効果的な解決策の策定を実現できると考え、活用している。

 

❹ クライアント業務におけるマニュアル構築
Surpassはアウトソーシング事業でさまざまな業界や営業領域の支援をしており、各クライアント向けに専用のマニュアルを作成している。営業未経験者向けに業務内容や操作手順などの学習ガイドとして、最新情報をマニュアル化することで、業務の標準化、効率化、知識の継承を促進しており、この取り組みにより、再現性の高い体制づくりを実現している。

 

❺ 現場でのサポート体制
現場の上司や先輩社員が連携して後輩社員を育成する「現場主導の育成体制」を採用している。このアプローチにより、現場での実務経験を通じて必要なスキルや知識を習得できるため、業務への適応が早く、より実践的な学びが提供できている。さらに、この体制は組織全体に自然と根付き、全社員が互いにサポートし合いながら成長する環境をつくり上げている。

最後に、これらの仕組みがきちんと生かされるために最も必要なもの、それがSurpassの組織風土だ。例えば、筆者は2人の子どもを育てるシングルマザーだが、Surpassの支援やカルチャーのおかげでキャリアを続けることができた。このようなカルチャーが、多様な人材を受け入れ、成長させる原動力となっている。自身の部下に対してもそのカルチャーを伝承すべく、メンバー一人一人に寄り添ったコミュニケーションを取るように工夫し、業務パフォーマンスの向上へとつなげている。

女性が活躍する環境を整えることは、企業そのものの競争力を高めることにもつながる。多様な視点が意思決定に反映されることで、イノベーションが促進され、企業の持続可能性が高まる。

私たちは、こうした取り組みを通じて「女性活躍」という言葉がなくなる日を目指し、社会全体のダイバーシティー推進に貢献していきたいと考えている。またそうした会社が増えてほしいと願っている。

PROFILE
著者画像
小西 智美
TOMOMI KONISHI
Surpass(タナベコンサルティンググループ)
セールスBPO 事業部 PJ 推進部 PJ 運用G
グループマネージャー
不動産仲介および生命保険会社の営業を経験した後に、株式会社Surpass に入社。関西拠点の立ち上げに携わり、現在はグループマネージャーとして複数のプロジェクト管理を担っている。チームのパフォーマンス向上に向けたマネジメントや業務効率化を推進し、企業の顧客ファンづくりに貢献している。