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コンサルティングメソッド

1・3・5の壁

事業を拡大させていくと、売上高100億円・300億円・500億円という 売上規模で伸び悩む“成長の壁”が立ちふさがることが多い。 この「1・3・5の壁」を突破する上で必要なことは何か。 トップマネジメント、マーケティング、開発、HR、ファイナンスという経営機能に着目し、 中小企業は中堅企業へ、中堅企業は日本経済の先頭でリーダーシップを発揮する経営モデルへと、 自社をステージアップさせる成長戦略を描くメソッドを提言する。
コンサルティングメソッド 2024.07.01

付加価値を生み出す生産・開発機能の強化

河村 周平

基盤の強化と指標の定量的評価から始める

 

政府は、中小企業と大企業の間の層として「中堅企業」を法律上の位置付けとして新たに設定した。

 

この政策は、中堅企業にとって労働生産性の抜本的な向上、事業規模の拡大による成長機会となり得る。一方で、企業には設備投資などのハード面の強化だけでは超えられない「1・3・5の壁」が存在する。

 

生産・開発におけるマネジメントの壁を乗り越えられずに成長の機会を逃してきた企業は多い。タナベコンサルティングでは、売り上げ規模が100億円、300億円、500億円を超える際にそれぞれ整えなければならない課題を、1・3・5の壁として提言している。

 

売り上げ規模100億円は「組織経営の壁」であり、自社内での生産・開発機能の基盤を強化し、生産性を向上させるステージとなる。また、現在の生産・開発における各種指標を定量的に評価できる仕組み(見える化)の構築が求められる。ここでは、3つの重要事項を取り上げる。

 

❶ 受注コントロール(製販の連携)
営業力・開発力で成長してきた企業においては、一方の社内での発言力が強く、製販の連携力が弱い傾向にある。双方がコミュニケーションを取る製販連携会議などの機会を設定し、改善ポイント・攻めるべきポイントを明確にして、共通の視座を持つ必要がある。既存領域の効率化、新たな受注獲得など、製販連携して推進することが重要だ。

 

❷ 購買部門の設置
企業活動において、購買部門は高収益化・安定化を図る上で重要な役割を担う。主な役割として、①品質向上と仕入れ価格(コスト)の低減、②営業・開発要望に対するタイムリーかつ安定的な供給、③商材の発掘・開発支援が挙げられる。購買機能を独立させることで全体最適の判断が可能となり、資本政策においても、仕入れ先依存率を定期的にマネジメントするなど、危機に強いサプライチェーンの構築が可能となる。

 

❸ データ活用と経営におけるインプット
データ化されていない情報では、最適な意思決定を行えないリスクがある。一方で、設備稼働率・不良率・在庫回転率・不稼働在庫金額などのさまざまなデータを集めているものの、単に数字だけを管理している状態の企業は多い。見える化した後の改善案まで、経営層がインプットできているかが重要となる。

 

外部との連携強化と「やめること」を決める

 

売り上げ規模300億円は「事業領域の壁」である。この規模は、外部との連携強化が重要となる。また、一部の機能を委託し、自社の強みへ経営資源を再配分することで競争力を磨くなど、「やめることを決める」判断も求められる。さらに、人材のマインドチェンジなど人材育成も重要である。それらも見越して、次の3つを重要事項として押さえていただきたい。

 

❶ 外注工場の政策的な活用
外注工場を自社のバリューチェーンの一部と捉え、技術力を生かした共創の推進が重要である。現在の連携先企業のアセットを自社の経営資源と捉え、1つの商品でつながるのではなく、新たな価値を生むパートナーへ昇華させる。外注工場との連携・開発会議など、関係構築に向けた政策的な活動を推進いただきたい。

 

❷ 外部との共同開発の実施
事業領域の拡大に当たり、1社で新たな領域に展開することは困難である。外部との連携を検討いただきたい。産学連携を例に挙げると、文部科学省「大学等における産学連携等実施状況について 令和3年度実績」(2023年2月)によると、⺠間企業との共同研究の実施件数は2万9637件(2021年度)と、2017年度比で16%上昇しており、積極的に外部と共同研究を行っている傾向がみられる。企業ビジョンの実現に向け、不足する機能を外部で補完することで、成長スピードを加速させているのだ。

 

❸ サプライチェーンマネジメントの構築
企業規模の拡大に伴い、品質管理の重要性は高まる。企業価値向上の観点では、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組み(CO2排出量の可視化)やサプライチェーン全体での取り組みを通じた社会貢献効果のストーリー化など、マネジメントすべき領域は拡大している。マネジメント領域と項目を明確化し、サステナブル調達方針などを設定する企業も増えている。このように、指針の設定も重要な取り組みとなる。

 

売り上げ規模に合わせて生産・開発戦略をつくる

 

売り上げ規模500億円は「ナンバーワンの壁」である。最も重要なのは、開発部門の細分化による専門分野領域の強化である。

 

利益の源泉は、工場や設備などの有形固定資産だけではなく、研究開発を通じて蓄積されたノウハウ・特許などの技術資産にまで及ぶ。この技術資産のマネジメントを強化する必要がある。成長分野を見定め、参入に必要な技術や優位性の確保のための開発戦略の設計に向け、研究開発部門の細分化が必要となる。

 

持続的成長には、付加価値を生み出す生産・開発機能の強化が不可欠だ。売り上げ規模に応じて打つ手は変わる。ハード面の強化だけでなく、生産・開発体制を見直し、外部との連携を推進して、マネジメントの壁を乗り越えていただきたい。

 

【図表】生産・開発機能のチェック項目(売り上げ規模別)

出所 : タナベコンサルティング戦略総合研究所作成

PROFILE
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河村 周平
Syuhei Kawamura
タナベコンサルティング ストラテジー&ドメイン ゼネラルマネジャー
電気機器業界にて営業、営業企画・商品開発部門マネジャーを経てタナベコンサルティング入社。業界・規模を問わず、各企業のコアコンピタンスを生かした事業戦略構築・新規事業立ち上げ支援を得意とする。また、SDGsプロジェクトの立ち上げと社内推進、戦略構築、企業ブランディングなどの実績を多く持つ。