販売・マーケティングの壁を突破し成長を遂げるには 松本 優香
販売・マーケティングは、自社が市場に選ばれるための領域であり、売り上げづくりに直結する。企業規模が成長するにつれ、企業が活動・活躍する市場は大きくなり、ターゲットとなる消費者の数も増加する。ただし、消費者の価値観が多様化している現代においては「数の増加」よりも「顧客ニーズ・行動の多様化・複雑化」への対応が大きな課題となる。
変化する環境に対応し、選ばれ続けるための顧客接点を、企業規模の拡大とともに最適にデザインするためにも、本稿を自社の顧客コミュニケーションについて今一度考える契機にしていただきたい。
販売・マーケティング機能100億円のチェック項目
売上高100億円突破を阻むのは「組織経営の壁」であり、自社の生産・開発基盤を強化し、バリューチェーンを成長させる事業戦略が必要となるステージである。
販売・マーケティング機能においては、それまで以上に広い市場に対する複合的な接点創出を実現するためのブランドマネジメントが重要となる。ブランドとは消費者の心に醸成されるイメージのことであり、消費者が描くブランドイメージが自社の描いた姿と乖離なく広がる必要がある。
販売・マーケティング機能における100億円の壁の重要事項について取り上げていく。
❶ 全国マーケットへの進出
バリューチェーンを成長させる事業戦略に挑むためには、新たな市場へ進出していくことが必要不可欠である。もちろん既存ターゲットの深耕や、ターゲット属性の拡大も考えられるが、100億円の壁を突破し、さらなる成長を実現するためには、全国マーケットへの拡大は避けて通れない。
❷ ブランドの複数化
多様で複雑な顧客ニーズに応え続けるには、企業が提供する顧客価値も多様化する必要がある。代表的な取り組みが「ブランドの複数化」だ。
デジタル技術の発達・浸透により市場には情報があふれ、消費者へ届く情報はフィルタリングされる。つまり、ターゲットニーズに最適なブランドストーリーを描かなければ、ターゲットの心に響かないどころか情報を届けることすら難しい。
❸ 拠点マネジメントシステムの強化
前述した通り、全国マーケットへの拡大およびブランドの複数化に取り組む中で必要になるのが「拠点マネジメントシステムの強化」である。
限定エリア・限定ブランドで事業を進めている間は、仮にマネジメントがシステム化されていなくとも何とかなってしまうケースは多いが、100億円の壁を突破する規模までステージを進めた企業においては、マネジメントシステムが必要不可欠となる。複数化したブランドも、全国に点在する拠点も、企業の同じ意思が反映されていなければ拡大とは言い難い。
販売・マーケティング機能300億円のチェック項目
売上高300億円の突破を阻むのは「事業領域の壁」である。バリューチェーンの各領域において外部連携が頻発し、企業数・従業員数・事業数が拡大していく中で、強みへ経営資源を集中させるための事業戦略が必要となる。
自社の存在意義を明確に描き、社内外に最適な形で発信することで、自社が社会に提供する価値ストーリーに広く共感を呼ぶことが重要となる。
❶ 海外マーケットへの挑戦
国内で積み上げた実績や顧客からの支持に加え、海外マーケットにおける勝てる場の発見が必要となる。国内とは全く異なる文化圏への進出となることも多く、市場調査はもちろんだが、今一度自社の価値と向き合い、海外へ向けたストーリーデザインを描くことが重要である。
❷ 新市場への新事業の投入
自社が持つ本質的な価値・強みを基に、新たな市場に新たな「事業」を投入し、顧客との接点を多角的に拡大することで、LTV(Life Time Value)の最大化を目指す必要がある。経営資源を再分配し、新たな売り上げの柱の創出につなげる。
販売・マーケティング機能500億円のチェック項目
500億円は「ナンバーワンの壁」である。事業が多角化し、競合企業に対する優位性を創出することで、業界トップを狙えるステージである。
業界をけん引するナンバーワンブランドとなることで、知名度や一定のブランドイメージ醸成ができている状態となるため、おのずと社会に与える影響も大きくなる。
企業規模や売上高のみではなく、業界課題・社会課題の解決へ目を向け、リーディングカンパニーとしての使命を果たすことで社会貢献価値の向上に努めていただきたい。
❶ ブランディング活動によるシェアナンバーワンの追求
ナンバーワンに徹底的にこだわり、業界内外の認知の基盤を確固たるものに昇華していく必要がある。そのためには、世の中に提供している自社の製品・サービスがナンバーワンシェアであることにこだわり、該当する製品・サービスカテゴリにおいて一番に想起されるブランド認知を確立しなければならない。
企業が成長発展していく中で、マーケティング・販売機能の強化は避けては通れない。向き合う市場の状況の変化を正しく把握し、自社の使命に従って適切な価値を提供し続けることこそが、マーケティング・販売領域における重要課題といえる。
環境の変化を敏感に捉え、顧客ニーズを一足早くキャッチし、形にして提供することこそが、顧客に選ばれ続け、ナンバーワンとなっていくための活路と言える。顧客・社会、そして自社と向き合い、価値を磨き続けることで、壁を乗り越えていただきたい。
総合広告代理店にて媒体選定からデザイン提案まで総合的に企画提案営業を経験後、タナベコンサルティングへ入社。販促戦略パートナーとして、顧客創造に向けた“自社の提供価値を磨くブランディング&プロモーション”等を実施。顧客に寄り添うコンサルティングスタイルを信条とし、マーケティングの戦略策定から、実行·運営までトータルでサポートしている。