•  
コンサルティング メソッドのメインビジュアル
コンサルティング メソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2024.03.01

「MIRAI承継」で経営と事業を未来へつなぐ 福元 章士

企業経営継続が困難な環境へ変化
  現在、外部環境の変化がますます激しくなってきている。世界経済の停滞が続く中、日本経済は緩やかに回復に向かっているが、約30年ぶりに物価と賃金の上昇するインフレが加速。すなわち、これまでのデフレ経済下におけるコスト競争から、適正な価格を価値として提供する価値転嫁型モデルへの転換が、大企業から中堅企業、中小企業に至るまで求められている。   企業経営を継続するには、環境変化に対応するための事業ポートフォリオの変革とともに、誰が経営を担うかという人材戦略も非常に重要である。帝国データバンクが2023年6月に公表した「全国『社長年齢』分析調査(2022年)」によると、全国の社長の平均年齢は60.4歳と32年連続で上昇し、過去最高を更新。これは、依然として後継経営者へのバトンがスムーズに渡せていない状況と考えられる。   経営者の高齢化が進む一方、2022年の後継者不在率は57.2%となり、2011年以降初めて60%を下回っている(帝国データバンク「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022)」2022年11月)。コロナ禍を機に承継に向き合う機会が増えたこと、金融機関をはじめとする支援機関相談窓口が拡充されたことで、第三者承継やM&A、ファンド経由の経営再建併用の事業承継などが増加していることに起因する。   同調査によると、代表者の就任経緯では「同族承継」の比率が低下し、内部昇格およびM&Aによる承継比率の上昇基調が継続。後継候補者属性では、「非同族」が初の首位となった。つまり、事業承継においても、同族後継者不在による承継難から変化がうかがえ、少しずつではあるが、承継の選択肢が増えていると言える。しかし、事業継続自体が厳しさを増していることに変わりはない。    
承継はなぜ難しいのか
  経営を次代につなぐことがいかに難しいかという現実に、タナベコンサルティンググループ(TCG)は創業以来67年間、向き合ってきた。そして、「会社はつぶれるようにできている」と申し上げてきた。   現在、日本国内には約368万の企業があるが※1、100年企業は4万3631社※2、200年企業は1685社に過ぎない※3。企業存続がいかに難しいかを物語る数値である。   では、なぜ承継は難しいのか?   一般的に企業における事業の寿命は30年と言われてきた。いわゆる「事業30年説」である。現在では、事業そのもののライフサイクルはさらに短いと言われている。100年企業になるためには少なくとも3回以上の事業ポートフォリオ転換に成功しなければならない。   また、企業が持続的に成長するためには、新たな成長エンジンとなる事業と、それを実行する人材が不可欠である。この2つの要素を承継のタイミングでしっかりと具備することが難しいからこそ、企業の承継は難しい。   しかし、事業の寿命が企業の寿命になってはいけない。そして、経営者の寿命が企業の寿命になってもいけない。事実、第三者承継やM&Aなど選択肢は増えてきているが、昨今の後継者不足で日本企業の127万社※4は次世代へ経営をつなぐストーリーをまだ描けていない。   全ての企業が選択できる道は、「存続」「廃業」「売却」「倒産」の4つしかない。当然、経営者が選択する道は「存続」が基本である。   TCGが目指す経営の承継とは、「FCC(ファーストコールカンパニー)~100年先も一番に選ばれる会社~」の実現に向けて未来へ経営をつなぐことである。その観点から言えば、「売却」を選択して企業という公器を次の世代に残していくことも、一つの選択肢になる。   結果的に自社や従業員の雇用を守ることになり、社会貢献につながる選択と言える。そう考えると、企業経営の本質は、「経営を未来へつなぐための取り組み」と捉えられるのではないだろうか。    
オーナー経営者の2つの顔
  承継の際、オーナー企業は2つの立場で検討を迫られることになる。1つ目はオーナー株主個人、2つ目は企業の社長としての立場である。   オーナー株主個人の立場としては、節税のための株価抑制、もしくは株主利益(創業者利益)などの資本の承継が主な検討事項となる。企業の社長としての立場であれば、企業価値を向上させるために、経営戦略や組織体制(後継社長や次世代ボードメンバー)が主な検討事項になる。   この関係は一般的にトレードオフの関係になることが多い。節税のための株価抑制を検討する中で、選択肢によっては節税のために企業体質が毀損してしまう恐れもある。反対に企業価値が高まれば一般的に株価は上がり、オーナー株主個人としては相続税負担が大きくなる。   このトレードオフの関係の中で、企業価値を損なうことなく承継をさらなる成長のステップにすることが、「経営を未来につなぐ」ということではないだろうか。今般の経営技術の中で承継の選択肢が増えていることを鑑みると、「何が最良の選択肢か? 承継の価値判断基準は何か?」をあらためて考え、可能性を広げて準備していくことが、オーナー経営者の責務と言える。  
ゴーイング・コンサーンを体現するために
  「次代に自社をどのようにして残していくか」を真剣に考えている経営者の皆さまへお伝えしたいことがある。会社という公器を、価値を高めながら次代に引き継いでいくことこそが、何よりの社会貢献である、ということだ。   企業存続のためには、激しく速い環境変化への対応が不可欠である。つまり、変化に合わせて企業自身が変革しなければ、生き残ることはできない。   企業が自ら変わるチャンスは3つある。1つ目は赤字の時。利益が出ている時、思い切った変革は難しい。現在の取り組みがうまくいっていると組織が認識しているタイミングでは、現状維持を優先させるものである。   しかし、赤字の時には企業を変革する大胆な施策を決断・実行する覚悟が生まれ、企業を変革しなければならないと経営者や経営幹部は考えるはずである。もし、赤字でもそのように考えが変わらなければ、将来は「倒産」コースを歩むしかない。   2つ目は不況の時である。昨今のコロナ禍においても社会が大きく変化し、それに対応した企業は成長している。不況だからこそ新たなビジネスチャンスが生まれ、そのチャンスを生かすべく自社を変革することが成長につながり、持続的成長が可能になる。   最後は承継のタイミングである。経営者が次世代に変わるからこそ、自社も変わるチャンスである。   企業経営はトップの意志で決まる。トップが変わる承継期こそ自社変革が可能なタイミングであり、単に会社資産の承継だけではなく、「いかに成長できる基盤を創りながら経営を次世代へ引き継いでいくか」を考えなければならない。   前述した通り、外部環境は変化している。当然、自社の未来を創る上でも、今までのやり方が通用しなくなる。そこで大切なことは、企業に変化と成長を促す新しい経営ソリューションの活用である。   TCGでは、未来を創る承継ステージ別の経営ソリューションを「MIRAI承継コンサルティング」として展開している。承継のあらゆるステージにおいて最適なソリューションを、資本の承継だけではなく、事業・組織・人材・経営システムなど、経営全体を俯瞰してデザイン。各領域のコンサルタントが経営に関する専門家チームとして経営者に寄り添い、課題解決を支援している。   企業経営の課題に対してトータルに取り組んできたTCGだからこそ提供できる、これまで培った多面的なノウハウを次に紹介する。この経営ソリューションを参考いただき、ぜひ持続的に成長するFCCの実現に向けて、経営を未来へつないでいただきたい。    
新しい経営ソリューション「MIRAI承継」   ❶ MIRAI承継プランニング 未来に経営をつないでいく際、まず全体の設計図が必要になる。特に、長期ビジョン策定とともに、誰が中心となり、ビジョンを実現させていくかを考えなければならない。状況によって見直していく必要はあるが、基本指針がなければ将来の修正や判断基準にブレが生じてしまうため、どのようにバトンをつなぐかを決めておく必要がある。   その際に大切なことは、「資本の承継」と「組織の承継」の両軸で考えておくことだ。資本の承継に関しては、株式の承継やその際の組織再編も併せて検討しなければならない。   組織の承継では、「承継カレンダー」の作成から始める。これは、経営者や経営幹部を含めて、全社員を縦に並べて経過年数で何歳にどの役割を担ってもらうかを想定するカレンダーである。何年後に誰をどのようなポジションに引き上げていくか、また、どの役割の人材が不足しているかなどを見える化し、将来の組織を検討する。   資本と組織の将来の在るべき姿をパターンで検討し、来るべき承継タイミングに備える設計図を作成していただきたい。   ❷ 4つの出口戦略 承継プランニングにおいて、資本面から見て将来の経営をどのように承継していくか。その出口は4つある。   1つ目は、M&A(株式売却または事業譲渡)である。より広範囲から適切な会社や後任適任者が選択でき、大企業(安定企業)の傘下となれば自社も安定するため、経営承継において積極的に活用されている手法である。   2つ目は、IPO(株式上場)である。上場基準をクリアするハードルは高いが、能力主義で後継者を選び、直接金融による資金調達が可能になることや社会的信用度も高くなるメリットが見込まれる。経営を承継するための上場も選択肢の一つである。   3つ目は、MBO(役員陣による株式買取)である。役員が経営権(株式)を保有することで経営が安定し、次代に経営をつなぐことができる。しかし、後継者に株式買取資金が必要になるため、ファイナンススキームが複雑になることが多く、最近では上場企業における非上場化の手段として紹介されることが増えてきた。   4つ目は、ホールディングス化による経営と資本の分離である。財産・債務は創業家が代々継承し、事業は優秀な社員に任せる形で、グループの成長と株価高騰を切り離すことができるスキームである。   昨今ではM&Aの実施も相まって、ホールディングス化する企業が増えている。各事業の意思決定の迅速化や業績責任の明確化を図れるメリットもあり、複数事業を有する企業グループで活用されることが増えている。   その半面、事業会社が増えることから、経営者人材を複数育成することが必要となる。また、事業会社が複数になることから、純粋持ち株会社における経営企画機能や、純粋持ち株会社と事業会社間でのガバナンスやマネジメント機能、事業会社の業務を集約するシェアードサービス機能をデザインすることも重要になる。   TCGは、この4つの出口戦略の支援コンサルティングを実施している。クライアント企業にとって4つの出口戦略のどのパターンが最適なのかを検討し、経営という観点から見てどの選択肢が最適かを判断することが大切である。   ❸ 後継体制づくり 組織面から見た承継に関しては、どのように組織や人材を成長させるかも検討しなければならない。その設計図が「サクセッションプラン」である。後継経営者をどのように育成するか、それを自社の仕組みとして構築・実装することだ。   まずは、後継経営者や経営幹部をどのように育成するかを体系的に組み立てることが大切である。具体的には、次世代経営者の育成として、将来の経営幹部候補者たちで長期ビジョンや中期経営計画を策定するプロジェクトを定期的に開催し、経営感覚を体感させるなどの仕組みづくりがある。   TCGは、後継経営者育成のソリューション「ジュニアボードコンサルティング」を提供している。また、経営者人材以外についても階層別での教育体系を整備し、各階層の人材への教育を実施しながら人材をプールし、選抜形式で経営者人材を選定していくプロセスを実装することが必要である。   ❹ 事業再生(再生M&A) 全ての企業が順調な業績ではない。事業面での再建が優先される企業も多い。このような場合、まずは事業再生が急務となる。赤字を脱却するための改善計画の策定から、その具体策と実行推進、モニタリングまでが必要になる。   また、自力での事業継続が難しい場合には、事業再生M&Aを実施し、次の世代に経営をつなぐことで、従業員や自社そのものを守るという選択肢もある。TCGは、事業再生のための改善策や実行推進、事業再生M&Aまでサポートが可能である。     これまで述べてきたソリューションを、TCGでは「MIRAI承継ソリューション」として一気通貫でサポートしている。企業の経営を承継する場合、承継タイミングから考えると、検討時期としては5~10年さかのぼって考える必要があり、準備に1~5年を要する。承継時および承継後については経営面、資本面、組織面、人材面、経営システム(仕組み)面において、何をいつまでに実施するかを、総合的に判断しなければならない。   その判断基準こそが、TCGの掲げる「MIRAI承継」の本質的価値である。     ※1 総務省統計局「我が国の事業所・企業の経済活動の状況~令和3年経済センサス-活動調査の結果から~」2023年6月 ※2 帝国データバンク「全国『老舗企業』分析調査(2023年)」 ※3 帝国データバンク「全国『老舗企業』分析調査(2022年)」 ※4 中小企業庁「事業引継ぎガイドライン」改訂検討会(第1回)「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題」2019年11月  
PROFILE
著者画像
福元 章士
Shoji Fukumoto
タナベコンサルティング 上席執行役員 収益・財務戦略構築を専門分野として、建設、住宅、製造、小売業など幅広い業界でコンサルティングを実施。企業再生、組織再編、事業承継などのターンアラウンド支援も数多く手掛けてきた。「1社でも多く企業の成長を誠心誠意サポートする」をモットーに、さまざまな経営課題を解決に導く経営者のパートナーとして高い信頼を得ている。