海外向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」。シンプルな仕組みと分かりやすい料金体系で、海外 PR が初めての企業でも効果的なプレスリリース配信が可能
「日本企業の海外への情報発信力を向上したい」。そんな思いでカーツメディアワークスは2011年、外国人役員らとインフォグラフィックコミュニケーションサービスを、そして2018年には、シンプルな仕組みと分かりやすい料金体系で、初めての企業でも効果的な配信が可能な海外向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」を立ち上げ、海外向けPR戦略やデジタルマーケティングサービスを展開している。
海外事業の立ち上げから10年以上が経過し、さまざまな日本企業の海外PRやデジタルマーケティング、海外企業の日本向けマーケティング施策に携わる中で1つの共通点が見えてきた。
それは「日本企業の情報発信は弱い」こと。正確には「弱い」のではなく「消極的」である。
プレスリリース、SNS、広告、コンテンツマーケティング、越境EC、展示会など海外への情報発信手法は多数あるが、海外企業に比べると日本企業の発信量は10分の1くらいではないだろうか。
良いか悪いかはさておき、中国や米国の企業は、多少おかしな日本語でも、見た目が崩れているWebサイトでも、完璧でない製品であっても、積極的にプレスリリースを発信し、インフルエンサーを使い、デジタル広告を駆使して日本市場にリーチしてくる。
皆さんもそうした海外企業や海外製品を目にした経験があるのではないだろうか。
要はマインドセットの違いである。海外進出や情報発信が苦手な企業からは、「外国語ができないから」「日本市場でもっと売れてから」「もう少し製品を改良してから」という声をよく聞く。これは「『完璧』にしてからでないと次の行動に移れない」、もしくは「考えるだけでアクションしない」という、いわゆる典型的な「日本人の気質」が出てしまっているのかもしれない。
大企業であれば、不完全なプロダクトを世に出して信頼を失うことは避けたいところであろう。しかし、スタートアップや中小企業であれば、まずは市場投入し、ユーザーの声を聞きながらバージョンアップしていく方が早く現地マーケットにフィットするので、良い成果が生まれやすい。
スピードは、グローバルビジネスでは生命線である。
海外プレスリリース活用のポイント
デジタル広告やSNSなど、数ある情報発信の中でも(特に製品発売前に)ぜひ実行してもらいたいのが「海外プレスリリース」である。他の広報施策よりはるかに安価で実行できることがその理由だ。他にも次のような理由がある。
プレスリリースというと、メディアに「新製品・新サービスをお知らせする」イメージがあるかもしれないが、そればかりではない。マーケティング・リサーチの機能も持っているのだ。
メディアは大衆を代表するような側面を持っている。つまり、メディアで取り上げられるということは、その市場で「ニーズがある」、もしくは「読者、視聴者が興味を持ってくれる」から掲載や放映されるのである。
もちろん、本来の目的である認知や宣伝の機能においても、影響力の高いメディアに掲載されれば、広告よりもはるかに大きな効果を上げることもある。
プレスリリースで欠かせない大きなポイントは「報道価値(ニュースバリュー)」が必要ということだ。これは海外広報のみならず、国内においても重要なことであり、世界共通のPRルールである。ただの広告文をメディアに届けても無視されるだけだが、そこに報道価値があれば、記者は興味を持ち、記事を書いてくれる。
1つのプレスリリースをきっかけに世界中のメディアに取り上げられ、大ヒットにつながるケースもある。実際、2人だけのベンチャー企業が作った「とあるゲーム」が、1つのプレスリリースをきっかけに世界中でダウンロードされた例がある。
このゲームは「眠っていてもレベルが上がるRPG(ロールプレイングゲーム)」というコンセプトで作られた。「レベルを上げるために寝ないで戦闘して、レベル上げする」のがそれまでの「RPGのお決まり」であったが、「寝ている間にレベルが上がる」という逆のコンセプトを打ち出したため、それが報道価値となった。
無論、報道価値を意識してゲームを制作したわけではないが、「ユーザーに少しでも興味を持ってもらうには?」を考えた結果、そのようなコンセプトにしたようだ。
それをプレスリリースのタイトルに反映し、「寝ている間にレベルアップする新RPG」として米国のゲームメディアを中心にプレスリリース配信。すると、スペイン、フランス、英国、南米など世界中のメディアに取り上げられ、Appleのアプリストアのゲームランキングでベスト10に入るほどダウンロードされた。
これは初期費用をほぼかけず、1つのプレスリリースで大きな効果を獲得した好事例である。ポイントは「多くの人が持つ暗黙知や常識を良い形で裏切る」という点だ。この「暗黙知や常識の外に出る」というのは世界共通の「報道価値の作り方」なので、ぜひ参考にしてもらいたい。
グローバルPRへ気軽にチャレンジしよう
最後に、海外PR・マーケティング戦略の実務面を解説していく。
そもそも広報とは「社会との関係を構築する活動」である。企業広報の主たる目的は、より多くの人に認知してもらい、信頼してもらい、購入してもらうことに集約されていくだろう。
企業にとっては、広報も宣伝も広告も目的は同じであり、「利益拡大に貢献」するかどうかである。
海外となると途端に難しく思うかもしれないが、「知ってもらうための活動」なので、本質的には日本も米国も南米も欧州も大きな変わりはない。言語や文化、メディアが少し違うだけである。
世界共通で、人は何かしらのメディアに触れ、誰かのクチコミを信じて、購入の意思決定をしている。そこに対してどういった情報を発信していくかが、企業広報には求められるのだ。基本的には「誰に(WHO)、何を(WHAT)、どのように(HOW)」して購入してもらうか(接触してもらうか)の3つがポイントなので、その他のことは考えなくても良いくらいだ。
これからのグローバル時代、AIによってさらに言語の壁は低くなり、日本と同じように海外マーケットを視野に入れていかなくてはいけない。縮小する日本を抜け出し、海外に打って出るために、ぜひ「完璧を求めず」、気軽にグローバルPRにチャレンジしていただきたい。
報道・情報番組のディレクターとして取材経験を積み、その後、PRコンサルティングファームにて上場企業、グローバル企業、官庁など幅広い業種の広報戦略を手掛けた後に独立。戦略PRおよびデジタルマーケティングを中心としたカーツメディアワークスを設立し代表取締役に就任。著書に『あたらしいWebマーケティングハンドブック』『クラウド情報整理術』など5冊。