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コンサルティングメソッド

コンサルティング メソッド

タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2022.06.01

意思決定の精度とスピードを上げるマネジメントシステム:コーポレートファイナンス

BIツールによる情報共有と意思決定のスピードアップ

 

さまざまな経営情報が各所に分散していては、十分な意思決定ができない。経営を進める上での課題は数多くあるため、優先順位の高い課題から対策を打ち、着実に成果につなげることが必要である。

 

これらの経営情報を経営トップ層など限られたメンバーしか把握できないようでは、スピーディーに成果を出すことはできない。前述した意思決定のポイントを全社員が理解し、これらの数値情報を漏れなく提供して、全社員が戦略推進と目標達成に向けて意思決定と努力のできる仕組みが必要である。

 

数値情報には、会計情報のみならず、顧客や商品情報、部門や個人の行動情報などさまざまな要因が関係してくる。これらを一元して表示できるダッシュボード機能が大切となり、近年その実現のためにBIツール(Business Intelligence tools)が普及してきた。リーダーは毎朝BIツールで最新の情報を見ながら指示を出し、メンバーが取り組むべき重点を変えていくのである。(【図表3】)

 

 

【図表3】BIツールによる情報共有と意思決定のスピードアップ

【図表3】BIツールによる情報共有と意思決定のスピードアップ

出所:タナベコンサルティング作成

 

 

 

リーダーの意思決定マインド

 

冒頭にお伝えした通り、日本企業の国際競争力は31位、ビジネス効率性においては48位という状況である。企業の今の姿が経営トップや幹部の意思決定の結果とすれば、企業のリーダーたる経営者や幹部の意思決定力を強化するしかない。

 

リーダーが意思決定を行う上で具備したいマインドは【図表4】の通りである。

 

 

【図表4】リーダーが意思決定を行う上で具備したいマインド

【図表4】リーダーが意思決定を行う上で具備したいマインド

出所:タナベコンサルティング作成

 

 

意思決定ポイントは多数あるが、あえて重要な4つを示している。価値判断基準は、やはり理念やビジョンの理解と実現への強い思いであり、重要になるのがこれを展開する上での数値情報の把握と意思決定マインドの醸成である。これらのマインドを備えたリーダーとなることで、自社を成功に導いていきたい。

 

 

デシジョンマネジメントの未来

 

ここまで述べてきた通り、デシジョンマネジメントには数値情報の正確かつスピーディーな把握と共有が必要であり、絶対条件とも言える。経済が成熟して、企業の事業形態が多岐にわたるようになり、数値把握の必要性は年々高まって、ERP(Enterprise Resources Planning:統合基幹業務システム)の導入も進んでいる。コンピューターによる単純な会計処理で実現できるのは経理情報の効率化や把握のみであるため、やはりERPで企業の経営情報を一元的に把握・管理できるようにして意思決定に生かしたい。その上で、前述したデシジョンマネジメントの仕組みを構築していくのである。

 

経済産業省のDXレポートによる「2025年の崖」が目前に迫っている。既存システムが老朽化する中、技術者は圧倒的に不足してリプレースが間に合わず、経営に大きな悪影響を与えることが予測されている。企業は対応を急がなければならない。

 

また、今後はAIの活用もデシジョンマネジメント分野において重要になると考えられる。戦略設計や中期経営計画の策定において、将来における需要予測や消費者動向、技術動向なども含めた未来の予測ができれば、成果を最大にできる投資計画を高い精度で実行することが可能だ。日常における売上予測や異常値の発見も、AIであれば高い精度で予測可能とされる今、これらの先進技術を積極的に経営に取り入れて、競争力を強化していくことが必要である。