社会体験価値を高め他社との差別化を図る
近年、企業の経営活動において、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点でSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指す取り組みに注目が集まっている。事業を通じて環境・経済・社会の課題を解決するビジネスモデルが注目されており、多くの企業がステークホルダーに向けた発信を行っている。 しかし、どの企業も自社の事業をSDGs17のゴールに関連付ける程度にとどまり、社会課題に対してどれだけの影響を与えているのか明確になっていないケースが多い。そのため、SDGs達成に向けた取り組みを行っていても、他社との差別化ができていないのが現状である。他社との差別化を図るためには、SX(ソーシャル・エクスペリエンス:社会体験価値)をいかにしてステークホルダーに伝えられるかが重要である。 SXとは、企業にとっての顧客や従業員のほか、取引先や株主、地域社会などさまざまなステークホルダーに対して体験価値を提供していくことを指す。本稿では、SXを高めるための要素と、自社の取り組みをステークホルダーに共感してもらうための手法について解説する。自社の取り組みを可視化し目標を再設定する
SDGsの達成を通じてSXを高めていくに当たり、まずは「自社の取り組みがESGに対してどのくらい良い影響を与えているのか」を可視化する必要がある。例えば、環境に対しての取り組みを行っている場合、「バリュー・サプライチェーン上でどれだけのCO2(二酸化炭素)が発生しているのかを知る」などである。 自社の生産活動でどれだけのCO2が排出されているのかを把握し、削減目標を設定することが重要だ。環境省からCO2排出量の算出式が公開されているため、参考にしていただきたい。 社会に対しての取り組みを数値化する場合、社会問題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」を展開するボーダレス・ジャパンの事業の1つであるビジネスレザーファクトリーの取り組みが参考になる。 ビジネスレザーファクトリーでは、バングラデシュで働きたくても働くことができない貧しい人々に、安全かつ安心の労働環境を提供している。「『世界中の働くを楽しく』を実現し、貧困のない社会を共創する」をビジョンに掲げ、事業KPI(重要業績評価指標)では、「バングラデシュでビジネスレザーファクトリーの製品を作る雇用者数」に設定している。この指標は、「社会にどれだけのインパクトを与えることができたのか」を可視化するための指標にもなっている。 まずは、自社の取り組みを数字で押さえ、目標数値を決定することが重要だ。そうすることで、次の段階であるステークホルダーへのコミュニケーションを行うことができる。 【図表1】社会体験価値(SX)を高める流れ
出所:タナベコンサルティング作成
【図表2】小川珈琲のSDGs宣言の概要
出所:小川珈琲HPを基にタナベコンサルティング作成