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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2022.03.01

ブランド価値を最大化するコミュニケーションDX 松岡 彩/竹綱 一浩

【図表1】今後取り組みたい販促・プロモーション施策(複数回答) 出所:タナベ経営「販促・プロモーションに関するアンケート調査」(2021年10月)    
再考されるマーケティング戦略
  新型コロナウイルス感染拡大の影響により、生活様式や消費者の考え方、働き方などさまざまな変化が起こった。企業の顧客とのコミュニケーション戦略にも、大幅な見直しが迫られている。   タナベ経営が実施した「販促・プロモーションに関するアンケート調査」(2021年10月)の結果を一部、紹介する。新型コロナウイルスの感染拡大が販促・プロモーション施策に与えた影響(複数回答)について、「マーケティング施策そのものを見つめなおした」と回答した企業は33.4%に上った。次いで「施策の数を減らした」(24.0%)、「サービスの訴求内容を変えた」(20.7%)など、変化したマーケットに対応すべく、企業が試行錯誤しながらプロモーション施策を実施していることが分かる。   だが、大きな環境変化はチャンスでもある。新しいマーケティング戦略によって、さまざまな業界で新規参入の企業が業績を伸ばしている。過去の成功に依存する企業が淘汰される時代がやってきたのだ。   同アンケートの結果をもう1つ紹介したい。「今後取り組みたい販促・プロモーション施策」(複数回答)について聞いたところ、「自社ホームページ・ECサイト」が46.1%、「動画(広告を除く)」が27.8%、「SNS(広告を除く)」が27.0%、「オンライン広告(スマートフォン)」が13.8%、「オンライン広告(PC)」が11.8%と、コロナ禍によってリアルなコミュニケーションが難しくなった中、オンラインでのプロモーション施策を意識する企業が多いことが明確になった(【図表1】)。これまでのオフライン(リアル)での施策がゼロになっていくのではなく、「リアルとオンラインのバランスを変えていく」という企業の考え方が反映された結果と言えるだろう。   本稿では、今後強化が必要とされるマーケティング施策の中でも、特に関心の高いSNS・動画プロモーション施策について考察していく。   前述したように、消費者とのリアルなコミュニケーションが難しい現在、Twitter、Instagram、LINEなどのSNSを活用し、消費者とコミュニケーションを図る企業が増えている。   SNSの企業アカウントの開設・運用など、自社でSNS活用を進める場合、自社のブランディングやプロモーションの目的を明確に把握した上で、業界との親和性やターゲットの年齢に合わせて展開していくことが重要である。SNSの種類によって、消費者の活用方法が異なるためだ。(【図表2】)     【図表2】各SNSの特徴 ※20~30歳代の女性 出所:タナベ経営作成    
双方向のコミュニケーションを意識
  企業のマーケティング戦略において、SNSはどのように活用できるのか。   まず、自社商品・ブランドの認知や新商品情報の拡散など、企業が伝えたいメッセージを多くのユーザーへ訴求できる。重要なのは情報の拡散ではなく、消費者に自社のファンになってもらうためのコミュニケーションを密に行うことだ。「商品のここを改善してほしい」「ブランドのここが好き」など消費者のニーズを獲得できる。   それに加えて、質の高いUGC(User Generated Content:ユーザーが発信するブログや配信動画などのコンテンツ)の創出を促すことが、さらなるファンの獲得につながる。   デジタル化が急速に進んだ現在は、膨大な情報が常に飛び交っており、消費者は多くのプロモーションを日常的に目にする。企業が発信するメッセージは、よほど影響が強くない限り情報の波にのまれてしまう。   結果、プロモーション施策の効果は薄くなり、注目を集めようと社会の常識から逸脱した施策で「炎上」を招き、消費者に不信感を与えてしまうケースも少なくない。   それに対し、同年代や同じ趣味・嗜好・目線を持ち、似た生活水準にある消費者が発信するUGCは信頼度が高く、消費者の購買行動に結び付きやすい。   つまり、企業がSNSを活用する場合、一方的に不特定多数の消費者に情報を拡散するのではなく、消費者との双方向のコミュニケーションを意識し、消費者の自発的な情報発信を促すことがポイントである。また、商品キャンペーンの実施などで、自社商品・ブランドのロイヤルティー向上につなげていくことも可能だ。   もう1つ、SNSを活用する上で重要なポイントがある。それは、「自社アカウントのフォロワーをいかに増やすか」よりも、「フォロワーが増えてから、どのような施策でリピートにつなげ、コアなファンへ昇華させるか」である。時代の変化に合わせた情報の提供や、定期的なキャンペーンなど、消費者を飽きさせない工夫を継続することが重要だ。   だが、自社内のリソースだけではマンネリ化が起こりやすい。次に、マンネリ化を防ぐための手法を2つ紹介する。   ❶アニメコンテンツや異業種とのコラボレーション   コラボによって、自社商品・ブランドの強みを生かしつつ、新たなユーザーを獲得するチャンスを創出できる。主なメリットは次の3つだ。   ①通常の広告宣伝以上に話題になりやすく、自社でゼロからコンテンツを企画するよりも効率的。②コラボ先の消費者を自社に誘引できる。③コラボ先と同時期に露出を高めることで、相乗効果により拡散力が高まる。   だが、やみくもなコラボレーションによってブランドイメージを損ねる、コラボ先にユーザーが流れてしまうなどのデメリットもある。コラボ先の選定は、ブランドの世界観の維持・拡大を前提に進めていくことが重要だ。   ❷SNS上でのインパクトを意識した施策   SNS上でのインパクトを意識したプレミアム景品の設計、ウェブ上での消費者参加型のゲームなど、思わず情報を拡散したくなるような企画を実施することで、消費者のキャンペーン参加を促す。また、商品イメージやブランドメッセージに関連付けたプレゼントキャンペーンを意識することで、商品の認知拡大と、ブランドメッセージの浸透という「二兎」を追うことも可能だ。   この2つの施策を織り交ぜつつSNSを活用することが、中長期的なマーケティング戦略を成功に導く秘訣である。     ※インターネット上のコメント欄などにおいて、批判や誹謗中傷などを含む投稿が集中すること      
新たな生活様式に合わせた動画コミュニケーション
  消費者が情報を入手する手段は、ここ数年で劇的に変化している。読者の皆さんは、最近、自宅で決まった時間にテレビを見た時間がどれだけあるだろうか。   YouTubeやNetflix、Huluなどの動画配信サービス、ABEMAやDAZNといったオンラインテレビなどの新しいメディアが登場し、消費者は好きな時間に好きな場所でニュース・スポーツ・ドラマ・アニメなど多彩なコンテンツを自由に楽しむことが可能になった。YouTubeの利用率は10~40歳代で約90%、60歳代でも半数以上という調査結果(総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」2021年8月)もある。この状況で、「自社のマーケティング施策はテレビCMや新聞広告などのマスメディアのみを活用する」といった従来通りの考え方で良いのだろうか。   テレビCMが効果の薄いメディアかというと、まだまだ効果の高いメディアであることに変わりはない。だが、オンライン上での動画コンテンツの活用もマーケティング戦略に取り入れなければ、この急激な環境変化に対応できない。動画コンテンツを活用するメリットは次の3つである。   ❶伝える情報量が多い   動画コンテンツは、複雑な内容でも短時間で分かりやすくメッセージを伝えることができる。たった1分の動画でも、文字だけの情報に換算すると180万語相当、ウェブサイトであれば3600サイト相当に匹敵し、受け取る情報やイメージの均質化を図ることができるという。   ❷共感性が高い   メッセージの訴求手段に動画を使用すると、消費者が自分の生活に置き換えて視聴しやすく、その後の購買行動に結び付きやすい。消費者と自社商品・ブランドの間に感情的なつながりが生まれ、文字や画像といったコンテンツにはない信頼感や説得力がある。   ❸記憶に残りやすい   動画を通じて感情が動くと、動画の内容と感情を一緒に脳に記録するため、記憶の変容が起こりにくく記憶が定着しやすい。アメリカ国立訓練研究所が提唱する「ラーニングピラミッド」によると、文字を読んだ際の記憶定着率は10%であるのに対し、オーディオビジュアル(動画)は20%と、視覚と聴覚を通して情報を伝達する動画は文字より2倍も記憶に残りやすいと言われている。動画コンテンツは、多くの情報を消費者に伝え、記憶させることができる有効な手法なのだ。   では、企業のマーケティング戦略において、動画コンテンツはどのように活用できるか。   会社紹介などのブランディング動画や採用活動で用いるリクルート動画、新商品やサービスを訴求するプロモーション動画など、さまざまな場面での活用が可能である。その際、プロモーションの目的やターゲットに応じて展開するメディアを使い分けなければならない。ここでは、自社商品・ブランドの認知拡大に活用できるTVerを紹介する。   TVerは、民放キー局5社と大手広告代理店4社の共同出資で設立されたTVerが運営を手掛ける、テレビ番組の見逃し配信を中心とした動画配信サービスである。アプリの総ダウンロード数は4000万を超え、月間再生回数(TVer単体)は2億600万回、MUB(月間ユニークブラウザ数)は1760万を記録する大型メディアだ。   大きな特長として、コンテンツを視聴する際の動画広告スキップができないため、動画広告の完全視聴率が非常に高いこと(平均90%以上)が挙げられる。また、TVer内のコンテンツは地上波で放送された番組の見逃し配信が基本になる。そのため、厳しい放送基準を満たした安全性の高い広告しか流せない環境となっており、信頼性の高い企業ブランドイメージを訴求できる。テレビ番組を見ているときと同様のタイミングで動画広告が流れるため、違和感なく広告を受け入れやすい設計となっている。   自社でTVerを活用するには、まずターゲティング設計が重要となる。テレビCMと同様に年齢・性別セグメントのみで認知拡大を図ることも可能ではあるが、そのような大規模なマーケティング戦略を取れる企業は少ない。   オンラインの強みである位置情報機能やDMP(Data Management Platform:インターネット上に蓄積された情報を管理するためのプラットフォーム)などを活用することで、ターゲットとなる消費者に対して正しい訴求を行い、無駄打ちを最小限に抑えながら効果を最大化していくことが重要だ。そして、訴求後の計測を基にPDCAを回し、改善していくことが、より多くのファン獲得につながる。   SNS・動画コンテンツを用いたマーケティング施策を中心にお伝えしてきたが、最後に注意いただきたいのは、「まだオンライン上だけでは限界がある」ということである。冒頭でも述べたように、消費者の生活様式や考え方が変わった今、オンライン上での消費者とのコミュニケーションの重要度は高まっている。だが、リアルでのコミュニケーションも忘れないでいただきたい。   SNSや動画コンテンツなどのオンライン上で伝えたい消費者へのメッセージを、店頭やリアルイベントなどでも同様の熱量で発信し、自社のコアファンを増やしていくことが、企業のマーケティング戦略において重要である。   そして、いかにクリエイティブ(デザイン)力を活用してブランドストーリーやメッセージを消費者に伝え、ブランド価値を最大化し、他社との差別化を図るかも重要である。まずは、自社のブランド価値、業界でのポジショニングを分析するところから始め、結果を基にSNSや動画コンテンツを活用するマーケティング戦略を立案いただきたい。    

タナベ経営 執行役員 マーケティングコンサルティング東京本部 松岡 彩(まつおか あや)

外資系ラグジュアリーブランド、化粧品業界、飲料・食品業界、教育出版業界、出版業界、コーヒーショップ、ペットショップなど多岐にわたる大手企業のセールスプロモーション支援に従事。ブランドストーリーに沿ったデザインによるオリジナルのプレミアムグッズ制作を得意とし、企業の売上促進や顧客ファンづくりに貢献している。
   

タナベ経営 執行役員 マーケティングコンサルティング大阪本部 竹綱 一浩(たけつな かずひろ)

「クライアントとともにユーザーに想いを届ける」を信条に、最新のトレンドを活用したプロモーションやブランディングの企画・ディレクションから施策実行までワンストップで支援するコンサルティングを展開。大手BtoC企業のプロモーション支援の経験を生かし、ブランドイメージやキャラクターなどの魅力を最大限に発揮するプレミアムグッズ製作を得意とし、動画やWEB制作なども手掛ける。