【図表1】今後取り組みたい販促・プロモーション施策(複数回答)
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、生活様式や消費者の考え方、働き方などさまざまな変化が起こった。企業の顧客とのコミュニケーション戦略にも、大幅な見直しが迫られている。
タナベ経営が実施した「販促・プロモーションに関するアンケート調査」(2021年10月)の結果を一部、紹介する。新型コロナウイルスの感染拡大が販促・プロモーション施策に与えた影響(複数回答)について、「マーケティング施策そのものを見つめなおした」と回答した企業は33.4%に上った。次いで「施策の数を減らした」(24.0%)、「サービスの訴求内容を変えた」(20.7%)など、変化したマーケットに対応すべく、企業が試行錯誤しながらプロモーション施策を実施していることが分かる。
だが、大きな環境変化はチャンスでもある。新しいマーケティング戦略によって、さまざまな業界で新規参入の企業が業績を伸ばしている。過去の成功に依存する企業が淘汰される時代がやってきたのだ。
同アンケートの結果をもう1つ紹介したい。「今後取り組みたい販促・プロモーション施策」(複数回答)について聞いたところ、「自社ホームページ・ECサイト」が46.1%、「動画(広告を除く)」が27.8%、「SNS(広告を除く)」が27.0%、「オンライン広告(スマートフォン)」が13.8%、「オンライン広告(PC)」が11.8%と、コロナ禍によってリアルなコミュニケーションが難しくなった中、オンラインでのプロモーション施策を意識する企業が多いことが明確になった(【図表1】)。これまでのオフライン(リアル)での施策がゼロになっていくのではなく、「リアルとオンラインのバランスを変えていく」という企業の考え方が反映された結果と言えるだろう。
本稿では、今後強化が必要とされるマーケティング施策の中でも、特に関心の高いSNS・動画プロモーション施策について考察していく。
前述したように、消費者とのリアルなコミュニケーションが難しい現在、Twitter、Instagram、LINEなどのSNSを活用し、消費者とコミュニケーションを図る企業が増えている。
SNSの企業アカウントの開設・運用など、自社でSNS活用を進める場合、自社のブランディングやプロモーションの目的を明確に把握した上で、業界との親和性やターゲットの年齢に合わせて展開していくことが重要である。SNSの種類によって、消費者の活用方法が異なるためだ。(【図表2】)
【図表2】各SNSの特徴
企業のマーケティング戦略において、SNSはどのように活用できるのか。
まず、自社商品・ブランドの認知や新商品情報の拡散など、企業が伝えたいメッセージを多くのユーザーへ訴求できる。重要なのは情報の拡散ではなく、消費者に自社のファンになってもらうためのコミュニケーションを密に行うことだ。「商品のここを改善してほしい」「ブランドのここが好き」など消費者のニーズを獲得できる。
それに加えて、質の高いUGC(User Generated Content:ユーザーが発信するブログや配信動画などのコンテンツ)の創出を促すことが、さらなるファンの獲得につながる。
デジタル化が急速に進んだ現在は、膨大な情報が常に飛び交っており、消費者は多くのプロモーションを日常的に目にする。企業が発信するメッセージは、よほど影響が強くない限り情報の波にのまれてしまう。
結果、プロモーション施策の効果は薄くなり、注目を集めようと社会の常識から逸脱した施策で「炎上※」を招き、消費者に不信感を与えてしまうケースも少なくない。
それに対し、同年代や同じ趣味・嗜好・目線を持ち、似た生活水準にある消費者が発信するUGCは信頼度が高く、消費者の購買行動に結び付きやすい。
つまり、企業がSNSを活用する場合、一方的に不特定多数の消費者に情報を拡散するのではなく、消費者との双方向のコミュニケーションを意識し、消費者の自発的な情報発信を促すことがポイントである。また、商品キャンペーンの実施などで、自社商品・ブランドのロイヤルティー向上につなげていくことも可能だ。
もう1つ、SNSを活用する上で重要なポイントがある。それは、「自社アカウントのフォロワーをいかに増やすか」よりも、「フォロワーが増えてから、どのような施策でリピートにつなげ、コアなファンへ昇華させるか」である。時代の変化に合わせた情報の提供や、定期的なキャンペーンなど、消費者を飽きさせない工夫を継続することが重要だ。
だが、自社内のリソースだけではマンネリ化が起こりやすい。次に、マンネリ化を防ぐための手法を2つ紹介する。
❶アニメコンテンツや異業種とのコラボレーション
コラボによって、自社商品・ブランドの強みを生かしつつ、新たなユーザーを獲得するチャンスを創出できる。主なメリットは次の3つだ。
①通常の広告宣伝以上に話題になりやすく、自社でゼロからコンテンツを企画するよりも効率的。②コラボ先の消費者を自社に誘引できる。③コラボ先と同時期に露出を高めることで、相乗効果により拡散力が高まる。
だが、やみくもなコラボレーションによってブランドイメージを損ねる、コラボ先にユーザーが流れてしまうなどのデメリットもある。コラボ先の選定は、ブランドの世界観の維持・拡大を前提に進めていくことが重要だ。
❷SNS上でのインパクトを意識した施策
SNS上でのインパクトを意識したプレミアム景品の設計、ウェブ上での消費者参加型のゲームなど、思わず情報を拡散したくなるような企画を実施することで、消費者のキャンペーン参加を促す。また、商品イメージやブランドメッセージに関連付けたプレゼントキャンペーンを意識することで、商品の認知拡大と、ブランドメッセージの浸透という「二兎」を追うことも可能だ。
この2つの施策を織り交ぜつつSNSを活用することが、中長期的なマーケティング戦略を成功に導く秘訣である。
※インターネット上のコメント欄などにおいて、批判や誹謗中傷などを含む投稿が集中すること