ブランド価値発信における3つの課題
コンサルティングメソッド1の通り、ブランドプロモーションとは、「ブランド価値を磨き、発信して売り上げにつなげる、現場寄りのマーケティング戦略」のことである。具体的には、ブランド認知度の向上により、見込み客の獲得と競合他社との差別化を図るとともに、顧客満足度向上を通じてロイヤルカスタマーを育成する、といったことである。
すなわち、自社のブランド価値や強み、魅力などといった「本質的価値」を、自社の課題を解決するためのターゲットユーザーである「真の顧客」へ、プロモーションとコミュニケーションを駆使して「届け続ける」こと。市場での競争優位性を確保するブランドプロモーションは、この掛け合わせがポイントとなる。
一方、企業はブランド価値の発信において、大きく次の3つの課題に直面している。
1つ目が、コロナショックによる人々の価値観の変化である。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、社会全体の判断基準や嗜好、行動が大きく変化した。そのために顧客の意識動線・行動動線を捉えることが容易ではなくなっている。
2つ目が、人口減少と少子高齢化による内需の縮小だ。既存のビジネスモデルの延長線上のままでは競争力が低下する一方である。
そして3つ目が、コモディティー化(商品価値の陳腐化)の加速だ。生産技術の向上などにより商品価値の同質化が進み、消費者にとって商品選択基準が市場価格や数量に絞られてしまう。よって商品の付加価値が相対的に低下し、安物化していく。
これら3つの課題に加えて、環境変化のスピードが速く、市場環境もいっそう厳しさを増している。そうした中、企業が持つブランド価値の向上が、顧客との長期的な信頼関係の構築につながるとして、ブランドプロモーションの手法に注目が集まっている。
企業が生き残るための「ブランド価値」。そのブランド価値を高める鍵となるのが、「専門」「人材」「社会」という3つの視点で企業価値を捉えることである(【図表1】)。これらによりブランド価値をしっかりと整理し、固有のものとしていく。
【図表1】非価格競争戦略を実現する3つのブランド価値
出所:タナベ経営作成
出所:タナベ経営作成
自社のマーケティングファネルが設計できたら、次はファネルのポイントごとに、「本質的価値」を届け続けるためのプロモーションと、コミュニケーションのメニュー・ツールを設計する。オンラインとオフラインとを多岐にわたって組み合わせることで、さまざまなターゲットとのタッチポイントを増やしていくことができる。
特に、昨今は「共感・共創を呼ぶリアル×デジタル」というハイブリッド型ブランドプロモーションによる顧客とのコミュニケーションが大きなテーマとなっている。自社のブランディングおよびプロモーション活動を、リアルとデジタルの融合により進化させ、目まぐるしく変化する社会課題や顧客課題を的確につかむことが重要だ。
設計が完了したら、ここからが本当の勝負である。自社の課題はファネルのどこのポイントにあるのかを見極め、それを解決するための「真の顧客」(ターゲットユーザー)を見つけ出し、自社の価値、ブランドのコンセプト、ベネフィットを届け続けるプロモーションをかけていく。プロモーションにおいては、それぞれのメニュー・ツールを一覧性のあるアクションプランに落とし込む。具体的には、ターゲットやタスク、成果目標、実行時期など、ライン・スタッフ全員が共有できるシート(年次・月次)を作成すると有効である。誰に、何を、どのように伝えるか。何度も打ち手を変え、試行錯誤し続けていくことで、顧客との接点を構築し、着実に成果へとつなげていただきたい。
出所:タナベ経営作成
企業では、まだ営業担当者が地域に合わせた営業手法・プロモーション手法をそれぞれ属人的に実施しており、施策が共有されず、成功・失敗のノウハウが会社に蓄積されていないケースが多い。
そこで、ブランディングの管理徹底を行い、個人や地域ごとに情報格差のないよう、部門間の顧客体験をつなぐ機能を設置することが大切なポイントである。部分最適ではなく、全体最適で実行推進ができる仕組みを構築するのだ。
❷デジタルでの集客とリアルな営業をつなぐインサイドセールス
【図表3】の仕組みの中で重要なのが、デジタルマーケティングで獲得してきた顧客をリアルな営業へつなぐ役割を担うインサイドセールスの存在である。(【図表4】)
【図表4】デジタルでの集客とリアルな営業をつなぐインサイドセールス
出所:タナベ経営作成
つなぐと言っても単に顧客情報をパスするだけでなく、1次対応者として最初に顧客とコミュニケーションを取る重要な立ち位置である。そこからさらに顧客のニーズを引き出し、すぐ対応すべき顧客なのか、育成段階にあり、顧客との関係を切らさず中長期的にフォローすべき顧客なのかを見分け、営業(フィールドセールス)と連携して対応する能力も必須である。
❸マーケティング戦略KPI
3つ目のポイントは、獲得した顧客情報を基にKPI(重要業績評価指標)を設定し、達成に向けての行動マネジメントを実施することである。フィールドセールスだけではなく、顧客育成に関わるマーケティングの全ての領域に対してKPIを設定することを忘れないようにしていただきたい。
なお、KPIとは最終的な目標(KGI:重要目標達成指標)を達成するための、過程を計測する中間指標のことである。KGIを達成するためには、さまざまな過程を経ていかなければならない。その最終目標を達成するために不可欠な過程を洗い出し、各過程をどのくらいの状態で通過できれば、最終的な目標が達成できるかを数値で計測するのがKPIである。
以上、「共感・共創を呼ぶリアル×デジタル」のハイブリッド型ブランドプロモーションが重要であると述べてきた。消費者の購買行動が激変する中、それに対する対応の遅れは企業にとって命取りになりかねない。メッセージやデザインに一貫性を持たせるなど、ブランディングの観点も踏まえながら、自社オリジナルの「競争力の高いマーケティング戦略」を構築していただきたい。
出所:タナベ経営作成
ブランドプロモーション成功の4つのポイント
ブランド価値は一貫性を持って構築し、全体のイメージを統一していくことで固まっていく。そのポイントは次の4点である。
❶ブランドコンセプトの構築
ブランドの根幹をなす要素を確立する。目指す世界観や価値観の表現を、独自性・必然性・普遍性という3つの視点で設計していく。
❷ブランドターゲットの設定
一般的には「ペルソナ」(架空の典型的ユーザー像)と呼ばれているものである。ブランドの象徴となる顧客の属性・プロフィール・行動特性などを細かく設定していく。個人だけでなく、法人においても設計することが肝要である。
❸ブランドベネフィットの明確化
ブランドが与えるベネフィット(本質的価値)を、機能的・感覚的・体験的な要素を組み合わせて設計する。
❹ブランドリソースの棚卸し
ブランドに関わる自社の資源を棚卸しして整理し、イメージに統一感を持たせる。これらを順序立てて行い、顧客視点から自社の本質的価値、ブランド価値を明確にする。
自社の本質的価値、ブランドイメージが固まったら、ブランドプロモーション(顧客とのコミュニケーション戦略)の設計を行う。その場合、いきなり実施するのではなく、目的やターゲットに合わせてブランドプロモーションを設計してから実行に移ることが大切である。
ブランドプロモーションの設計
ブランドプロモーションの設計に当たり、まずは自社のマーケティングファネル(顧客の商品認知から購入までのプロセス)を設計することから始める。取引形態としては、BtoB(企業間取引)、BtoC(企業消費者間取引)、CtoC(個人間取引)などがあり、それぞれでファネルは変わる。
一例として、BtoB企業におけるファネルの例(【図表2】)を紹介する。ここでは、潜在顧客への「認知拡大」から「見込み顧客を獲得」し、その中から「有望見込み顧客」を育成し、「商談」から「受注」へつなげ、その後「リピート・ファン化」にまで関係性を深めていく。この一連の流れ、独自のマーケティングファネルを、自社の言葉でしっかりと設計・構築することが重要である。
【図表2】BtoB企業におけるファネルの例
出所:タナベ経営作成
自社のマーケティングファネルが設計できたら、次はファネルのポイントごとに、「本質的価値」を届け続けるためのプロモーションと、コミュニケーションのメニュー・ツールを設計する。オンラインとオフラインとを多岐にわたって組み合わせることで、さまざまなターゲットとのタッチポイントを増やしていくことができる。
特に、昨今は「共感・共創を呼ぶリアル×デジタル」というハイブリッド型ブランドプロモーションによる顧客とのコミュニケーションが大きなテーマとなっている。自社のブランディングおよびプロモーション活動を、リアルとデジタルの融合により進化させ、目まぐるしく変化する社会課題や顧客課題を的確につかむことが重要だ。
設計が完了したら、ここからが本当の勝負である。自社の課題はファネルのどこのポイントにあるのかを見極め、それを解決するための「真の顧客」(ターゲットユーザー)を見つけ出し、自社の価値、ブランドのコンセプト、ベネフィットを届け続けるプロモーションをかけていく。プロモーションにおいては、それぞれのメニュー・ツールを一覧性のあるアクションプランに落とし込む。具体的には、ターゲットやタスク、成果目標、実行時期など、ライン・スタッフ全員が共有できるシート(年次・月次)を作成すると有効である。誰に、何を、どのように伝えるか。何度も打ち手を変え、試行錯誤し続けていくことで、顧客との接点を構築し、着実に成果へとつなげていただきたい。
成果を出すためのデジタル活用3つのポイント
これまでの顧客行動は、企業が発信する情報に対して受動的であったため、自社の営業手法にのっとって行動を起こすことで、成約へとつながっていた。しかし、消費者が自ら情報を収集・取捨選択する時代となり、営業と顧客の情報格差は極めて僅少化してきた。
現在の顧客は情報を能動的に取得しているため、顧客それぞれの状態に合わせた複合的な入り口(リード獲得施策)を設計し、顧客ごとにリード育成方法を実施して、成約までつなげていく形が主流となっている。
そのため、従来のアナログなマーケティング手法だけでは顧客の状態に合わせた施策が構築しにくく、効果が出づらくなってきているのだ。そこで、デジタルを活用したウェブ戦略を実施することが増えている。企業は今までのように店を構えて消費者を待つだけではなく、消費者が行う情報収集から購買までの行動を分析し、適切なマーケティングを行っていかなければならない状況になってきたのだ。
デジタル活用による顧客とのコミュニケーションを、成果に結び付けるために重要なポイントを3つ紹介する。
❶セールス活動の専業化と分業化
デジタルマーケティングを推進するに当たっては、マーケティング領域と営業領域のすみ分けが必要になってくる。(【図表3】)
【図表3】デジタルマーケティング体制構築の考え方
出所:タナベ経営作成
企業では、まだ営業担当者が地域に合わせた営業手法・プロモーション手法をそれぞれ属人的に実施しており、施策が共有されず、成功・失敗のノウハウが会社に蓄積されていないケースが多い。
そこで、ブランディングの管理徹底を行い、個人や地域ごとに情報格差のないよう、部門間の顧客体験をつなぐ機能を設置することが大切なポイントである。部分最適ではなく、全体最適で実行推進ができる仕組みを構築するのだ。
❷デジタルでの集客とリアルな営業をつなぐインサイドセールス
【図表3】の仕組みの中で重要なのが、デジタルマーケティングで獲得してきた顧客をリアルな営業へつなぐ役割を担うインサイドセールスの存在である。(【図表4】)
【図表4】デジタルでの集客とリアルな営業をつなぐインサイドセールス
出所:タナベ経営作成
つなぐと言っても単に顧客情報をパスするだけでなく、1次対応者として最初に顧客とコミュニケーションを取る重要な立ち位置である。そこからさらに顧客のニーズを引き出し、すぐ対応すべき顧客なのか、育成段階にあり、顧客との関係を切らさず中長期的にフォローすべき顧客なのかを見分け、営業(フィールドセールス)と連携して対応する能力も必須である。
❸マーケティング戦略KPI
3つ目のポイントは、獲得した顧客情報を基にKPI(重要業績評価指標)を設定し、達成に向けての行動マネジメントを実施することである。フィールドセールスだけではなく、顧客育成に関わるマーケティングの全ての領域に対してKPIを設定することを忘れないようにしていただきたい。
なお、KPIとは最終的な目標(KGI:重要目標達成指標)を達成するための、過程を計測する中間指標のことである。KGIを達成するためには、さまざまな過程を経ていかなければならない。その最終目標を達成するために不可欠な過程を洗い出し、各過程をどのくらいの状態で通過できれば、最終的な目標が達成できるかを数値で計測するのがKPIである。
以上、「共感・共創を呼ぶリアル×デジタル」のハイブリッド型ブランドプロモーションが重要であると述べてきた。消費者の購買行動が激変する中、それに対する対応の遅れは企業にとって命取りになりかねない。メッセージやデザインに一貫性を持たせるなど、ブランディングの観点も踏まえながら、自社オリジナルの「競争力の高いマーケティング戦略」を構築していただきたい。

PROFILE
庄田 順一
Jun-ichi Shoda
2005年タナベ経営入社。2021年より、執行役員マーケティングコンサルティング本部ブランドプロモーション本部長兼“刺さる”プロモーション研究会リーダー。販促戦略パートナーとして、顧客創造に向けた“WEBとリアルを融合した集客プロモーション”コンサルティングにより売り上げ拡大を支援。マーケティングの戦略策定から、実行・運営までトータルでサポート。特にプロモーション企画とその推進マネジメントを通じた人材育成で、クライアントから高い信頼を得ている。