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コンサルティングメソッド
コンサルティング メソッド
タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティングメソッド 2022.03.01

今こそ、「コミュニケーションMIX」が必要:飯田 和之

自社独自の「顧客とのコミュニケーションモデル」創造へ

 

顧客の購買行動が変化する中で、BtoC・BtoBビジネスともに、従来のマーケティング活動だけでは成果が上がらなくなってきた。SNSやウェビナーなど、ウェブによるダイレクトマーケティングが活況の今、企業と顧客をつなぐ接点、メッセージを届ける仕組みづくりが企業に求められている。

 

今、必要な「コミュニケーションMIX」とは何か。それは顧客の新たな購買行動に対し、これまで培ってきた自社の強みと、購買行動などのあらゆるデータを活用し、リアル×デジタルを適切に組み合わせ、顧客の体験価値(CX:カスタマーエクスペリエンス)を向上させる「ブランディング」「マーケティング」「セールス」が一体となった自社独自の「顧客とのコミュニケーションモデル」を創造することである。それにより、顧客をファン(ロイヤルカスタマー)へと育成することを目指すものだ。

 

言い換えれば、費用対効果の視点を持ち、目的・ターゲットに適したリアル×デジタルの手法を組み合わせて実行するメソッド、また、顧客の購買行動と企業との双方向性を持つコミュニケーションが求められている。これはマーケティングの根幹を形成する部分である。

 

自社独自のコミュニケーションモデル創造のためには、独自のマーケティングファネル、企業側と顧客側視点のマッチング、カスタマージャーニーとタッチポイントの体系化、メディア・クリエイティブ・人的活動といった各コミュニケーションの組み合わせなどで、顧客と企業をつなぐ接点や仕組みを捉え直し、多様化する顧客接点の性質を分析・理解する必要がある。その上で、それぞれを連携させ、企業活動全体を通して立体的に組み上げていくことが重要となる。

※顧客が認知から購買に至るまでの心理的過程(行動含む)をモデル化したもの

 

 

マーケティングファネル×プロモーション

 

企業は、ミッション、ビジョンを実現したいという思い(ブランドストーリー)を顧客に広く伝え、自社のファンを創っていく。その一気通貫したマーケティング戦略の立案により、ターゲットにきちんと届け続けるプロモーション戦略を、顧客の購買行動を軸とした自社独自のマーケティングファネルをもとに、リアル×デジタルを組み合わせて設計する(【図表1】)。大事なのは、リアル×デジタルの両面から総合的に構築し、顧客エンゲージメント(企業と顧客との信頼関係)を高めることである。

 

 

【図表1】BtoC企業のプロモーション戦略

出所:タナベ経営作成

 

 

コミュニケーションMIXを理解する際に、企業側の視点と、顧客側の視点を重ね合わせ、物事を捉えていく必要がある。顧客は、自分にとって価値あるものの提供を受け、その対価を払う。企業は、この価値を届けるためにさまざまな活動を行っている。企業側の思いと、顧客側の思いがつながったときにビジネスが成り立つ。

 

マーケティング活動を表すときに用いられる4Pと4Cについて簡単に触れておこう。4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:販促)は、企業側の視点から、顧客に価値を届けるためにはどのようなマーケティングを行うかを決めていくフレームワークである。一方、4Pを顧客側の視点から見直したものが4C(Customer Value:顧客価値、Cost:コスト、Convenience:利便性、Communication:コミュニケーション)であり、4Pの項目と4Cの項目は、それぞれ対になっている。

 

ここで重要な点は、企業側の視点(4P)=プロダクトアウト発想と、顧客側の視点(4C)=マーケットイン発想をマッチングさせることである。プロダクトアウト発想のみだと市場の理解が追い付かず、マーケットイン発想のみでも競合との差別化ができないであろう。【図表2】のPromotionとCommunicationの関係を解決するのが、フレームワークの1つであるコミュニケーションMIXであり、費用対効果を最大にできるコミュニケーションの組み合わせを考えることにある。

 

 

【図表2】4P(企業側の視点)と4C(顧客側の視点)のマッチング

出所:タナベ経営作成

 

 

リアル×デジタルが複雑に組み合わさった現在では、顧客が商品を購入するまでに、さまざまなタッチポイントで多くの情報を得ることができる。

 

顧客が商品を購入するまでに生じる、企業とのタッチポイントを整理したのが【図表3】である。

 

 

【図表3】商品を購入するまでに生じる企業とのタッチポイント(BtoC)

出所:タナベ経営作成

 

 

商品知識がない(A)、または購入したことはないが商品は知っている(B)状態から、注目して興味を抱き(認知)、ネット検索やカタログ請求などを行い(検討)、商品の購入やサービスの利用に至る(行動)。購買行動時点でのコミュニケーションアプローチによって、購買活動がストップするのか、商品・サービスを気に入ってリピートしてくれるのか、エバンジェリスト(伝道者)として周囲にも広めてくれるのか(推奨)が決まる。

 

顧客がA~Dのどの階層に位置するかによって、具体的アクションの温度は変わってくる。一度、商品購入やサービス活用の経験がある層(C)に対しても、再び①~④の流れを踏むが、AとBの層に比べリピートする確率は高まる。Dの段階に入ると、もはやファンやロイヤルカスタマーと言って良い。

 

このように顧客がタッチポイントのチャートを進んでいく過程を、“旅”に見立てて「カスタマージャーニー」と呼ぶ。タッチポイントごとに企業側が取るべきコミュニケーションは異なり、顧客が抱く期待や熱意に合わせた対応が必要となってくる。それぞれ適切なコミュニケーションを展開することで、顧客はカスタマージャーニーの次のステップに歩みを進め、より熱心なリピーターへと変貌を遂げていく。

 

人々が購入に至る心理や行動についてはさまざまなパターンがあるが、カスタマージャーニーを体系化、プロセス化してデータで効果を検証しながら改善することで、コミュニケーションをより効率的・効果的に行うことができる。

 

 

PROFILE
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飯田 和之
Kazuyuki Iida
1994年タナベ経営入社。2019年より、執行役員に就任。企業のマーケティング&ブランディング戦略パートナーとして、売上拡大・ブランド認知向上に直結する、戦略立案からマーケティング計画策定、具体的販促施策実行推進、メディア・クリエイティブ・プレミアムノベルティの企画、制作ディレクションまで一貫して支援している。