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コンサルティング メソッド
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タナベコンサルティンググループの各分野のプロフェッショナル・コンサルタントが、経営戦略・事業戦略・組織戦略などの経営メソッドを解説・提言します。
コンサルティング メソッド 2022.02.01

事業拡大推進のための主体的なシステム再構築:武政 大貴

システムの再構築が経営の変革に不可欠
  現代の経営環境や市場環境は、不安定かつ予測困難だ。そうした環境の中で、複雑に絡み合う事業・サービス・経営資源のパフォーマンスとシナジー効果を高め、企業価値を戦略的に最大化するために、データを用いた客観的かつタイムリーな将来予測を可能にする高度な経営への変革が求められている。   変革の手段として、文字通り企業の経営資源管理の根幹をなす「基幹システム」をはじめとする各種業務システムの再構築は、大きなポイントの1つである。   現在、多くの日本企業はレガシーシステム(旧型の基幹業務システム)を使い続けている。既存のレガシーシステムは、各社の事業部門ごとに独立して構築されていることが多く、全社横断的なデータ活用ができないことも少なくない。   このことが事業推進のために行うマネジメントの足かせとなり、経営環境や市場の変化に柔軟かつスピーディーに対応できず、事業存続における重大なリスクとなることも懸念される。    
ITプロジェクトが陥る7つの罠
  自社がうまくいかない原因を、他社や他部門のせいにしていないだろうか。主体的に取り組むためにも、こうした陥りやすい罠を踏まえた上で、正しいステップで進めることが肝要だ。成功に向け、まずはシステム再構築における失敗原因(陥りやすい罠)を紹介したい。(【図表1】)   【図表1】システム再構築における失敗原因 出所:タナベ経営作成     ❶目的・目標が不明確   プロジェクトの関係者ごとにシステム構築・活用目的の認識がバラバラで、目指すゴールが一致していない(プロジェクトが進むにつれて迷走)。   ❷ITベンダーもしくはIT担当者に丸投げ   経営者や業務担当者がシステム構築に関与しないプロジェクトは必ずと言っていいほど失敗する。   ❸ITベンダー選定のミス   良いシステムを構築するには、技術と実績のあるITベンダーの選定が鍵となるが、担当者がIT技術に詳しくないため、腕の良いベンダーをうまく選定できない。   ❹欲しい機能が不足   時間と費用をかけた割に必要な機能がない。この場合、誰も使わない機能があれもこれも実装されていることが多い。   ❺現場の声を重視しすぎてコスト増大   現場の声を反映することは重要であるが、優先順位および費用対効果の検証のないまま進めると、投資額が膨らむ割に、実務に役立たないシステムが出来上がることが多い。   ❻現状維持バイアス   新しいシステムを導入すると、社員も仕事のやり方を変えなければ効果が上がらない。しかし、非効率であっても慣れ親しんだオペレーションを変えたくないという心理が働く。   ❼プロジェクト機能不全   ❶と同様、「プロセスが不明確」なままプロジェクトを進めると大抵うまくいかず炎上する。      
成功のゴールデンサークル
  「人々をインスパイアする方法」などを伝授し、米国で大人気となったコンサルタント、サイモン・シネック氏は「卓越したリーダーは、ゴールデンサークルというパターンに基づき行動している」と提唱している。成功のゴールデンサークルとは、「WHY⇒HOW⇒WHATの順で考える」ことである。(【図表2】)   【図表2】成功のゴールデンサークル 出所:サイモン・シネック氏提唱「ゴールデンサークル」を基にタナベ経営作成   「良い例」は、「WHY:営業所ごとに不統一な業務を標準化(取捨選択・統廃合)し、全社的に連動した形で効率的な運営を行う」⇒「HOW:統合後の業務プロセスはこうしたい、ガバナンスはこのようにしたい」⇒「WHAT:そのためにこういうシステムを作ろう、こういう機能が必要となる」といった考え方である。   「悪い例」は、「WHY:なし(目的が不明確)」「WHAT:同業がRPA※というものを入れて便利だと聞いたので自社も入れたい(順番が逆)」「HOW:このベンダーに作成を依頼しよう、社員にこのように使わせよう(プロセスが不明確)」といった具合だ。   「良い例」の順序でないと、何をやりたいかが不明確になり、関係者を巻き込むことができず、良いシステムが完成しないという悪循環に陥ってしまう。結果として、誰も使わないシステムや、使っても効果を発揮しない無駄なシステムがレガシーとして残る。   ※Robotic Process Automationの略。ホワイトカラーのデスクワーク(主に定型作業)を、ルールエンジンやAIなどの技術を備えたソフトウエアのロボットが代行・自動化する概念      
システム導入までの失敗しないプロジェクトマネジメント
  システム導入に当たっては、大きな流れと各フェーズが「何をもって完了したと言えるか」をあらかじめ把握した上で進めることが重要である(【図表3】)。各フェースを次に解説する。     【図表3】システム導入までの9つのフェーズ 出所:タナベ経営作成       フェーズ1:ゴールの明確化   システムはあくまで手段である。システムを活用して何を果たしたいか、まずはメンバー間の目線、意識を合わせて全員が納得するプロジェクトのゴールを定めることが重要である。   フェーズ2:現状調査・分析   現状の業務内容、システム活用状況や作業状況の可視化を行う。各種資料、帳票類などのエビデンスとヒアリングを通じ、現状を棚卸しする。   フェーズ3:構想策定   フェーズ1を踏まえ、あるべき姿を明確に設計する。またその姿に向けたFit&Gap※を明確にして、特にGapを埋めるための施策、ロードマップまで立案する。   フェーズ4:要件定義   システムへの要望を文書化する。実際に開発を担当するベンダーに果たしたいことを正確に伝えるためにも、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)などで明確に文書化し、依頼を行う。   フェーズ5:ベンダー・製品選定   RFPなどで明確になった要件をかなえられるベンダーを、投資採算はもちろん、提供内容、担当者のスキルの信頼性といった評価軸を基に選定する。   フェーズ6:プロト検証   システムのプロトタイプのパッケージを仮組みしたものか、画面を簡単に描いたもの(絵コンテレベル)でシミュレートすると良い。いわば設計・開発前の通し稽古である。   フェーズ7:設計   これまでのフェーズで要件定義を明確にベンダーに伝えることができているならば、プロであるベンダーに任せる方がうまくいく。ただし、節目ごとの進捗確認と意思決定をおろそかにしてはならない。   フェーズ8:開発・テスト   設計段階と同様、モニタリングと意思決定は重要である。現場の声に基づく細かい意思決定が重要である。   フェーズ9:導入・稼働   旧システムが稼働している場合、新システムへの切り替え作業が最後の重要管理ポイントである。システムだけでなく前後の業務フローが変わるので、その理解と標準化をトライアンドエラーで進めていく。   対象業務の範囲および企業規模によってプロジェクトの期間はさまざまであるが、外部パートナーとしてタナベコンサルティンググループ(TCG)が支援する場合、フェーズ5のベンダー選定までで6~8カ月程度が標準である。   また、アジャイル的に随時機能をリリースしていくタイプのプロジェクトもあれば、重厚な内容で複数年にわたって進めるプロジェクトなどさまざまなパターンがあるが、設計・開発などのシステム構築フェーズより前のフェーズに多くの時間をかけるべきである。システムの構築が目的ではなく、システムを活用して事業拡大に寄与することが目的であることを忘れないようにしていただきたい。   ※情報システムの導入にパッケージソフトなどを用いる場合、パッケージが利用者のニーズに適合(Fit)している点と乖離(Gap)している点を明らかにすること      
部門横断の主体的なプロジェクトが本質的な成功の鍵となる
  事業拡大に寄与する主体的なシステム構想・導入のためには、WHYから始めるゴールデンサークルに基づくIT化構想とともに、正しいプロジェクトマネジメントが重要だ。   その上で、主体的に進めるための成功ポイントは、システム担当部門だけではなく、経営者、事業担当部門およびプロジェクトリーダーが四位一体となる、全関係者を巻き込んだプロジェクト推進である。各関係者は自身の役割をしっかりと認識し、ベンダー任せにしない“生きたシステム構築”を行っていただきたい。   なお、タナベコンサルティングはグローウィン・パートナーズと提携し、ERP(統合基幹業務システム)導入支援コンサルティングを手掛けている。具体的には、「会社の成長戦略に沿ったシステム基盤構想の策定」「属人化排除や非効率業務の排除(ガバナンス強化)」を目的に、システム課題の可視化(フェーズ1)、IT投資計画の作成(フェーズ2)、システム導入(フェーズ3)の3段階で進めていく。   システム課題の可視化(フェーズ1)段階では、ブラックボックス化したシステムの可視化とシステム基盤構想の仮策定を行う。具体的には、①各システムにおける機能に対する利用用途・目的の明確化、②経営層が考えるシステムへの要求事項や理想像をディスカッションにて洗い出し、今後のビジネス戦略に沿ったシステム構想検討、③データの流れを考慮し二重入力や多重メンテナンスといった実運用の障害となる要素を排除したToBe像策定などである。   IT投資計画の作成(フェーズ2)段階では、IT投資予算の概算額、スコープや優先順位の策定を行う。具体的には、①システム構想を基にリプレイス・改修スコープの確定、②対象スコープにおける各システム課題の対応方針策定と、解決すべき優先順位の策定、③システムリプレイス/改修に必要となるIT投資予算の概算額の策定などである。   システム導入(フェーズ3)段階では、システムのリプレイス・改修を行い、システム基盤構築を実施する。具体的には、①解決すべき課題と優先順位を明確にした上でのシステムリプレイス・改修、②非効率性を排除する人事給与業務改善(BPR)の実行、③必要に応じてシステム要求事項の作成などである。   事業拡大のための主体的なシステム再構築をお考えの際は、ぜひご活用いただきたい。    
   
PROFILE
著者画像
武政 大貴
Hirotaka Takemasa
大学卒業後、財務省で7年半、金融機関の監督業務や法人企業統計の集計業務などを担当。その後、企業経営に参画したのち2009年タナベ経営に入社。実行力ある企業(自律型組織)構築を研究テーマとして、見える化手法を活用した生産性改革を中心にコンサルティングを実施。現在はIT活用やプロセスマイニング、SDGs実装支援など世の中の潮流に合わせたコンサルティングメソッドを研究開発しながら、実行力ある企業づくりに奮闘中。著書に『真の見える化が生産性を変える』(ダイヤモンド社)がある。