事業拡大推進のための主体的なシステム再構築:武政 大貴
現代の経営環境や市場環境は、不安定かつ予測困難だ。そうした環境の中で、複雑に絡み合う事業・サービス・経営資源のパフォーマンスとシナジー効果を高め、企業価値を戦略的に最大化するために、データを用いた客観的かつタイムリーな将来予測を可能にする高度な経営への変革が求められている。
変革の手段として、文字通り企業の経営資源管理の根幹をなす「基幹システム」をはじめとする各種業務システムの再構築は、大きなポイントの1つである。
現在、多くの日本企業はレガシーシステム(旧型の基幹業務システム)を使い続けている。既存のレガシーシステムは、各社の事業部門ごとに独立して構築されていることが多く、全社横断的なデータ活用ができないことも少なくない。
このことが事業推進のために行うマネジメントの足かせとなり、経営環境や市場の変化に柔軟かつスピーディーに対応できず、事業存続における重大なリスクとなることも懸念される。
自社がうまくいかない原因を、他社や他部門のせいにしていないだろうか。主体的に取り組むためにも、こうした陥りやすい罠を踏まえた上で、正しいステップで進めることが肝要だ。成功に向け、まずはシステム再構築における失敗原因(陥りやすい罠)を紹介したい。(【図表1】)
【図表1】システム再構築における失敗原因
❶目的・目標が不明確
プロジェクトの関係者ごとにシステム構築・活用目的の認識がバラバラで、目指すゴールが一致していない(プロジェクトが進むにつれて迷走)。
❷ITベンダーもしくはIT担当者に丸投げ
経営者や業務担当者がシステム構築に関与しないプロジェクトは必ずと言っていいほど失敗する。
❸ITベンダー選定のミス
良いシステムを構築するには、技術と実績のあるITベンダーの選定が鍵となるが、担当者がIT技術に詳しくないため、腕の良いベンダーをうまく選定できない。
❹欲しい機能が不足
時間と費用をかけた割に必要な機能がない。この場合、誰も使わない機能があれもこれも実装されていることが多い。
❺現場の声を重視しすぎてコスト増大
現場の声を反映することは重要であるが、優先順位および費用対効果の検証のないまま進めると、投資額が膨らむ割に、実務に役立たないシステムが出来上がることが多い。
❻現状維持バイアス
新しいシステムを導入すると、社員も仕事のやり方を変えなければ効果が上がらない。しかし、非効率であっても慣れ親しんだオペレーションを変えたくないという心理が働く。
❼プロジェクト機能不全
❶と同様、「プロセスが不明確」なままプロジェクトを進めると大抵うまくいかず炎上する。